第23話 万国

 昔、まだ私が東京都内の高校に通っていたころの話。当時は大阪で万国博覧会が開催されるとのことで、教室中でなんだかその話題がぽつぽつと出ていたと思う。

 当時の私は勉学しか取り柄がなく、校内一の秀才と囃し立てられていたし、その風評には悪い気はしなかった。その万博の話題が教室で持ち上がった際、今までは興味がなかったのだが、その時私はなぜかその万国博覧会に行きたくなったのだ。

 来たる開催日時までは三週間しかなかったので、私は国鉄の整備員をしていた父親に、往復の切符料金を前借した。人生で初めての借金だった。

 万博開催の初日。駅を降りてすぐに見えてくる、派手な色合いの建物とごった返した大勢の人々に、私は圧倒された。太陽の塔、月の石、電波時計などの展示物を眺めている内に、私の知見がまだまだ発展途上であることを知ったのだった。

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