世界の秘め事2
森羅解羅
1話 嵐の前の静けさ
選定者……世界の存亡を判断する者。又は目印となる者。
1.嵐の前の明るさ
その日、ユーデン国は、どこもかしこもある話題で賑わっていた。
「いよいよ今日ですなあ、シーラ王女とシン王子との婚約日!いやあ、めでたい!!」
「これでユーデン国も安泰ですなあ。亡くなられた王妃も喜んでいることだろう」
皆の微笑ましい声が聞こえる中、王宮の一室に悲鳴のような声を出している者がいた。
話題の中心人物の一人、当のシーラ姫である。この美姫とも名高い姫がなぜこの晴れの日に頑張っているかというと、、、、
「お嬢様頑張ってください!!あと1㎝は何としても短くしないと!」
「わかってるけど、痛いー!綺麗にドレス着るためとはいえ、ここまで細くしなくてもいいんじゃない?」
絶対にお腹の部分、赤くなってるわよ。毎回のウエスト引き締めだけは勘弁してほしい。
シーラは柱にへばりつきながら、メイドたちはシーラのウエストを紐で締めあげているところだった。
「レイ様は美容のためにこのウエストをキープしてらっしゃいます!!姫様も頑張って!!」
「レイのウエストは筋肉でしょーイタイィィィ」
美しく周囲に魅せるためにウエスト部分をメイドたちと一緒に行励んでいた。
そして、もう一人の主役は………王の庭の木陰でこれから義父となるであろうユーデン国の国王と共にチェスを行っていた。
「むむむむむ、なかなかしぶといのコンフォート国のシン王子は」
今日行われる婚約の儀式が終了すれば、シン王子はこのユーデン国で結婚式までの間にこの王国内で暮らすというのに、この国王はなかなかにして意地が悪かった。
「王もなかなかですよ。これほどの手腕とは思いませんでしたよ」
シン王子も前回、王がシーラをシンが守るよう体裁を整えたことを暗に攻めていた。
「フフフそう攻めるな。アレは強い。レイが鍛え、守っているからな。だから勝算があって行かせたのだ」
「それでも厳しい局面には変わりはありませんでしたよ。ほい、」
シンはチェスの駒を一つ前に進めた。これで、この勝負はシンに傾いたはずである。
「うお、待て待て」
「待ったなしです」
遠くから見ていると微笑ましい二人の盤上の戦いを遠くから見守っている影がいた。
「あいつも、素直に婿にきたシンを歓迎してやったらどうなんだろうな。婿にきたシンに手ほどきを教えろなどと遠回しに言うとは」
シン王子の父であるカリスであった。この王はシン王子の見た目とは違って顔、体格も2頭身では?というくらいにポヨンポヨンした人物だった。そして、その王の隣にいる人物が、、
「仕方ないですわよ。15年以上も前に結婚の約束をした二人が、とうとう婚約するなんて、わたくし、嬉しいくて、感動しちゃう」
シン王子の母親である、ルーナである。
シーナの国、ユーデン国と、第三王子のシン王子は、隣国という間柄、同じ年に生まれたために幼い時から許嫁として、お互いの国を行き来するなど交流があった。ユーデン国は女王君主国家であるため、次期女王の婿としてシンがユーデン国に行くことが昔交わした約束事であった。そして、冬季という農作物が育ちにくいため、比較的に落ち着いた民衆や王宮内が落ち着くこの冬に、宇極左局を経て、とうとう婚約の日を迎えたのであった。
「ママンもシンを大事に大事にしてきたからな」
「あらあ、シーラ姫も幼いころから可愛がってるから一層喜んでいるわよ。セレネ様の亡き形見ですもの」
セレネはシーラの母親である。つまり、ユーデン国の王妃だった人物である。
「そうですねえ、お嬢が幼いころに王妃様、亡くなられたから。一番式典にご臨席したかったことですわね」
隣国、コンフォート国の国王夫妻の隣には、レイが優雅にお茶を飲みながら座っていた。レイは、シーナ姫の教育係兼、武術の師であり、その強さから、途中シン王子の武術の面倒も見ていたため、シンの国王夫妻とも親しく面識があった。
「まあ、これにて、あいつも肩の荷が下りたもんだろう。我が両国の友好も万々歳だしな」
「そうですわね、オホホホ」
こうして、ユーデン国では、隣国の国王夫妻や周辺国家の伝令者、臣下、貴族を招いての、穏やかな時間が流れていた。
まずこの国での婚約の儀であるが、教皇となる人物の前にポセテリア教本を説いているのを婚約する二人、近親者がも臨席する中厳かにしめなわれる。両極にはそれぞれの父母、シーラの母親はなくなっているが、父である国王も出席していた。
その後、教皇が面前で二人に渡す紙にお互いの名前を書くのだった。そして、教会を出たあとは、そのまま宴会の準備がされていた。
長い教皇の説法も終わり、「これにて、この二人はこれから一年間は、夫婦になる準備として生活することを教皇アブガトザ二世が証人となる」
教皇の言葉は、聖堂に大きく響き渡り、周囲から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
「シーラ様、ご婚約おめでとうございます!」
「お二人に幸あれ!」
長年お互い幼馴染だった二人だが、ようやく一緒になって暮らせるのだ。シン、シーラにとっても、今日のことは嬉しいことだった。
お互いに顔を見合わせて、眼でお互い、今何を考えているのか見つめ合っていたが、ぷっ、とおかしくなって笑い合っていた。そのときだった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
突如として、立っていられないほどの地響きが聞こえた。
ドオオオオオオオオオオ――――――――――――ンンンンンンンンンン
すぐに横、縦と、激しく聖堂が揺れていた。聖堂内に垂れ下げているランプはすぐに倒れ落ち、ガシャーンと大きい音が聞こえる。
「シーラ、危ない!床に伏せろ!!」
「きゃあ」
シンはすぐさま異常を察知して、シーラを床に伏せさせ、その上から覆い被さった。
臨席していた女性陣からキャー―という叫び声と、床に伏せろー。
という声で、聖堂内は、一瞬にしてパニックとなった。
まだ揺れは続き、聖堂内から何かバリリリッリイゴオオオォォォンンンン、パリ――――ん、ガシャアアアーンンという音が聞こえる。この聖堂内にいる者たちは、死の恐怖を味わったが、しばらくして揺れが収まった。
「おい、揺れがおさまったゾ。外へ出よう」
皆がやっとのことで顔をあげた。
「な、なんだあ!?黒い岩だぞ!!」
誰かが叫んだ先には、見たこともないような大きい黒い岩が、数刻まではなかった場所に威風堂々と存在していた。上を見上げれば、聖堂内のシンボルである、光を指す大きなステンドガラスが割れて、床に無残に粉々と落ちていた。
そして、黒い岩は小さい物から、大きい物まで数えきれないほどあり、その振ってきた岩に当たったのか血を流している臨席者もいた。それを見た者はまたキャー―――。と悲鳴を上げるのだった。
「はやく、、、はやく、王家の皆様を安全な場所へお連れしろ」
「どうしたというのだ。外だ、はやく外に出よう!!」
「シーラ、大丈夫かい?」シンが心配そうに聞いてきた。
「ええ、大丈夫よ。けど、いったい何が起こったっていうの」そうつぶやいた。
「大変です!!!大陸の中心にあるカルディア剣山が、、、爆発しました!!」
外を守衛していた兵の一人が、聖堂内に叫んだ。
「な、なにぃ!!!」
「あの剣山が!爆発しただと!!??」
シーラと、シンが伏せていた場所は、ちょうどステンドグラスがあったが、目線をうつすと先ほどの激しい揺れで割れており、外からの景色が見れ、そして、その窓からは遠くにそびえたつカルディア剣山が黒く、おおきな煙を吐き出しながら、なおも火玉を吐き岩が各所から被弾している姿だった。
その、あまりの異形の光景に、二人は息をのんでただ立ち尽くしたのだった。
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