冬、君を探す。欠片を眺める。

シグナル


記憶というのは実に曖昧で

なのに強烈に覚えていることがある


でも、そのシーンを誰も覚えていない時

それは現実にはなかったことなのかもしれない


証明できないことの積み重ねの日々



夜に滲んだ信号に似て

ずっとチカチカして気になる


🚥


たとえば酔って歩いた、覚束ない記憶

どこを辿ったのか定かではないけれど

身体だけはどこかに心ごと運んでいく


人によって覚えているシーンが違うのは当たり前で

見た角度だって、聞こえた声だって違うんだ


あの時君は、ふと違う人を見ていたかもしれない

目の前を見ていても、心が彷徨っていたかもしれない


雨で濡れた信号のようにぼんやりとして

だから記憶の共有なんて出来はしないこと

憂いても仕方ない


🚥


朝目覚めた時の

夢と現実の境目が作用する記憶の改変


あの一瞬は、本当のことと変わらずリアルなのに

夢の手触りを、後から現実とすり替えないと言い切れるのか



点灯したまま壊れていくシグナルを抱えて生きていく






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