7月4日(木) 定期考査・三日目
定期考査も三日目に突入し、そして終わり……いよいよ明日が最終日という段階で俺はゲームをしていた。
理由は単純明快。
つい昨日に、最近ハマっているバトルロワイヤル系シューティングゲームの大型アップデート――すなわち、シーズン二が始まったからである。
長かった。待っていた。そして、楽しみにしていた。
新キャラの登場、新マップの配布……公式から発信されたトレーラー映像はどのシーンも期待を煽るものばかりで、我慢できるはずがない。
そして同時に、試験期間中ということで学校は午前で終わるため、空いた午後に遊ぶ――という選択は至極当然であった。
とはいえ、安心してほしい。
家に帰りつくのが午後一時、普段の就寝時間までジャスト半日という中で丸々ゲームに当てるほど俺はバカではない。
そこから夕ご飯までは試験対策に演習を解いたり、ノートを見返して、その後のご飯もお風呂も済ませた状態でゆっくりと嗜む姿こそ真の学生というものである。
――と、少し前置きが長くなってしまったけれど、そんな俺はこれから寝るまでの数時間をネットの友達と一緒にゲームで過ごしていた。
『――では、先月話していたバドミントンの大会で優勝したのですか?』
「えぇ、まぁ……何とか。運が良かっただけですけどね」
『またまた、謙遜を。運も実力のうちと言いますし、スカイさんの実力ですよ』
そんなお相手氏はいつかのテキストチャットの人。
同じ高校生ということで生活リズムが合いやすいのか、翔真の次には一緒に遊んでいる人物であった。
ちなみに、『スカイさん』とは俺のことであり、プレイヤーネーム『Sky_celloor』から取って、そう呼ばれている。
由来は教えない。ヒントは『俺の本名』。
「はは、どうですかね。まぁでも、優勝できたのはすごい嬉しかったです」
『おめでとうございます』
「ありがとうございます。……残念なことに、その分で試験に困ってはいるんですけどね…………」
そんな大して盛り上がりに欠けそうな自慢話にオチをつけるため、あまりよろしくはない現状をぶっ込んでみれば、しかし、相手は予想以上の勢いで反応してくれた。
『もしかして、試験中ですか!? 昨日も遊んでいたようですけど、危ういんじゃ……』
「大丈夫です、心配しないでください。帰宅してから今の今まで勉強してましたし、それに明日の教科はそこまでの内容でもないですから」
残された科目は、化学、古文、コミュニケーション英語の三つ。
一つ目はもちろん勉強しなくとも理解できるため必要なく、二つ目はもちろん勉強しても理解できないため必要なく、そして三つ目はさっきまでやっていた。
となれば、安心安全に明日へと臨めるわけである。
『そうですか……? スカイさんがそう言うなら、別にいいですけど……』
しかしなんだな。
口調やそこからにじみ出る雰囲気で最初から予想はしていたけど、この人はかなり真面目なタイプらしい。
いや、もちろんこれが全て演技だという可能性はもちろんあるし、そうでなくとも陰キャによくあるようなネットと現実で性格が変わるタイプかもしれない。
そんな疑えばキリがなく、否定する方が簡単だというのがネットの世界であるのに……何故かその俺のプロファイリングは真実のような気がしていた。
「ですです。なので、今日も楽しみましょう」
『…………はい!』
コントローラーを握りしめ、今日も俺はゲームの世界へと飛び立つ。
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