きみの物語になりたい――同題異話SR主催ライナーノーツ ~十二の月虹~

香鳴裕人

1st

桜花一片に願いを――April



同題異話SR -April- 『桜花一片に願いを』

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054889077619



 同題異話を主催するというのは、僕にとってチャレンジの色合いが濃いものではありました。背中を押されたというのは、僕も含め、同題異話を大切に思う人たちが、数多くいると感じていたからです。

 加えて言うならば、個人的なことですが、もっと積極的に人と関わろうという、僕の内部からの前向きな働きも作用しました。

 積極的に人と関わってこなかったと、そんなわけですから(苦笑)、人徳があるではないのですが、でもタイトルを考えることはできるかもしれない。今までの経験が役立つかもしれない。そういう見通しがあって、話を前に進めました。

 『同題異話』と『同題異話SR』では、やはりとも言えますが、おもむきは異なってくるでしょう。実際に開催してみて、同題異話という企画の形式がどれだけ主催者の影響を受けるか、予想以上に強いものがあると感じています。


 と、言いますのも、別な企画としていても、それは全く本当なのですが、どうしても連続性はある程度避けられず、生半可なまはんかもできないとなると、じゃあまず今までのタイトルを並べて確認しようと、スタートはそこになりました。

 『同題異話』で採用された12のタイトルは、配慮ゆえだと思いますが、状況が限定されないものが多いです。限定されるものは12のうち、せいぜい2、3ほどでしょう。それが今までのクオリティでした。

 そのタイトルの並びの横に、僕が真剣に考えたタイトルをひとつふたつと並べていけば、それだけで品質の出し方の違いがはっきりわかります。僕は自然と、自分のやってきたこと、自分の強みが出せるものを選び取り、結果、状況を限定しうる言葉になります。

 同題異話という企画形式で、自由度を下げてまで何を得たいかと言えば、皆さんが作品を思い描くきっかけになるのかどうか、です。書く幅を狭くしてでも、物語、あるいは詩情などをイメージしやすいことが優先されました。

 こんなタイトルであれば想像しやすい、そういうところは、今までの経験の強みでそれなりにわかっているつもりで、できる限り活かそうという試みになりました。

 こんなタイトルはどう? というよりは、こんなイメージはどう? というところでしょうか。

 まあ、今回それで、本当に似たり寄ったりの作品が多数となっちゃったら、素直に反省して直しますけども。


 今回、日本語としての遊び心を入れました。同じ語でも読みが複数あるというのは、日本語の非常に難しく、そして奥深いところだと思います。例えば(余談の域ですけど)、〈蠢く〉という語には、〈うごめく〉〈おごめく〉〈むくめく〉ないし〈をごめく〉というふりがなが振れます。意味はだいたい一緒なんですけども。「むくめく」という読みだと、「ときめく」「春めく」みたいな雰囲気ですけど、実際には〈〉です。

 すみません。例示を間違えた気がします。春の言葉のはずなんですが。

 さて、今回は読みがふた通りある語をふたつ並べました。意味に大きな違いはありませんが、それでも読みがふたつあるのですから、ある意味では日本語の醍醐味だろうと、そう捉えました。

 こういう、僕の辞書的な強さも活かそうというところもあります。


 繰り返しになってしまうのですが、2人目の主催者、僕がいてわかったことは、同題異話という形式は、主催者の強みに依存するところが大きくなりやすい、ということです。強みはそれぞれで異なってきます。

 誰かと同じようにやることが難しい形式なのですから、「あれは真似できない」という抵抗・ためらいはさっぱり捨ててしまって、もとより自分の強みでやるしかないんだと、開き直るくらいでいいのかもしれません。そんなものと知れば、どなたか、主催する気になったりします? 逆に難しいです?

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 ※僕の書いた企画内容の書式をコピペして、都合良く書き換えていただいても、文句言いません。【企画の趣旨】とか【今回のお題】とか、【その他の補注】など。文句言わないどころか、「これ雛形ひながたにならないかな……?」などと考えていたわけでして。僕自身、もともとの『同題異話』の企画内容を、だいぶお手本にしましたから。

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 僕の考えたタイトルが、皆さんの書く作品の、思い描かれた色とりどりのワンシーンになればいい、そんな野望があって、どうしても桜にしたいと思ってしまいました。本当は椿のほうが好きなんですが、でも、満開に咲かせるのならやっぱり桜じゃないですか。




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