光速度不変の原理  ~妄想力を駆使して考えた~

サ卜ウマコ卜

まえがき

 

 いきなりだけど「光速度不変の原理」というのを聞いたことありますか。

 「あ~、知ってるよ。常識じゃん」っていう人もいれば「光速度不変の原理って聞いたことはあるけど詳しくはな~」とか、「光速度不変の原理?何よそれ」っていう人もいると思います。

 「光速度一定の原理」なんて言い方もするけど「光速度不変の原理」っつうのは書いてある通り「光の速さは秒速30万キロメートルで世界中どこでも同じだよ」っていう意味です。まあ、本当は少し違うんだけど、大体こんな意味です。

 実は速さが変らないっていうのは光だけではなくて、音の伝わる速さも、空気の温度やら気圧やらを変えなければ同じ速さです。ここではよく使われる秒速340メートルとしておきます。

 じゃあどうして光だけ「光速度不変の原理」なんて特別扱いされていると思いますか。その答えは置いておくとして、まずは「光速度不変の原理」について簡単に書いておこう。

 全面ガラス張りの部屋があるとします。このガラスはマジックミラーになっていて、中から外は見えないけれど、外から中は丸見えっていう造りになっています。

 で、この部屋の中では男の子が東に向かってゴムボールを投げています。このボールの速さを部屋の中で測ったら時速50キロメートルでした。ということで、この男の子は自分は時速50キロメートルでボールを投げていると思っています。

 ところが実はこの部屋は東に向かって時速100キロメートルで進んでいました。では、この部屋の外でじっとして動いていない人から見ると、このボールは時速何キロメートルで東に向かっているように見えるでしょうか。

 部屋の中で投げられたボールの速さは時速50キロメートル。で、部屋自体が時速100キロメートルで動いているんだから、50と100を足して、答えは時速150キロメートル。ウン。ここまでは分かりますよね。

 今度はこの部屋にスピーカーを付けて音を出すことにする。このスピーカーは2つあって、部屋の東と西に、外に向かって取り付けてあります。

 この部屋が止まっていてこのスピーカーから音を出すと部屋の外の東と西に向かって音は秒速340メートルで伝わっていきます。じゃあこの部屋が東に向かって動き出すと音の速さはどうなると思う?

 さっさと答えを書いちゃいますが、外でこの部屋のスピーカーが出している音を聞いている人には、部屋のスピードが速くても遅くても音は秒速340メートルで伝わってくる、っつうのが答え。部屋が近づいている時でも、遠ざかっている時でも同じなんです。

 「え?でも近づいてくる時と遠ざかっていく時では音の高さが違うけど?」と思った人もいるかもしれない。確かにその通りなんだけど、音の高さは「音の速さ」ではなく「音の周波数」で決まるんで、残念ながらここでの話とはあまり関係がありません。

 じゃあ、なんで動いてる部屋の進む方向と速さに関係なく音は同じ速さで進むのか。それは動いているのは部屋で、空気じゃあないから。あ、本当は空気も動くけど、外の空気は絶対に動かないということで考えます。そこは目をつぶってちょうだい。

 音は空気の振動によって伝わるっつうのは知ってますよね。音を出す物がどんなにがんばって早く動いても音を伝えるのは空気。その空気が秒速340メートルでしか音を伝えられないんだったら、空気そのものが動かない限り音は秒速340メートルで伝わる、ということです。

 では、この部屋の中の男の子はどう感じるでしょうか。男の子が自分の耳で聞いている音の速さじゃなくて、スピーカーから出た音が外の空気中を伝わる速さは、男の子から見るとどうなるか。部屋が東に向かって時速72キロメートルで進む場合を考える。

 時速72キロメートルと言うのは秒速に直すと秒速20メートルになる。で、外の空気を伝わる音そのものの速さは変わらないから、部屋の東のスピーカーから出た音は、男の子から考えると部屋の速さの分だけ音の速さが遅くなっているように感じる。もともとの音の速さは秒速340メートル、部屋の速さは秒速20メートルだから、男の子が感じる音の速さは秒速320メートル。

 今度は西のスピーカーから出る音を男の子がどう感じるか。西のスピーカー出ている音も、東のスピーカーから出ている音と同じように、外の空気を伝わる音の速さは変わりません。だから、男の子には部屋の速さの分だけ、音が速く遠ざかっているように感じます。つうことで、男の子が感じる西のスピーカーから出る音の速さは、もともとの音の速さ秒速340メートルに部屋の速さ秒速20メートルを足して、秒速360メートルになるんです。

 先にしたゴムボールの話では、動く部屋の中でゴムボールを投げた時に、部屋の外にいる動かない人が見ると、部屋の動く速さによってゴムボールの速さが変わりました。だけど、部屋の中の男の子にとってはゴムボールの速さは変わらない。

 後の音の話では、スピーカーを積んだ部屋がどんなに走り回っても、部屋の外で動かない人には音は同じ速さで伝わるんだけど、部屋の中の男の子には前に出る音と後ろに出る音では速さに違いがあるように感じられるのでした。

 さ~てと、ここらで光の話に入ることにするかな。今度は部屋のスピーカーの代わりにサーチライトを置くことにします。ここでもやっぱりスピーカーのように照らす方向をそれぞれ東と西に向けます。今度の部屋は速いです。なんと秒速10万キロメートル!時速で言うと時速3億6千万キロメートル…速いにも程がある。何故こんなに速くしたかというと、計算しやすいから~。光の話をするのだから、光の速さを考えなければいけません。で、光の速さはというと秒速約30万キロメートル。ね、計算しやすいでしょ。

 この秒速10万キロで走る部屋から光を東と西に照らします。これを部屋の外にいる人が見たら光の速さがどう見えるか。答えは、前にも後ろにも秒速30万キロメートルで伝わっているように見える、です。

 音と同じですね。光を出している物がどんな速さでも、この空間が光を秒速30万キロメートルで伝える性質があるからそう見えるのだと考えれば分かりますよね。

 んじゃあ、今度は部屋の中の男の子から見た光の速さはどうでしょうか。やっぱり、音の速さのように前に秒速20万キロメートル、後ろに秒速40万キロメートルで離れていくように感じるのでしょうか。

 残念!そうはならない。部屋の中の男の子から見ると前にも後ろにも光が秒速30万キロメートルで進んでいるように感じるんです。

 ……ハイハイ。分かります。んなバカなと言いたくなる気持ち。最初聞いた時私も思ったもん。そんな筈ないって。

 「部屋の外で見る光が、前にも後ろにも変わらずに秒速30万キロメートルで進むんだったら、部屋の中から見た光の速さは、もともとの光の速さに部屋の速さを足したり引いたりするんじゃないの?」と思うよね。それがまともな感覚だ。

 しかしそうではないのが「光速度不変の原理」です。見る立場によって速さの変わるボールや音とは違って、見る立場が違っても、速さが変わらないのが光だって「光速度不変の原理」は言ってるんです。だからこそ「光速度不変の原理」とあるように、光の速さだけが特別扱いされているわけだ。

 けど、そのために空間や物が伸びたり縮んだりするわ、時間が遅く進むわと、この宇宙は大変なことになっています。このように、かなりインチキっぽい原理ですが、そのおかげで宇宙に行けたり、ナビ使って目的地に迷わずに行けたりしているんだそうです。

 ただ「分かった。光速度不変の原理が正しいと認めてやる。けど、何でそうなるかを説明しろ。説明責任を果たせ」と言いたくなるのが人情です。私もかなり調べた。では現代の科学者たちはどのように説明しているのか。

「世の中ってそういうもんだよ」……って、さすがにここまではひどくないけど、大体こういった感じの説明をしています。「原理っつうのは、『なんだか分かんないけどこうなってるんだ』っていうこと。なんだか分からないもの説明できるわけないっつうの」って感じですかね。

 ならば、とここで手を挙げたのが私だ。科学者が説明しないんだったら素人である私がやってみようじゃないの、と光速度が不変である理由を考え始めたわけです。ただ、残念なことに私には光に関する知識があまりありません。っつうか、物理学そのものがよく分かっていません。しかし、安心してください。人間には「想像力」という強い味方がいます。…いや、「想像」なんていいものじゃないな。……妄想…。そう、妄想。妄想するだけなら誰かに迷惑をかけることもない。妄想力を駆使しよう。

 と言うことで「光速度不変の原理」について妄想をめぐらすことにする。よかったら私の妄想を聞いてみて。

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