探偵は弱きモノに優しく

 アタシのニーハイ、グリーンのウィッグにグリーンのカラーコンタクトのアイコン。


 まあ、プロモーションが功を奏してるのか、洋館ブランチにも結構依頼の件数が増えてきた。

 そんな折に18歳で高校を休学中の男の子が依頼人として洋館ブランチにやってきたんだ。

 王子様が依頼内容を訊く。


「ふーん。三都サントさんはニートなんだ?」

「ズ、ズバッと言わないでください。傷つきます」

「別にニートだからって恥ずかしがることじゃないわ。で? ご依頼内容は?」

「ね、猫を探して欲しいんです」

「猫?」

「僕の、大切な相棒だったんです」


 三都くんがスマホに保存された愛猫あいびょう『ノーラン』の写真を見せてくれた。


「カワイイ!」


 桜花おうかがその精悍な若い白猫のスリムな体躯を見てそう一言で総括する。

 まあ、アタシにしたらカワイイだけじゃなくって利かん気みたいなものを持った顔してるって感じるんだけどね。


「で? ノーランが居なくなったのはいつ頃かしら?」

「半年前。僕がちょうど高校を休学した頃です」

「半年・・・なかなかに厄介だわね」

「分かります。なんでもっと早く探偵社に依頼するってことを思いつかなかったのか・・・」

「因みになんで今頼もうって思ったのかしら?」

「この探偵社のアイコンの女の子が可愛かったから」

「え!」

「あ、キミがそうなんだよね? キ、キモがらないで? その・・・なんていうか、こういう感じの探偵社なら怖くないだろうって思っただけで・・・」

「ほほお」


 ニートになる前にバイトしたりして貯めてた予算の範囲で見積もって依頼成立。とりあえずは王子様のツイッターやLINEのネットワークにノーランの画像を載っけて拡散。

 それから、あとはまあ地道に三都くんの生活圏内を中心に捜索することになった。


「ノーラン、出ておいでー!」


 幼稚園の帰り道、桜花は無邪気にはしゃぎながら捜索活動を続ける。三都くんもニートとはいっても部屋からはこうして普通に出られるのでアタシと桜花と一緒に探すことになった。


「ひ、緋糸ちゃんは学校は?」

「・・・中学を卒業保留中」

「そ、そうなんだ。何? もしかして荒れてたの?」

「ううん。荒れてないけど、クラスの男子を6人病院送りにしちゃっただけ」

「え、あ、う、あ」

「怖がらないで? その時カーッ、ってスイッチが入っただけだから」

「お姉ちゃんは正義の味方なんだよ! だっていじめられてる子を助けようとしたんだもん!」


 桜花がアタシをフォローしようとムキになってる。『いじめ』っていうキーワードで三都くんの表情がなんだか一層暗くなっちゃったけど。


「緋糸ちゃんは強いんだね」

「全然。王子様にはいつもこき使われてるしね」

「わたしも!」

「ふうん。王子様ってどんな人?」

「え? まあ、見たまんま? グラムロック探偵なんてアタシは造語を作っちゃったけど」

「その・・・か、かっこいいよね、王子様って」

「そう?」

「ひ、緋糸ちゃんは、別に、なんとも?」

「うん。全く」

「ほんと?」

「ほんと」

「そっか」


 なんだろ。

 なんでこんなことしつこくアタシに訊くんだろ?

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