冒険者達

@harunami4

プロローグ

プロローグ

 ここは大王国フィーネアメイズ。王国の大きさは他の国に比肩することなく、世界の中心に鎮座している。更に王国の中心に位置するのは王立冒険者ギルド「ミリオン」。このギルドは落とし物捜しから、強大な魔物の討伐まで、王国のありとあらゆる依頼を請け負い、それをギルド所属者へ依頼している。依頼主も様々なことながら、解決する冒険者も千差万別である。ギルドの依頼をこなすことを生業にする者も多く、ギルドのトップともなれば、一国の王を超えるほどの名誉を手にするとも言われている。他国からこのギルドを目当てに来る冒険者も多く、いつなんどきでもギルドは冒険者達で栄えていた。かくいうあなたもこのギルドへ所属するために、その扉を叩いた1人だ。




 昼夜を問わず冒険者達で溢れたギルドは、噂以上に沸き立っていた。昼間だというのにそこかしこで酔っ払いの馬鹿笑いが響き、パーティー募集の条件としての試験と思しき力比べなど、あらゆる光景があなたの冒険心を掻き立てた。フロアを見渡し、「新米」と書かれた看板を見つけたあなたは歩を進めた。




「ようこそ。冒険者ギルド、ミリオンへ」




看板の場所へ着くなりあなたは受付と思われる女性に声を掛けられた。




「ふふ。あなた、ミリオンは初めてでしょ?見てれば分かるわ」




すっかり言い当てられてしまったあなたは困惑しつつも、その通りであると告げた。




「それじゃあ、早速お願いするわね。スライムを一匹以上討伐してきてちょうだい」




いきなりの依頼に更なる戸惑いを覚えたあなたは、女性へ正式な手続きをお願いした。




「あなた、ここへ来るまでに魔物を討伐したことがあるのかしら?それは私には分からないわ。あなたが強靱な肉体をしていようと、華奢で可憐であってもね。このギルドに寄せられる依頼は色々よ。子猫ちゃんを探して欲しい、植物を育てて欲しい、王様を殺して欲しい・・・とかね。子猫ちゃんを探すのに強さは要らないとは言えないわ。道中で苦難が起こらないとは絶対的に言えないし、そもそも子猫ちゃんがあなたより強い魔物かもしれないじゃない?必要最低限の強さは身につけていないとお話にならないのよ。さて、話を戻すわ。あなたにこなして欲しい依頼はスライムの一体以上の討伐よ。がんばってね」




彼女は軽くウィンクをしてあなたを見送った。あなたは彼女に呆気をとられつつも、依頼をこなすために装備を整えることにした。




 討伐対象はスライム。体長は約30cm。液体が固形化したようなゲル状の魔物であり、所謂「魔法生物」に該当する。王国外に広がる草原に生息し、単独またはグループで行動する。




 スライムの情報を元に、装備を整えたあなたはいち早く冒険者へなるべく王国の東出口へと向かった。




 東出口の門は周辺の家よりも高く広く、とても大きなものだった。あなたは意気揚々と門をくぐろうとした。




「待ちなさい」




あなたは門番に声を掛けられ立ち止まった。




「君は冒険者か?」




あなたは肯定した。




「だとすれば証を提示しなさい」




あなたは困惑した。




「その様子だと証を持っていないようだな。と、いうよりもまだ冒険者でもないらしいな」




あなたはこれからなるつもりだ、と説明した。




「そうだろうと思ったよ。君は魔物を、いや、冒険者を甘く見ているようだな。いいかい?君はスライムの一体を相手にするつもりだろうが、この草原には他にも魔物は生息している。その魔物たちはスライムよりも強い。それにスライムですら、命の危機とあれば予想外の行動に出ることもあるだろう。君の生存率をあげるためにも頭数を揃えることを強く推奨するよ」




あなたは門番の言葉に納得をしたが、ギルドではそんなことは言われなかった、と不満げに漏らした。




「そうだろうな。しかし、依頼を達成するための手段や方法については指定されなかったはずだ。つまり、依頼を達成するために出来ることはするべきだ。一人前の冒険者になるためにはな」




あなたは門番に感心し、お礼を述べた。それと同時に疑問を抱いた。なぜ、親切にしてくれるのだろうか?と訊ねた。




「さぁ?なぜだろうね。どこの誰かも分からない死体を見つけることが嫌なのかもしれないし、君に嫌がらせをしようと思ったからかもしれない。いや、きっと私が良い人なのだろうね」




門番はそういうとニッと笑み、あなたにパーティーを組むように促した。あなたは門番へ再度お礼を述べ、ギルド「ミニオン」へ行き、パーティーの募集をおこなった。




 あなたは募集する構成を考え、依頼内容の確認や門番の言葉を思い出し、スライムの対処を入念に練り直した。




 そして、パーティーが揃った。あなたたちは迷うこと無く、東出口へと向かった。門番へ軽く会釈し、門をくぐり、王国の外へと踏み出した。これから始まるのは冒険者への一歩、いや冒険者としての一歩である。決して侮るなかれ冒険者の世界。




「さぁ、行け!冒険者達よ!」

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