第27話 丁か半か

 「半!」

 男は木札を「半」と書かれた紙の傍に、勢いよく叩きつける。男は丁半の賭場にいた。丁半博打は、二つの賽子を壺に入れ、その合計値を当てる賭け事である。「丁」は偶数、「半」は奇数である。男は、賽子の合計が奇数になると、漠然と思い、「半」側に木札(カジノでいうところのチップ)を賭けた。

 「丁半とも出そろいましたぁ!」

 「勝負!」

 壺振りの掛け声と共に、壺が思い切り振りぬかれる。さぁ、丁か、半か――

――男は困惑し、呆気に取られた。何故なら、賽子はダイススタッキングの容量で縦に積み上がり、天面の出目は「一」しか見えなかったからである。

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