第14話 秘祭6

「そういうわけだから、琉斗」


 かいつまんで説明され、少年琉斗はとりあえず頷いた。


 陽が昇ると同時に長期の出張から帰ってきた父親は小さな女の子を連れていた。女の子は眠っていて、今は自分の布団で寝かされている。


 父親はしばらく家で一緒に暮らす預かった子供だと言っていた。説明を受けたあとで父親は母親にも同じことを説明しに二階へと上がっていった。


 ついさきほど、母親の部屋から扉の壊れる音が聞こえたからきっと父親が殴られるか蹴られるかしたのだと思う。二人が朝食を済ませたら修理業者を呼んでおこう。もう常連になってしまったから何も言わず扉を修理してくれるはずだ。


 次いで聞こえてきたのは大きな何かが階段を転げ落ちてくる音。父親に絆創膏を渡そうと思う。


 さて。


 琉斗は階段から落ちてきた父親をとりあえず置いといて女の子の寝かされている部屋の戸に手をかける。


 これだけ騒げば起きているだろう。


 二階と階段下では両親が大声で喧嘩をしている。


 戸を横に引けば、布団の上で小さく正座をして座る女の子が見える。金色の瞳が琉斗を捉え、首を傾げた。


「はじめまして、僕は藤野琉斗。君を連れてきた男の人の息子だよ。よろしくね」


 年相応の顔で笑いかけ女の子の目の前でしゃがむ。


 君の名前はなんていうの?


 琉斗の問に女の子は首を傾げたまま考える。自分の名前。


 自分の名前はそう、確か。


「あたしはミコっていうの。よろしくね、ると!」

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