お化けを守ろうの会~己と友達の日常のために~

明日

俺の日常

『あーもー最悪!何であんたはまた仕事の邪魔するの!?』

 夜桜が綺麗に咲き誇りもう春なのにも関わらず季節外れの巫女服を着たクラスメイトは『近所迷惑でしょ!』とツッコミたくなるくらい大きな怒声を響かせている。

 『お前が転職してくれればもーこんな事しないよ』

 俺は冗談交じりに飄々と返すが頭のお堅い巫女には通じない。

 『答えになってないじゃない!それに私は町のみんなを助ける。この仕事気に入ってるからやめる気は無いわ』

 相変わらずの近所迷惑な声で何か的外れな事言ってやがる。

 『何が町のみんなを助けるだよ……あーもーこれだから神官や巫女は嫌いなんだよ!あいつらが何したって言うだよ!あいつらは俺たちと同じように生きてるだけなのに!あいつらが一度でもお前の言う町のみんなに迷惑かけた事でもあんのかよ!?』

俺の怒気に呼応するように強烈な追い風が吹く。

 『それは……でも妖怪は成仏させる決まりだから……』

巫女の近所迷惑だった声は段々と小さくなり遂には聞こえなくなってしまった。それもそのはずだ。さっきまで騒いでいた巫女が突然、女の子がしてはいけない様な顔して倒れてしまったのだから。そしてその背後には巫女を手刀したのか指を全て真っ直ぐに伸ばした右手を胸より上あたりに上げているツインテールの女の子がいた。

 『地獄に妖怪が来すぎたので止めるのお手伝いしに来ました♪閻魔の娘です♪これからよろしくお願いします♪』

月明かりに照らされた彼女は閻魔の娘というより釜を担いだ死神そのものだった。

 

 『〜ってな事があったんだけど、このあざとい後輩系女子どー思う?』

俺は昨日の事で寝不足気味だが高校の登校という青春の一ページを友達との談笑で埋める。

 『圭太殿。そのツインテ女子絶対圭太殿の事好きですぞ』

俺より100センチちょっとくらい小さい地縛霊のジバ犬と他愛もない会話をし(ジバ犬と圭太は危ない?え?ナンノコトかな?)、俺とすれ違うおばさんに何こいつ独り言言ってんのっていう目を向けられる。うん。いつも通りの日常だ。

 『お、ここまでですな。では圭太殿お気をつけて』

俺は妖怪界では名前が通っているらしく友達のジバ犬でも敬語を欠かした事はない。

 『おう。次会うときは、そんな敬語なくていいからな』

俺的には友達なんだから主従関係っぽいこの口調より、もっと砕けた口調にして欲しいだがな。

 『いえいえ。大嶽丸殿にお付きさせてもらっている時からこの口調なのでもー慣れてしまいました』

俺が通っている港高校の校門でジバ犬と別れ、新学期だが1学年30人の港高校にクラス替えの文字はない。代わり映えのしない2の1と書かれたクラスに入ると、いつも通りバイトのクレーマーじじぃを見るような目で見られる。何故そんな事がわかるかって?それは俺がそういう様な事をしているからだな。俺はドヤ顔で自問自答しながら、慣れてしまったこの目を無視して左後ろの定位置についた。これまたいつも通り、周りの目を気にしない金髪天パ眼鏡が近づいて来た。

 『おー久しぶり。圭太またネットで調べたんだけど、お前の家の近くにある池で出るらしいだよ。幽霊が〜』

俺を怖がらせたいのかお化けの形にした手をゆらゆらさせながら低〜い声で喋っているがこんな真昼間ならぬ真っ朝から言われても怖がる奴なんている訳……

ガタン!

俺のとなりの椅子が倒れる音がした。

 『まさか巫女お前怖いのか?

いつも友達(妖怪)殺しといて幽霊は無理なのかよ』

俺は昨日の怒声を上げてしまった気まずさをかき消すよう明るく、そしてこっちは素だが呆れたようにため息を吐きながら言った。

 『べ、別に怖くないから!てかその言い方だと私が快楽殺人犯見たいじゃない!』

本当に怖いのか、はたまた生理なのか知らないが頰をぷりぷりさせながらツンデレのテンプレみたいなセリフを言っている。が快楽殺人犯が言っても大して可愛いくない。アニメのツンデレが好きな俺としては現実でやられると何か腹が立ってくる。ので無視だ。

 『てか集人そーゆーの放課後で良くないか?先生来たらまた面倒になるぞ』

 『うんにゃ。それ言うならもー少し早くしないダメだぞ』

集人は左手の親指でこちらも代わり映えしない去年と同じガン黒筋肉担任を指しながら言った。

 『天野圭太。またお前妖怪の話してたな。罰として廊下で立ってろ』

 フルネームはダメ〜と明後日の方にツッコミをし、いつも通り罰を受ける。おばさんには変な目で見られクラスメイトには異様な目を向けられ、そして先生から謎の罰を受ける。うん、いつも通りの日常だ。(涙目)

 


 

 

 

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