四月の空

suiu

第一話

 今日の彼女は少し調子が良いようで、明日は桜を見に行こうと言ってきた。明日は雨が降るみたいだよ。と僕は答えるが、それでも見に行くんだ。と返された。

 

 彼女から僕に提案してくることは珍しいことだ。行きたくない訳では無いが、だからこそ、もしかしたらと変な勘ぐりを入れてしまう。


「大丈夫、まだ死なないよ」


 そう言った彼女の目は、僕の心を見透かしているようだった。それなら。と僕は了承した。


「そういえば今日から新年度だね。あなたと同じクラスになれるかなぁ」

「きっとなれるさ」


「それはウソじゃないよね?」


 彼女は自分の身体よりも、そんなことほうが気になるのだろうか。


「だって、今日ついた嘘は本当にならないもの」


「そんなことより、君は早く学校に来れるぐらい元気になりなよ」


確かにそうね、と彼女は笑う。


 そんな他愛もない会話をして、最後に彼女は「さようなら」と笑顔で手を振る。僕は「また明日」と笑顔で返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る