木染維月の表現手帖

木染維月

 一点の穢れも赦せぬそれは、全てを覆い隠そうと、後から後から降り積もる。絶えることなく降り積もり、過去の己すらも穢れとして覆い隠す。



 残酷なまでに純白。穢らわしいまでに純朴。狡猾なまでに愚直。ただひたすらに穢れを嫌ったそれは、あまりにも弱く、儚い。



 何もかもを白色で包み隠し、物音すらも吸い込んで、夜の街を征服してゆく彼女らは──朝が来れば無力に溶け、跡形もなく消えてしまう。

 この地球に蔓延る何よりの穢れ、人類が、アスファルトで覆った大地。それを、たった一夜、純白で覆って奪い返す──彼女らは一夜限りの、脆く儚く、そして限りなく獰猛な、復讐者だ。

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