第3話初討伐! 初報酬!

 何度斬りつけても、手に伝わるのは不快ささえ感じるような弾力だけだった。

 ――あれからどのくらい経っただろうか。

 金を貰うためにスライム討伐に来たのは良いものの、肝心のスライムが倒せていない。

 当のスライムは、斬りつけてくるこちらには目もくれず、畑に実った野菜の数々を体の中に取り込み、消化していた――のだったが、何十回目かの攻撃を繰り出すと、今まで眉毛の模様のようだった物が目尻を上げた。

 それに気付くことなく剣を手にスライムへと向かって行く。

「フッ――」

 一瞬の気迫と共に繰り出された切り下ろしは、スライムに届くことは無かった。切り下ろしを繰り出した刹那、スライムはこちらを向くと、一回り程小さくなると、それを戻す力で吹き飛ばした。

 とてつもない力で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。数回程地面との衝突を繰り返し、転がる。

 背中に何かが当たった感触。

 ぶつかったはずみでそれは口を開けた。

 農具が入った倉庫だった。中には、数種類の手入れの施された農具が綺麗に並べられていた。

 並べられていた農具は、ぶつかったはずみで地面に散らかる。

 ぶつかった衝撃による目眩から回復し、辺りを見回すと、スライムから十数メートル離れた所にいた。

 今使用している剣では埒が明かないことを悟ると、何か使えるものがないか周りを見渡す。

 すると、見覚えのある40センチ程の流線型の鉄の刀身をした刃物があった――剣鉈けんなただった。

「おい、この剣鉈借りるぞ! いいな?」

「え、えぇ別に構いませんが……」

 農場の主から許可を貰うと剣鉈を手にスライムに向かう。

 剣を何度か振ってみて分かったのだが、これは刀とはどうも扱い方が違うらしい。だから刀のように振っても上手く斬れなかったのだ。

 だが、この剣鉈は刀と同じように扱える。

 スライムに数センチまで肉迫する。

「ッ――」

 一瞬の気迫と共に背中と肩の筋肉を使い、背面に構えた剣鉈を振り下ろす。

 薄い皮を切ったような感触の後に、スライムは斬れ目からドロっとした液体を溢れさせた。

 どうやら討伐に成功したようで、農場の主が喜びに満ちた顔で駆け寄ってくる。

 こちらまで走り寄り、手を握る。

「やりましたねノブナガさん! 本当にありがとうございました」

 それから数分ひたすら農場の主にお礼を言い続けられ、お礼にとサンドイッチの入った弁当を貰った。


 行きとほぼ同じ時間をかけてようやく街に帰って来れた。

 ギルドに足を運び、クエスト成功の報告をする。

「凄いですねノブナガさん。スライムは、危害こそあまり加えてきませんが、スライムの皮は切断が難しく、熟練の冒険者でも中々手こずるんですよ」

 感心した顔でギルド職員の女は言う。

「おい女、農場の主からこれを持っていけと言われたのだが――」

 そう言い、大きめの紙袋を手渡す。

 女は中を見ると、「あーこれですか」と言い、袋をカウンターの奥へと持って行った。

 あの袋はと言うと、スライムを倒した後に、スライムの表皮とスライムの中心にあったプルプルの球体――スライムゼリーと言われる物を、農場の主が袋に包んでくれた。

 女はカウンターの奥から戻って来ると、牛かそこらの皮で編んだであろう袋を持って来た。

「こちら、クエスト成功報酬の金額五枚と、スライムの表皮とスライムゼリーの値段の金額十二枚になります」

 そう言い、計十七枚の金貨が入った袋をこちらに差し出す。

「ところで、金貨十七枚とは多いのか?」

 女は少し驚くと、顎に手を当てる。

「そうですねー、少し懐が温まった感じですかね」

 要するに、そこまで金持ちになった訳では無いことに少しガッカリしつつも、念願の金が手に入り、とうとう路上で寝なくて良くなったことに心底喜びを覚える。

 念願の金が手に入った景気に酒盛りでもしようと、ギルドを意気揚々と後にした。








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