超楽勝、チートな勇者が異世界攻略?(ALL LIE)
真上犬太
ログボで初心者優遇するのはお約束だよね
「というわけで、今日から貴様は俺の勇者だ。分かったな」
いや、何もわからん。
これっぽっちも分からないんですけど。
気がつけば、回りは変な空間だった。
妙に光がちらちらして、目が疲れたときにモニターが痛いのと似た感じ。
目の前には、三段ぐらいに積まれた石の段があって、そこにでかいイスが一つ。
そして、なんかいかにもえらそうな、半裸のイケメンが一人座っている。
金髪で金のブーツとガントレット、細マッチョ体型にひらひらした布みたいな服だ。
「なんだ貴様は。聞こえておらんのか。返事の一つもできぬ戯けか」
「いや……いきなりこんなことになって、ワケわかんないんですけど」
「やれやれ、今回の勇者はえらく察しが悪いと見える。ま、よいわ」
イケメンが、ぱちりと指をはじくと、何もないところに、いきなり人が現れた。
真っ黒な長髪に、真っ黒なスーツ、切れ長の目をした、めちゃめちゃきれいなお姉さん。
「説明を頼む。いい加減、この手の説明も飽いたゆえな」
「承知いたしました。それでは……お名前をお聞かせ願いますか、異世界のお方」
「い……
お姉さんは、俺に細かく教えてくれた。
ここはいわゆる天界で、目の前にいるこの人たちは、みんな神様なんだって。
そして、俺はその神様に選ばれた、勇者だということらしい。
「って、俺、もしかして死んじゃったの!? いつの間に!?」
「阿呆が。そんなことにはなっておらぬ。我らは正真正銘の神ぞ。生きながら貴様を招き寄せるなどたやすい」
「そちらの因果を乱さぬため、魂のみをこちらに招き、新たな肉体を授ける形になっておりますので、ご安心を」
なんだか良くわからないけど、ともかく俺は死んでないし、しかも別の世界で新しい自分になって動けるらしい。
これでもやっぱり異世界転生って言うんかな?
「で、やっぱり、勇者って言うからには、やることがあるんだよな? 魔王退治とか」
「その通りだ。貴様には他の勇者よりも早く、魔王を倒し、全てのものの頂点に立ってもらわねばならん」
「おっけー……って、全ての勇者? もしかしてライバルとかいんの?」
「応とも。今の天界ではな、あまたの勇者を呼び、いかに早く魔王を倒すかを競っているのだ」
うわ、なんかいきなりやな感じになってきたな。
競争相手がいるとか、そういうのって大抵、めんどくさいことになるってアニメで見たことあるぞ。
「案ずるな。この俺は天界屈指の実力者、貴様の憂慮を吹き飛ばしてやろう」
「えっと、あんまり難しいしゃべりはやめてくんないかな、わかんないから」
「ええい、面倒な! 要するに、あれだ、『ろぐいんぼーなす』というのを授けてやろうというのだ」
おおー、なにそれ。
異世界の勇者にログボとかあんのか!
で、具体的には?
「貴様には三つの神器を授けてやろう。この俺の神威を賭け代に、そこな"刻の女神"に発注して作らせたものだ」
黒いお姉さんがお辞儀をすると同時に、目の前に三つのアイテムが現れる。
その一つ一つを指差して、イケメンは説明を始めた。
「神器の一、絶断剣・ゼーファレス。俺の名を冠した神の剣だ。あらゆるものを切り裂く加護と、命令一つで達人の剣技を繰り出すことができる」
「神器の二、絶封鎧・ファレスティ。あらゆる攻撃をはじき返す守りを与える無敵の鎧」
「神器の三、至賢輪・ゼーファント。一切の詠唱を必要とせず、魔法を行使できる腕輪」
さすがにちょっと盛りすぎなんじゃないか? ってくらいのすごいアイテムだ。
剣は幅広のごついけデザインで、鎧はきれいな飾りのついた真っ青なヤツ。
いかにも勇者っぽい感じだ。
こんなに優遇されてていいんかな。
いや、いいのか。なんたって勇者なんだし。
「すでに、地上のある王国には神託を送っている。あとはその連中に聞くがいい」
「あんたは一緒に来ないのか?」
「俺はここで見ていてやる。何かあったら直接話しかけるのでな。ではさっさといけ」
「いや、行けって言われても……」
戸惑う俺の目の前に、いきなり水溜りが広がっていく。
その向こう側に見えるのは、いかにもヨーロッパっぽいデザインのお城。
えっと、もしかして、飛び込めってことか?
「大丈夫だ。別に死にはせん、とっとといけ」
「い、いやいやいやいや、だってこの高さだよ!? 普通に落ちたら死ぬってば」
「面倒だ。やれ」
「承知いたしました」
と、いきなりお姉さんが俺の近くに来たと思ったら、
「では、行ってらっしゃいませ」
とんっ、と、俺の背中を押した。
「うおおおおおああああああああああああああああああああああああああああっ!」
そして俺は、突き落とされた。
勇者として活躍する世界めがけて。
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