プリンターの異音

ジェームズボンバークライシス

第1話

アンドブラックポポペポポロンリーロンリーオッパイプルプル株式会社の営業課に配属された、僕は新しい業務に期待を馳せていた。

業務課にいた僕に与えられた仕事は、僕には合わなかったし、ずっとオフィスにこもってるのは嫌だった。


この会社の業種は俗に言うスピリチュアリズムな商品を扱うことだ。

原価2円ほどの1本足りない箸のような棒っきれを1本36000円、100本単位の販売で売るのが僕の仕事だ。

俗に言うセールスマンだ、この"棒っきれ"の名前は「ハイパーウルトラデンジャラスグレートボボボウボボウボボウ」という、持ってるだけで金運が上がるという優れものだ!


そして、今日もボボボウボボウボボウを買ってもらえるように、足を棒にして、色んな家に走り回った。

しかし、ボボボウボボウボボウの話をすると大抵、詐欺まがいだと門前払いを食らう。

うーん、営業ってのも大変だ!

そして、毎回のことながら契約が取れなかったら上司からの罵声と、サービス残業だ!

給料は1日14時間働いて、8万円だ!

ちなみに交通費も含まれている。

最近徐々に体重が減ってきた…そりゃそうだ。もやしがメインの食事だし、そもそもお米を最近食べてない。

もやし1袋と味噌だけで生活してるからダイエットには最適だぜ!


そんなある日のことだった。

プリンターが故障したらしい。

印刷のみならすPDFもスキャンできるこのプリンターの価格、1秒間で10枚印刷できるこのプリンターの値段は「5897円」だ!

うーんキリが悪いな!税抜き価格だ!

税込で6,368円だ。やっぱキリが悪い!


しかし、この格安プリンターを1週間使ってみたものの、異音がするようになったのだ。

「バブンバボンブリュリュリュリュプピッピーボカンババババーンドマンドコアッアッア-ン❤️オッパイ」と印刷するたび大音量でオフィス中なるもんだからうるさくてたまらない!


これだとせっかくの運気も下がってしまう!とのことで、上司に相談し、メーカー担当をよぶことになった。

「うーん。故障ですね。」

「そうですかー」

「仕方ないです。プリンター自体消耗品みたいなものですからね」

「あの、修理代はどのくらいでしょうか」

「こちらですと、インク代、ボディ代、あと"その他諸々"含めて、9億3568万2163円ですね。」

その一言に部署全体が固まった。

「えっ」

「あっ」

「ふぁっ」


取り敢えず、見積もりだけもらって上司に相談することにした。

ありがたいことに上司がメーカーに問い合わせてくれたようだ。


しかし、驚きの結果が判明した。


営業から戻り、上司以外の人間がいないオフィスの中、泣きそうな顔を浮かべる上司に話しかけた。

「あの、ゴリゴリマン太郎部長。

で、その後どんな質問したんですか?」

「聞いてくれたか、谷本」

「僕谷本じゃなく山田です」

「まぁ、…そのプリンターを回収してもらおうと思ってな、そのことも問い合わせたらこう返ってきたんだ。

回収処分は別途料金いただきます。

値段は150万円です。

ちなみに専門の処分方法を用いないと、プリンター内部から異臭が漏れ、割とシャレにならないぐらい人が死にます。

貴方は、150万円を惜しんで…人を殺すつもりですか?死にますよ?そうなったらうへへ、150万どころじゃ、すみませんよおおおゲヘヘヘヘへ」


僕は、拳を握りしめた。

「なんて、詐欺野郎だ!」

「それは俺たちもだろ」

「えっ、あのボボボウボボウボボウは、手にすると昇進したり、お金を拾いやすくなったりするんじゃないんですか?」

「馬鹿、あんなの嘘に決まってるじゃないか!原価ほぼ0円にいかに価値をつけるかがビジネスの基本だろ?ビルゲイツも似たようなことしてんじゃん」


内心お前とビルゲイツは違うだろと突っ込みながら、このプリンターの件を考えた。


「しかし、プリンターいかがしますかね」

「そんなこと俺に聞かないでくださいよ。

異音を我慢するしかないじゃないですか!」

すると電話がかかってきた。


「こちらアンドブラックポポペポポロンリーロンリーオッパイプルプル株式会社営業課加藤が、…えっ!そっそうですか!

しょ承知しました!」

上司は、急いで受話器を置いた。


「どうされたんですか?」

「となりの会社の社員が異音が原因で鼓膜が破れ、死亡したらしい。

俺たちは大丈夫だったらしいけど、この異音は時に殺害もするらしい。

それでな、損害賠償3500万円を支払わないと裁判を起こすらしい。

ふふっ、面白いぜ」

上司が笑い始めた。


ああ、上司の気がついにおかしくなった。

仕方ない、死んだ目をしたリーマンが書いた小説の世界だもんな。

みんなおかしいに決まってる。僕でさえもな。


「で、どうするんですか?」

「決まってる」


上司は退職届を机に置いた。


「あとは、よろピコ太郎☆」と言いながら走って逃げていった。

「ぎょえー!無責任な!!!

どうすんだよコレ…」


どうすればいいかわからなくなった。

もう何も思考ができない、仕方ない、僕は、しばらく100均のスコップで穴を掘ることにした。

ほぼ寝ずに、穴を掘った、誰も褒めてくれない。

だが、これはみんなの命を救うためだ。


そして、1ヶ月後、なんとか穴を掘り終え、プリンターを穴に埋めた。

こうして、日常が戻ったと思った。


こうして、部長がいなくなり、部長の席を譲ってもらえた!

そう、僕が部長になったのだ!

そして、3年後〜・・・


ある朝目覚めると神が待っていた。

「命に終わりが来る」とそっと知らされた。

これは夢なのだろうそう思って、目をこすると神は消えていた。


気を取り直し、出社し、いつものように商品と書類をバッグに詰め、株式会社アンアンアンコに行った。

道中、久しぶりにあの"プリンター"を埋めた場所に立ち寄った。

「そういえば、久しぶりだな〜・・・

この場所に来るのも。どうしてこんな所に埋めたんだろう。焦ってたんだろうな。

いやーあれからどうにかなってよかった。

何とか裁判でも勝てたし、大事には至らずに」


そして僕はプリンターを埋めた場所に足を近づけると、………あれ、真っ白だ。

あれ…ここどこだ…


……青年が足を踏み入れた時、大爆発が起きたのだ。そして、爆発した場所に地雷などはなく、ただあるのはプリンターだけ。

実はプリンターは、プリンターではなく、プリンター型核爆弾であったのだ。

そして周囲50キロの人間は死滅した。


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プリンターの異音 ジェームズボンバークライシス @JAMESBOMBER_C

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