ザ・エイプリルフール

曲家 ユウキ

episode#1 あの日あのとき

これはHeySayという時代の最初の頃の話だ。日米共同部隊というのがあった。


米軍特殊作戦軍最高峰のデルゥタフォース

の露払いとしての落ちこぼれで命の価値の非常に低い使い捨て部隊があった。


その名も特殊部隊ねぶたフォース。

そのエイプリルフールの始まりである。


エピソードのキーマンとなるこの男


※通称クニヲ五等兵


こいつは朝からキレイに掃除をしてふフリをしてゴミを漁るといういつも通り、まるでルーチンワークのようにクニヲは職場の朝を迎えていた。


が、その日はある男の陰謀が揺らめく朝だということをその時はまだクニヲは知るよしもなかった。


この部隊にて雑用として勤務するクニヲは少しでも目立ち、少しでも誉められることで自分の存在が必要であることを周囲の隊員に知らしめる必要がある。と錯覚している。


そうしないと生きていけないと思い込んでいるのだ。


知能の低さではかなり迷惑な男であることは間違いない、だが彼には特技があった。


どんなに低賃金でも、どんなにバカにされても、どんなに暴力をうけても、どんなにコキ使われ、100時間の連続任務にも耐えられ、文句を言わないという恐ろしい特技があった。


本当の意味でこの「ねぶたフォース」を愛しているのだろうと誰もが思っていた。


そこに集合時刻10分前に高い靴音を鳴らして近づいてくる男がいる。


彼の出自は誰も知らされておらず、その名前さえも本名かどうかもわからない素性のわからない男がいた。


通称リッチー伍長


頭脳明晰で、策略家であり、格闘戦技にも長け、格闘指導官でもあり、周囲を楽しませるような男であったため、その上司である隊長のマッケンジー・オーヤとは犬猿の仲でもある。


いつも殺伐とした任務を超えていくなかで友情などは不必要とリッチーは説いているが、それは馴れ合いとなり注意や、指摘ができなくなることを懸念しての行動であった。


リッチー伍長とクニヲ五等兵は以前どこかで面識があるようだ。


もしかしたら既に何を言っているのかわからないが、腹違い双子である可能性もある。


リッチーがゴミを漁っているクニヲを呼び止めた。


そこで不意を衝かれたクニヲは驚きを隠せない様子だった。


「ファ~?リッチーさんどうしましたか?」


「クニヲ、隊長がお前をお呼びである」


「ファ?なにもミスしてないですぅん?ファ?」


クニヲ五等兵は過去の過ちをたくさんリフレインさせたが、どう見ても隊長からは殴られる以外用事がみあたらないため


「な、な、なんの用事ですぅん?ファ?」


リッチーはクニヲに背を向けながら小さく言った。

「表彰だ」


不安だったクニヲ五等兵はそれはマンションから植木鉢が頭に直撃し、二階級特進したような衝撃を受けた。


なりふり構わずクニヲは走った。隊長の元へ、あのときのクニヲは他国からの投石を避けきれず喰らった鈍足なクニヲではなかった。


隊長までの20メートルを15秒フラットで駆け抜けるくらいのものであった。


「た、た、た、隊長!」


マッケンジーは「どうしたクニヲ」


「た、た、た、隊長が表彰すると呼んでいると言われたのできたですぅん?ファ?」


「お前なんて呼んでねえよ!なに言ってんだ!」


ファ~

と言いながら退散し、リッチーの元へ急ぐクニヲ


「酷いじゃないですかぁ!呼んでないじゃないですか!」


「気が変わったのかね。時間をおいてもう一度行ってみるといいよ」


四時間後


「た、た、た、隊長!なんですぅん?」


「おら!てめぇなんて呼んでねえよ!頭下げてお辞儀しろ!」


頭を下げたクニヲに

マッケンジーの低い踵落としが炸裂した。


ねぶたフォース達は

「エイプリルフールに気づいてないんじゃね?こいつ」と嘲笑している。



クニヲは後頭部とオデコにある鈍い痛みと戦いながら「あっ!4月1日か!」と思い、さんざん隊長からボテクリ回されたあとにリッチーの元へ


「酷いじゃないですかぁ!エイプリルフールだからって騙すなんて!酷い目に遭いましたよ!」


リッチーは静かにいい放つ

「今日は4月2日だ」


「ファー?1日勘違いでした!すみません!ファ?」



静かにエイプリルフールは過ぎ去っていった。


明日からの殺伐な日々の連続が日の出とともに待っている。


fin

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