パパ、だーいすき!

ゆーの

パパ、だーいすき!

[20xx/04/01 07:02]


「パパ、おはよう!」


パパは、おはよう、といって わらった。


「あさごはん、できてるよ」

「わーい!」


パパが、テーブルにパンと ぎゅうにゅうをならべる。

だきつこうとすると、パパがいった。


「ほら、きがえしてからだよ」

「……はーい」


パジャマをぬいで、いつもの ふくに きがえる。

ぬいだパジャマは、たたんで たんすの いつものところに。


「ほら、できたよ!」

「えらい、えらい」


パパが あたまをなでながら ほめてくれた。

……えへへ。


「さ、たべよっか」

「うん!」


パパは、にっこりとわらった。





「パパのて、おっきいね」


パンを たべながら、ふと おもったことを いう。

あたまを なでてくれるときの あたたかい、おおきなて。


「どうやったら おおきくなれるの?」


パパは、すこしなやんでから いった。


「たくさんたべて、たくさんねれば おおきくなれるよ。……それよりも、たべるときは しゃべっていいんだっけ?」


パパが、わたしの めを みながらいった。


「……ううん」


あたまをよこにふると、パパは にっこりとわらった。


「たべてからね」

「……うん!」


わたしは、げんきにうなずいた。



**



[20xx/04/01 08:01]


「はーい、おいしいですかー?」


くまのぬいぐるみに、スプーンでスープをのませてあげる。

くまさんは、おいしいよ、といった。


「じゃあ、おきがえしましょうねー」


あおいろに、やまの え が かかれた おようふく と、あかいろのズボンを きせる。

はみがきも わすれずにね!



**



[20xx/04/01 09:14]


「おっ、上手だね」


ゆかに よこになって を かいていたら、パパが のぞきこんできた。

おもわず、えを うでの下にスッとかくす。


「見ないでっ!」

「……上手なのに」


うでのしたにかくしても、パパは うでのすきまから えを見ようとした。


「だーかーらー、ダメなものはダメなの!」


わたしは、えを からだの下にかくした。すかさず、パパが そのえを とろうとする。


「ダーメー!」


きっぱりというと、パパは、やられた、って かおをして わらった。


「……わかった、わかったから。それじゃあ、しごとに もどろうかな」


パパは、わたしから はなれたところの テーブルに すわってパソコンをあけた。それを見てから、わたしは からだの下にかくしていた えを出した。


水いろの いろえんぴつで、空をぬる。まちがって くもを ぬらないように。

オレンジいろの いろえんぴつに もちかえて、たいようをぬる。まわりに オレンジいろの せんを ひいて、かがやいている。

あとは、じめんを ぬるために ちゃいろをとって……


「……その木のそばに立っているのってだれかな?」

「あーこれはパ……って、見ちゃダメ!」


パパが、わきから のぞきこんでいた。ふたたび、あわてて えを かくす。


「えー、いいじゃん。すこしくらい見せてくれたって」

「ダメなものはダメなの!」

「……ほんのちょっとでも?」

「ダーメー!」


りょうほうの手で、バツをつくってから、パパのかおをじっと見た。


「わかった、わかったから。もうしないから」

「……ホントに?」

「ほんとうだって。……わかったよ。やくそくする」


パパは、右手の小ゆびを わたしにむけた。


「その代わり、完成したら見せてくれないかな?」

「……いいよ」


わたしも右手の小ゆびを出して、パパの ゆびにからめる。


「じゃあ、やくそく」


うん、とわたしは うなずいた。


「「ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます」」


パパとわたしは、目をあわせて ニコリとわらった。


「「ゆびきった!」」


おわると、パパはパソコンを もって じぶんのへやに もどっていった。

えを見られてはずかしかったけど、パパにほめられてうれしかった。



**



[20xx/04/01 12:31]


「パパ、ごはんにしよー」

「ん、今行くー」


パパが、部屋から出てきた。


「お昼、何がいい?」


パパが聞いた。


「えーと、それじゃあ……」


なやむなぁ。ラーメンとかもいいし、えーと……、そうだ!


「カレーがいい!」


パパは、じゃあそうしようか、とうなずいた。


「そこからパックのごはん出してくれる?」

「えーと、これかな?」


たなの中から、ごはんの入った、赤いとうめいのフタのついた白いプラスチックの入れ物を取り出した。


「あー、うん、それ。じゃあ、わきの部分めくってからレンジにかけてくれる?」

「えーと、ここ?」


フタの、まわりりとちがって黄色くなっているところを指さすと、パパはうなづいた。

わたしは、力いっぱいその部分を引っぱった。しかし、つかむところが手からすべって、フタは開かなかった。


「うーん、うーん……、開かない!」

「かしてみ?」


パパにわたすと、パパはあっさりと開けてみせた。


「すごーい!」

「ま、こんなもんよ」


パパは、とくいげに言った。


電子レンジでごはんを温めている間に、レトルトのルーを出して、ハサミ切って開ける。そして、温まったまったごはんを大きなお皿にうつして、上からルーをかけた。


「それじゃあ、食べようか」

「うん!」


ちょっと手ぬきだけどね、とパパはわらった。





「ところでさ、あそこにあるのは花の図かんかな?」


食事をしながら、パパが ゆかにおかれた本を指さした。


「あっ!」


わたしは、イスから いきおいよく立ち上がった。そして、図かんを本だなにもどした。


「何か調べてたの?」

「ううん。花の写真を見てたの」

「へぇ、どんな花を見ていたの?」

「うーんと、きれいなお花!」

「きれいな、じゃ分かんないよ。名前は分かんないの?」

「えーと、赤くてとげとげした感じの……」

「もしかして、バラ?」

「そう、それ! 他には……」


パパは、えがおで言った。


「花がすきなのかい?」

「うん、大すき! だからね、しょうらいはお花屋さんになるの!」


パパは、少しだけ考えてから言った。


「それは楽しみだ。じゃあ、もしお店を開いたら一番に買いに行ってあげるよ」

「本当に!」


うれしすぎて、思わず立ち上がってしまっていた。

イスにすわると、パパが言った。


「それと、下においたものは、かたづけること。転んだら いたいよ。次からは気をつけてね」

「はーい」


そして、わたしたちは美味しいカレーを ほおばった。



**



[20xx/04/01 14:17]


「うーん……、わかんない!」


パパが買ってきてくれた算数のドリルとにらめっこ。

うーん、かけ算 おぼえられない……。3のだんまでは おぼえられるけど、4のだんより先になるとグチャグチャになっちゃうの。


ええと、3かける6が18だから……、わかった!


「6かける3は、18!」

「せいかい!」


パパが、頭をなでてくれた。

とても気もちが よかった。


「ね、これでおわり? あそんでもいい?」

「……まだだよ。あと5もん おわってから」

「えー」

「やくそくしたよね、べんきょうも ちゃんとやるって」

「……うん」

「じゃあ、やろっか」


……算数なんて だいっきらい。



**



[20xx/04/01 16:57]


きょうのよるごはんは、おにく!

リビングであそんでいるだけでも、おいしそうな かおりがただよってくる。


「ごはんだよー」


パパのよぶこえがきこえた。


「わーい!」


だいどころにいるパパにだきつこうとして、たちどまる。


「……どうした? ってそうか。ひをあつかっているかもしれないから、はなれていてくれたのか。ありがとう」


パパは、あたまに てをおいて、ポンポンと なでてくれた。

……えへへ。


「ええと、それじゃあ……」


パパは、れいぞうこをあけて ぎゅうにゅうパックと、やきにくのタレをだした。


「ぎゅうにゅうをいれるのだけ おねがいしてもいい?」

「うん!」


パパが、ケティちゃんの ふみだいをもってきた。

それにのっかって、わたしのコップと パパのおおきなコップに ぎゅうにゅうをいれる。

こぼさないように、しんちょうに。


「……できた!」

「ありがとう」


パパは、ニッコリとわらって、やきにくのタレといっしょに、ふたつのコップをおぼんにのせる。


「それじゃあ、たべようか」

「うん!」


わたしは、げんきに へんじをした。





「どう、おいしい?」

「うん!」

「……それはよかった」


パパは、ホッとしたように わらった。


「パパのおりょうり、じょうずだもん!」

「れんしゅうして よかったよ。 むかしは ほんとうに りょうりが にがてだったからね」

「えっ、そうなの?」


パパは、にがわらいして こたえた。


「う、うん、まあ。ちいさいころは にがてだったよ」

「へー。じゃあ、れんしゅうすれば うまくなるの?」

「そりゃ、うまくなるよ。いっぱい、いっぱい れんしゅうすればね」

「わたしも、パパみたいに おいしいおりょうり つくれる?」

「うん、きっと ぼくなんかよりも ずっとおいしい おりょうりを つくることが できると おもうよ」


パパは、えがおで こたえた。


「じゃあ、しょうらい パパのおよめさんになったときのために、いーっぱいれんしゅうする! おおきくなったら、パパにいーっぱい おいしいものを たべさせてあげるんだ!」


そういうと、パパは すこしだけ かんがえてから、あたまをなでてくれた。


「たのしみにしてるよ」

「うんっ!」


ニッコリとわらって、ごはんをたべた。



**



[20xx/04/01 19:53]


「パパ、ヤダ」


にんぎょうを、なげた。


「なにしたいの? えほん?」


くびを ふった。

パパは、こまった かおをしながら つみきのはいった はこを とりだした。


「じゃあ、これであそぼうか」


パパが、つみきを かさねはじめる。

カチッ、カチッ、と おとを ならしながら。


わたしは、それを てで たおした。


「ダメじゃん、そんなことしたら」


パパが、おこった。

うう、うぅ。

めから、なみだがながれる。


「わかった、わかった。やりたくないの?」


うなずいた。


「じゃあ、なにをしたいの?」


うえーん。

ひっぐ、ひっく。


おおきなこえで ないた。


「わかった、わかった。ねたいの?」


うなずいた。


「わかった、おきがえね」


パパは、パジャマをだしてきた。



**



[20xx/04/01 22:23]


くるくる、くるくる。

からから、からから。


くるくる、くるくる。

からから、からから。



***



[20xx/04/02 08:02]


「パパ、おはよう!」


しろいふくを きた パパは、ガラスのむこうから おはよう、といって わらった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パパ、だーいすき! ゆーの @yu_no

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ