第20話 50:50 の選択

 六月。酷暑の夏至を迎え、勘違いした無数の蝉たちが早めの求愛を始めていた。

「暑ぃ……。おい、津田つだ、そこに自動販売機あるよな……」

「……どっちが二人分奢るか、だろ。じゃあ、で決めるか」

 自動販売機自体は二人の正面1メートル先にあったが、二人はもう酷暑の下で動きたくなかった。津田と呼ばれた男は、財布から真新しい五百円硬貨を取り出した。

「俺はオモテだ。津田は?」「ウラ以外ないだろ」

 二人は大事な局面はいつもコイントスで天運を決めていた。津田が硬貨を勢いよく弾いた。乾いた音と共にコインは青空の下美しい放物線の軌跡を描き、そして、

「ん? ……おいおいまじか!?」「えっ、……まじ?」

 魔法のように販売機の投入口にすっ、と入った。ピッと「500」がデジタル表示。

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