第Ⅲ章 2話

「はぁ... 」


会議室を出た陸軍強化施設にいく気力もなくなっていた私は、すぐ近くの技術強化施設の食堂で、安い缶珈琲を飲んでいた。


「浮かない顔してるね。ボルネシアお姉ちゃん」


異国の制服を身にまとう少女が、反対側に座った

「カエデ...もうこんな時間か」

カエデが持っている定食に目を向け、そのまま時計をみると時刻は昼過ぎだということを知った。

朝、会議室での話を終え、それからずっと珈琲を飲んでいたわけだ。

机の上を改めて見ると、缶の数は恐ろしいことになっている。一体いくらお金を使ったのだ。少し困惑いると、カエデは、声を掛けてきた。

「なんで技術強化施設の食堂にいるの?」

日替わり定食であるハンバーグを口に含みながら、不思議そうに見つめてくる。あまり皆に広めるような情報でないので、耳元で先程までのグルリアとの会話を説明する。


「...ふぅーん、スパイかぁ」

口に手を当て、考えるようなそぶりを見せる。

「うん、しかもこの施設にいるらしいの。

心当たり...まぁ、仲間を疑いたくはないよね」

「え、そう?」

「... え」

意外な返答をされ、思わず顔を上げる。

「だって、名も身元も知らない人がいっぱいいるんだよ?施設の人間だからって信じるものじゃないでしょ。お姉ちゃんは優しいのね。」

おかっぱ頭の15歳の考えとは思えない思考だが、一理ある。

18になった私よりも賢い彼女は機械操作に強い。彼女の祖国である皇国で学んできたようだ。亜米利谷と互角の技術を持っているとよく噂で聞く。ただ武器は作らない。彼女のポリシーらしい。

「カエデは、スパイとかに会ったことある?」

「毎日」

「... あー、そっちの国でいう冗談かな?」





「そんなのじゃない。


八雲ヤクモは、元スパイよ?」






「...っえ!!?」

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