半間

花咲 豪

第1話 赤鬼の女

ある夏の夜公園で空を眺めていた。

透き通るように綺麗で、今にも吸い込まれそうなそんな空だった。

目を瞑りほんの少し息を吸い込み息を吐いた。


俺はなんでこんなにも人という生き物を嫌いにならなければならないのか。


強欲で自分が世界一不幸みたいな顔をする

自ら犯した罪すらも時間が経つにつれ何もなかったかのように振る舞う。


俺は人が嫌いだ。


「君も君が嫌いな人よ」


背後から女の声がした。

振り返るとそこにはジャングルジムの頂上で

座って俺を見下している金髪の女がいた。


「君、大丈夫こんな誰もいない夜更けの公園でそんな事考えるなんてすごく病んでいるのね」


「俺は別に病んでいたわけでも人でもない」


「君、疑問からではなく否定から入るのね」


俺は金髪の女の目をじっと見つめた。


「急にどうしたのもしかして惚れた、どうして私が君の心の声が聞こえたか聞かないの」


「聞いても分からないんだろ。どうして聞こえるのか」


金髪の女は驚いた表情で俺の方を見つめた。


「鋭いのね。君はどうして自分の事を人じゃないというの、黒い髪にキリッとした目鼻も口も耳もあるどう見ても君は人だよ」


「お前も俺も人ではないだろ、赤鬼さん」


金髪の女は頂上にいたジャングルジムから飛び降り一直線に俺に向かって走ってきた。


バシッ俺の顔を平手でビンタした音が小さな山の公園にこだました。


「君最低だね」


俺は激憤した金髪の女に言葉が出てこなかった。金髪の女は自分が乗ってきたであろう自転車に乗り山の坂道を泣きながら下って帰っていた。

俺は空を眺めて大きく息を吸い込み溜息を吐いた。

(ひとまず成功だな)

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