第26話 ニッチモ・サッチモ

 ニッチモ・サッチモはオランダの織物商人である。当時、ニッチモは母国オランダの商会の中でも、優れた売り上げを叩き出す貿易商人で、出島商館でも厚く信頼されていた。

 ある日、ニッチモはいつも通り絹織物などを商船に積んで、出島にやってきた。彼は母国で特に重宝されている紫色のガウンを売り込もうと商談を始めた。

 ところが数日前。この国では「紫色の法衣」をめぐって大事件が起こっており、ニッチモが差し出したガウンは、出島役人の反感を買ってしまったのである。

 ニッチモはこの件以来、出島では不謹慎という理由から締め出されてしまい、母国では業績不振をなじられ、帰ることを許されなかった。そして彼は海上に一人、孤立してしまった。以来、このような状況は「二進も三進もニッチモサッチモ行かない」と呼ばれた。

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