第5話
2月末のある日、担当医に切り出しました。
「すみません、外出許可が欲しいんですけど」
治療の経過は順調とはいえ、退院までまだ数週間ありました。
当然ですが、担当医は理由を聞きます。
「葬式に出たいんです。3月2日に青山葬儀場です。ここから近いですから、2時間ほどで済むと思います」
病院は信濃町駅の近くでした。でも慶応病院じゃないんです。今はありませんが、東京電力病院。父親が東電社員でしたから。
担当医の表情が変わります。「葬儀じゃ仕方ないかな」と。で、これまた当然の質問をします。
「ご家族の方ですか?」
この質問は想定してましたので、即座に答えました。
「いえ、ですが昔から知ってる人でして」
嘘は何一つついていない。
「わかりました。では特別に許可しましょう」
メフィストフェレスにサインした瞬間でした。
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