蒼き大海原の羅針盤 〜Romance dawn compass〜
鬼宮鬼羅丸
第一章 『冒険の幕開け』 旅立ち編
序幕 大航海の幕開け〈前編〉。
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――始まりは、混沌だった。星も大地も、海神も。
全ては、海から生まれた――
『大賢暦定、序章より』
大いなる
そんな世界ををそこに住む者どもは〈シーアナルダラ〉と呼んでいた。
陸が狭いが故に差が生まれ大きく開くが、広大にして偉大なる大海原の前では全てが等しく公平だった。
東の大陸、ランゲア大陸のさらに東の海に、九つ諸島と呼ばれる群島がある。大いなる
諸島から出ていく人も訪れる人もほとんどいない、そんな草臥れた島の一つにラリクスは住んでいた。少し日焼けしていて泳ぎが得意なこと以外とりえのない普通のありふれた少年である。いや少し違うのかもしれない。
大海焉が近く
諦観しているとも言うべきか。自分たちの海から決して出ようとせず活気が無いのが眠る海引いては
しかし少年は、ラリクスは自分が住む眠る海の外、世界にある全ての海に対して大きな輝かしい憧れを抱いていた。全ての海を見てみたいという思いは誰にも理解されず気味悪がられ、いつも一人ぼっちで暮らしていた。
ラリクスはただ海を眺めていた。海の果てしない水平線の彼方を、雲と空が途切れる世界の終り、大海焉を見つめる。
いつもの様に、いつか必ず目の前に広がるこの海を旅してみせると思いながら、恋い焦がれる少年の様に見つめていた。
どこまでも蒼くて広いが静かで草臥れた海原。白波が砂浜に上がっては降りていく。海鳥の悲しげ調べが儚く海岸に響きわたる。
そんな海を、朝早くから夜遅くまで眺めるのがラリクスの日課なのだ。
変わり者だから誰も注意せず関わろうともしない為、一日のほとんどを一人で過ごしている。
海は広くて偉大だが弱者には優しくない。決して一人で渡れるほど温厚な場所ではないのだ。弱みを見せれば海は牙をむく。悩みを見せれば海は誘惑をしてくる。生きる気力を僅かでも損なうと死へと
だからこそ一人では渡れない。島の様に巨大な海獣種であろうと、船の如く大きな海魚であろうと海を渡る際は必ず群れを成す。
他の大海域でその武勇を轟かせているという海賊達に、お伽噺話の主人公の様に仲間にならないかと誘われるその日を夢見て毎日祈ることだけが、今ラリクスに出来る事なのだ。
水平線の彼方に目を凝らしているからこそラリクスはそれに気付いた。
白い漣と共に何かが砂浜に向かって来ていることに。
周りの潮の流れとは明らかに向きが異なる潮流と共にもの凄い速さでそれが近付いてくる。どうやらラリクスのいる砂浜にやって来るらしい。
ラリクスは慌ててその場から離れた。
最初それは魚か何かかと思っていたがどうやら人みたいだ。
「この辺りに
ラリクスは半人半魚の種族を思い浮かべたが、よくよく見てみると
となると、考えられるのは―、
潮は一際大きく膨れ上がると浜辺に乗り上げ、水飛沫が上がった。一滴一滴が太陽の光を反射して宝石の様に光り輝く中、海と同じように蒼い髪と白銀の光り輝く瞳の少女が笑いながら海面から飛び出した。
抜群の体型で独特な民族衣装を着ていた。首には鱗があり、手と足には水掻きがある。少ない布地が少女の体型をよりはっきりさせ、魅惑の色香を放っている。
つまり、この少女は―、
「
偉大なる海流、大いなる
決して群れず一生の殆どを一人で暮らすというその種族は、海流に乗って世界中の海を旅して廻るという。こんな禄に海流が無い海に来る事など滅多にない。随分昔に通ったらしいが、今ではすっかり聞かなくなったこの近海では幻の様な存在。見たことは無いが海水を手足の如く操るその様はまさに海の絶対者である。
そんな
「お久しぶり、少年君。元気にしてたかい?」
と話し掛けた。身に覚えのないラリクスは首を傾げたのであった。
※当作品の世界観設定は、https://kakuyomu.jp/works/1177354054894807049にて記載することとなりました。宜しければご参照ください。
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