第20話
「指名依頼ですか…?」
「はい。本来は指名依頼は城下級からなのですが、書類を通さず、口頭でお願いされることはよくあるんですよ。こちらも別に表立って推奨はできませんが、まぁ、目くじら立てるほどでもないって感じですね。」
「はぁ…、それでいったいどちらからでしょうか。」
「マチダック先生です。学士を目指して王都図書国立研究所でご勉学なさっている方ですね。学士の資格はまだ取っていませんが、優秀な方だと聞いております。」
マチダック先生か!何回か図書館に通って質問したりしてたら、段々と話すようになってきたんだよな。
それで、俺に指名依頼を出してくれたのか…。
あれ、なんかこれちょっとうれしいな。ちょっとだけ恥ずかしいけど。
俺もある程度認められて来たって感じだろうか。ッうッフッフッフ。
「なかなかすごいことだと思いますよ。指名依頼が来ることもなかなかありませんが、学士の方からの依頼っていうのもすごいですね。彼らは信頼できる冒険者しか雇わないんですよ。」
「いや~、ありがたい話ですが、僕一人だけで出来るんですかね。腕っ節の方はそこそこでしょうが、経験豊富かと言われるととてもじゃありませんけど…」
「あ、その点はご心配なく。ショーさんはマチダックさんがいつも依頼している冒険者の、補助員としての役割をお願いされています。通常、補助員は依頼された冒険者か、こちらで選ぶのですが今回はご指名だったということですね。」
「なるほど。それでしたら安心です。すこし残念ですがね。」
「あら、なかなか自信に溢れていらっしゃるようですね。でも、その主冒険者もかなり経験豊富な方ですから勉強になると思いますよ。ギルドからの信頼はさることながら、王都都民からの信頼も厚かったりしますからね。」
なんだよその完璧超人。誰だよ。
「誰ですか?」
「メディンさんです。」
…学士メディンかぁ…。
俺苦手なんだよなぁ…。
「良かったじゃないか!ショー!指名依頼なんて早々あることじゃない。それが口頭のみの指名であってもだ。これは、依頼が楽しみになってきたな!」
「…今回指名を受けているのはショーさんとメディンさんのみです。ガルーザさんたちまで依頼を受けることは出来ませんが。」
いつも思うけど、受付嬢ってガルーザさんのこと嫌いだよね。やっぱ女たらしは嫌われるのか。でも、モテてるしなぁ。モテたいっす。
「いやいや、僕とショーは臨時とは言えパーティーを組んでいるんだよ!?だったら一緒に仕事するってのは何らおかしいことじゃないじゃないか。是非一緒に受けさせてくださいよ。お金なんていりませんから。」
と言いつつ、僕の耳に近づいて囁く。
「実はメディンさんのファンなんだ。一度でいいから一緒に仕事をしてみたかったんだよ。あと、情報屋としての仕事ぶりも聞いてみたい。なぁ、ショー、彼女を説得してくれよぉ」
大分、メディンさんにご執心だな。ま、俺もお世話になってるから問題ないか。
「あの…よかったらガルーザさんたちも一緒に来ても大丈夫でしょうか。その分戦力は上がりますし、お金もいらないって言ってますし。それに彼らがいると僕が安心します。」
「…依頼を受けていない第三者が、ショーさんと同じ方向同じ場所に向かう。これを咎める法律はありません。」
「な!?大丈夫だろ!いひゃー、楽しみだなぁ!」
「依頼は3日後、マチダック先生の護衛です。探索場所は王都近くの森全般。依頼期間も3日となっております。」
「あ、はい。了解です。」
メディんさんかぁ…、最初はどうやって接すればいいかな…。やっぱ謝ったほうがいいかな…。
「よく来たな!ショー!」
「マチダック先生!あの…、なんかありがとうございます。ギルドに口聞いてもらったみたいで…」
「うん?あぁ、そのことか。こっちもいろいろあってね。それに、君はなかなか見どころがあるからね。今のうちから学士のなんたるかを知っておけば、今後、他の学士たちも助かるだろう?」
「今後…?他の学士の方も僕に依頼を出すんですか?」
「かもしれないということさ。学士はなかなか気難しい連中が多くてね。まぁ、それだけなら大した問題じゃないんだが…」
「先生。メンバーが揃ったのならそろそろ行きましょう。余計な人間もいるが。」
「む。そうだな。メディン殿。ショー。メディン殿は知っているか?」
「あぁ、はい。まぁ、その……知ってます。」
「随分よそよそしいじゃないか、兎狩り。俺に万年城下級と啖呵切ったあの時の元気はどうした。」
「ほぉ…、メディン殿にそんなことを…。ショーもなかなか頼もしいじゃないか。メディン殿を万年城下級と言えるんだ、そりゃ、ショーの実力たるや…」
「いえ、あの、あのときはほんとすんませんでした。あの時は随分調子に乗ってたようなので…。」
「遺恨を残さないのはいいことだ。ところで後ろのやつは何のようだ。確か依頼は俺と、ショーのみで受けるはずだったが?」
「ガルーザと申します。メディんさんのことは前々から聞き及んでいました。今日は是非、その仕事っぷりを見学させてもらえたらな、と思いまして。」
「仕事の最中にそんなことされると気が逸れるな。出来ればお引き取り願いたいのだが…」
「もちろんメディんさんのお邪魔にはなりませんよ。もちろん依頼はお手伝いしますし、分け前を寄越せなんてみみっちいことはいいません。ただ、仕事ぶりを拝見したいのです。」
「まぁまぁ、メディン殿。こう言っているしいいじゃないか。手が増えるのはありがたいし、熱心な若者は私も好きだ。」
「ありがとうございます、学士様。私学士の方にお会いするのは初めてです。」
「ん?そうか?まぁ、王都にいる奴らは基本的に図書館にこもりっぱなしだからな…。まったく、実際に現地に赴かねばわかるものもわからなくなると言っているのだがな…。」
「…先生がそうおっしゃるなら構いませんがね。」
よかった。なんとかマチダック先生を納得させることが出来た。ほぼ全て、ガルーザが交渉していたが。
「さて、そろそろ森に行くか。っとその前に、本作戦の概要を説明しよう。」
「今回は、王都の森のハズレに発生した遺跡…らしきものの調査だ。」
「らしきもの、ですか?」
「あぁ、そうだ。どうやら人工物だということはわかったのだが、大分劣化しているらしくてね。遺跡かどうかもわからない。ただ、王都近辺では古代文明の遺跡が多く発見されていることから、そのうちの一つだろうとは考えられている。」
「でも先生の研究している内容とは違いますよね?確か…、魔素力学基礎研究でしたっけ?」
「ほぉ~…、ショーは先生の研究内容を知っていたのか。」
「え?えぇ。図書館で何回か会ううちに教えてもらいました。」
マチダック先生の研究は、陰陽理論から更に飛躍して、基礎四元素統一理論と言うものらしい。基礎四元素の陰陽を持ってすればすべての魔法の現象を説明できるという理論を更に前進させ、魔素というものですべての魔法を説明できるのではないかということらしい。ちなみに魔素という考え方は、マチダック先生が暫定的に仮定している物体ということらしい。
「うむ。確かに、関係ない……かも知れない。この研究は私が師事している先生の研究テーマなんだ。古代文明の技術の再発見というところかな。その為には古代文明に関わるものを調べていく必要がある。ただ、古代文明には高度な魔法技術が使われていた。陰陽説だけでは説明できないほどのね。だから、まったくの無駄というわけではないんだ。ま、使い走りの面もかなり強いがね。」
「ショーは意外と教養があるよね。そんなこと気にしている冒険者なんて聞いたことないよ。」
「全くそのとおりだな。学士の研究内容に興味を持っている冒険者なんて、メディン殿かショーくらいしか知らん。」
「知識はまず集めることが大前提ですからな。集めておけば、思いもかけないところで結びつくこともある。それがどんな知識であってもです。」
「冒険者として長く生き残っているメディン殿が言うと説得力が違うな。僕も耳が痛いよ。」
「マチダック先生はかなり優秀な方だとお聞きしてますぜ。先生に謙遜されたら皮肉にしか聞こえませんな。」
「褒め言葉だと受け取っておこう。ま、そういうことだから、その遺跡までの護衛と収集の手伝いといったところか。遺跡にめぼしいものがあったら持って帰って研究したいのでね。」
とりあえず、簡単なブリーフィングを終えた後、早速遺跡に向かう。道中出る魔物は倒すなり逃げるなりしてかまわないらしい。倒したものは僕らの取り分ということにして良いとのことなので、なるべく倒していこうということになった。
ガルーザはメディンさんのファンだと言う割には、道中あまり話していなかった。
また、マチダック先生はフィールドワークを良くすると言ってもやはり学士ということで、歩いている最中早速バテてきたのか、段々無言になっていった。
ということで道中話しているのは俺とメディンさんだけになる。
「メディンさんはパーティーを組まないんですか?どこでも引っ張りだこだと思いますが。」
「臨時で組むことはあるが、基本的には一人だな。そもそもパーティーを組むっていうのはかなりリスクが高い。安易にはしないほうがいい。」
「でも護衛依頼とかパーディーを組んでないと受けられないのでは?」
「別に受けられないわけじゃない。パーティーを組んでたほうがより簡単だってだけだ。だが、どうせギルドが規定人数になるまで調整するんだ。護衛日当日に、他の冒険者と打ち合わせをすればだいたい問題ない。」
「そんなもんですか。僕の冒険者のイメージはパーティーを組んでるイメージだったので。」
「それも間違っちゃいない。開拓大陸なんかではパーティーを組まないと仕事にならないらしいからな。ただ、王都ではパーティーで受けなきゃいけない仕事なんてほとんどない。わざわざ組む必要もない。」
「高いリスクっていうのは何があるんです?」
「一番ありそうなのは囮役にされるとか、どっかに売り飛ばされるとか、とにかくろくでもないリスクばっかりだな。そもそもパーティーを組んでる奴らなんか冒険者になる前から組んでた奴らが多い。冒険者になってからパーティーを組むっていうのはなかなかリスクが高い。」
「でも、依頼上パーティーを組むものが多かったりするでしょう。パーティーを組んだときのほうが儲けが出るのは有名な話ですし。冒険者になった後、パーティーを組みたい人はどうすればいいんですか。」
「まずは半年くらいは様子を見ることだな。その間は情報をあるだけ集めて、素行の良い連中に目をつけるわけだ。良さそうなところにそのままパーティー加入する。っていうのが一般的だな。」
「…随分慎重なんですね…。そんなこと気にする必要もないと思うんですが…」
「…なぁ、坊主。冒険者ってのぁどんな奴らだと思う?」
「え?そりゃ…、自由を求めて…腕っ節だけでのし上がってく開拓者って感じでしょうか?」
「随分とお上品な言い方だな。」
「え?でも冒険者通則にはそんなようなことを…」
「まぁな、しかしありゃ建前ってやつさ。実際は犯罪者さ。」
「犯罪者?そりゃ、ちょっといいすぎなんじゃないですかね。」
「そうか?なぁ、もしこの世に冒険者って職業がなかったとしたらどうなってたと思う?」
「…」
「兵士になれるほど腕っ節があるわけでもねぇ、職人になるほど腕があるわけでもねぇ、教育を受けさせてくれる両親がいるわけでもねぇ、そんな奴らの最期の受け皿が冒険者さ。じゃぁ、その冒険者がなかったらこいつらはいったいどうなる?」
「…」
「野盗か盗賊か、いや、徒党を組める頭があるだけマシだな。せいぜい露天の食いもんをかっぱらって両腕をぶった切られた乞食か奴隷になる。そんなもんが関の山だろう。」
「そんな禄でもねぇ奴らにも這い上がるチャンスをくれるのが冒険者ギルドってやつさ。素晴らしくて涙が出てくるよなぁ。」
「…心の底から賛成してるってわけじゃなさそうですね。」
「ギルドも心得たもんでよ。俺達が他に行き場がねぇってことをよくわかってやがる。ここを追い出されたら犯罪者になるしかねぇってことを知ってるのさ、ギルドも、俺達もな。」
「だからこそ、必死にしがみつく。なんとか食いつないで一端になるためにな。その為には手段は選ばねぇって奴はゴロゴロいるさ。ここを逃したら犯罪者になるって奴らの手段は選ばないって意味は…わかるよな?」
「で、でも冒険者は冒険者に危害を加えることは禁じられています。そんなことした瞬間に冒険者の資格を失います。必死にしがみついてる人たちがそういったことをするのは矛盾しているようなきがするんですが。」
「そうだな。バレれば冒険者じゃなくなる。」
「…」
「まぁまぁ。たしかにそういった冒険者もいますが、王都の冒険者はそういう人は少ないですよ。」
「…まぁ、そうだな。少ないな。」
「それに、彼の面倒は僕らがしっかり見ます。なんの問題もありませんよ。」
「…とにかくあんまりホイホイ人を信じるのはどうかねって話さ。」
「そこら辺もすでに教えていますよ。しっかりとね。」
「…そうかい。そりゃ安心だな。」
全然安心した素振りを見せずにメディンさんは言い放った。
その後も色々冒険者としての心得みたいなものを教えてくれた。
最初に謝ったからだろうか、結構色々教えてくれた。
その中には色々唸るような知識も教えてくれた。
ちなみにメディンさんも魔法を使えるそうだ。どういったものを使えるかの詳細を教えてくれるわけではなかったが、探査・情報伝達系の魔法らしい。
自分で編み出したわけではなく、こういった依頼で仲良くなった学士さんに教えてもらったそうだ。
学士さんは自身の魔法が生き死にに直結しているわけではなく、また、貧乏な場合が多いので報酬の代わりに魔法を教えてくることもあるらしい。
お金にはならないことが多いが、なるべくこういった依頼を受けたほうがいいらしい。
とはいっても、そもそも学士から依頼を受ける事自体がそこそこ難しいので、チャンスを無駄にするなと言った程度であったが。
そんなことを話しながら目的地に到着。
目的地には小さな石碑のようなものが立っていた。
大きさは大体僕らの腰ぐらいの高さのもので文字がびっしりと書き込まれている。
古代文字らしい。
古代文字にも幾つか種類があるらしく、こちらはすでにあらかた翻訳が済んでいる言語であるらしかった。
とはいっても僕らにその翻訳が出来るわけでもなく、マチダック先生が調査している間護衛と野営の準備をしていた。
マチダック先生が言うにはやはりあまり新しい発見はなく、取り敢えず教授のデータの一つにするとのこと。
そういって今度は石碑の様子をしっかりと模写し始めた。
「ずいぶんと絵がお上手なんですね。」
「ん?ああ、これか。たしかにそうだな。と言うよりこういった現地調査では必ず記録として残さなければいけないからな。学士の人間は絵がうまいやつが多い。」
たしかに、芸術的なうまさというよりも、正確さといったうまさだ。
「それにしても素人じゃそこまでうまく書けないですよ。」
「どうしてもこういった事をすることが多くなるから自然とうまくなるのさ。何度もこういったところに足を運べない場合が多いからな。皆、それなりに真剣に書く。」
「へぇ~。なんか画家としてもやっていけそうですね。」
「それについては面白い逸話があってな。ある学士が自身の研究成果を本に出したら売れに売れてな。それは自身が描いた挿絵がふんだんに盛り込まれた本だったわけだが、本の内容も去ることながら挿絵のほうが大分評価されてな。試しにということで、自分が行ったことのある風景の絵を画集として出したらそちらのほうが売れてしまったという話がある。学士としても大変優秀な方なんだがな…、画家としての才能のほうがあったわけだ。学士の間では記録のとり方の教本として重宝されてもいるんだ。」
「どんな本なんです。」
「『薬草大全集』全3巻だ。後半の方はやけになったのか、ほとんど挿絵しかなくてな…。しかもソッチのほうが売れ行きがいいらしくて随分へこんだらしいぞ。」
「おおう…。でも、実用的な本でしょうから、絵だけでなく内容も優れていたんでしょうね。」
「ああ、特に実用的な野草については1巻目に全て記載されているんだ。2,3巻目は珍しい草花や、伝説上のものを想像で挿絵にされていてな。…これがまた確かに美しくてな。若い学士は、薬草のことよりも絵の書き方で著者に質問をすることが多いらしくてな。著者の方はすこし嘆いておられたよ。学士だけでなく民間の人間にも求められた素晴らしい内容なんだけどな…。」
学士の世界にも色々あるようだ。
また、スケッチに戻った先生を残し、夕食の準備に取り掛かる。
まぁ、干し肉だから殆ど準備は必要ない。
結局日が暮れるまでスケッチをした後、次の日の昼まで記録を残していた。
そこから、王都に向かい、今回の依頼は終了。
帰り道もメディンさんに色々教えてもらった。
興味深かったのは、奴隷のことだ。
「坊主はあまりこういったことに詳しくないかもしれんがな、奴隷ってのは簡単になっちまう割には抜け出すのは難しい。」
「抜け出すのは難しいっていうのはなんとなく想像がつきますが、簡単に奴隷に落ちるものなんですか?」
「ああ。奴隷になるのは、借金、犯罪、身売りってとこか。借金もまぁ…、無理に金を借りず、堅実にやってけば問題ない。というよりも、そもそも借金自体あまりできない。返す当てがなさそうなやつにはそもそも貸さないしな。本当に予想外のことが起きて莫大な借金をしてしまったときの、貸付側の不満を和らげる意味での奴隷落ちだ。人一人奴隷になったところで大したカネになるわけでもないからな。」
「?じゃあ、早々奴隷になることはないのでは?犯罪だってしないように気をつければいいし、身売りも、まぁ、冒険者やってれば仕事があるところに移ればいいでしょう?」
「そうなんだがな。問題は騙されて奴隷に落ちる場合よ。こういった奴隷はそもそも声を上げることが出来ない。」
「そうですか?町中で大声で騙されました!って叫べば少なくとも無視することは出来ないと思いますがね。」
「いや、叫ぶことすら出来ないのさ。隷属の首輪ってのがあるんだがな。知ってるか?」
「いえ、初めて聞きました。」
「この首輪をつけてると、魔法で強制的に行動を制限される。こいつのスゲェところは自分が意識できないところでも従わせることが出来るんだ。心臓の鼓動をはやめろとか、腹の中のものを全て出しつくせとかな。」
マジか。ゲリとゲロが止まらなくなるのか。
「笑えねぇのが、こいつを売り出してるのがリヴェータ教だってところさ。恵まれない者に施しをっつッてる割には、そいつらに止めを指しに来やがる。ご立派なことだ。」
「騙された人間が行き着くところはだいたい奴隷だ。んで、首輪をつけた奴隷の管理は楽で確実だ。騙されて奴隷にしたわけだから開放もねぇ。晴れて一生奴隷コースだ。…騙されたくねぇもんだなぁ。オイ。」
「首輪をどうにかすることは出来ないんでしょうかね。」
「さて、どうなんだろうな。当然、首輪の仕組みを明らかにならなかったそうだ。そもそもリヴェータ教自体もよくわかってないらしい。じゃあどうやって作ってんだって話なんだがな。」
まぁそこら辺を教えてはくれないだろうな。いい金づるだろうしなぁ。
「確か首輪自体はリヴェータ教の神様に直接作ってもらうそうですよ。神に願い、そして隷属の魔法を首輪に与えてもらうそうです。」
ガルーザさんが少々得意気に話し出す。こんな風に話すのは少し珍しい。
「じゃあ、首輪自体はどんなものでもいいんですかね?」
「そうみたいだよ。何百個も作って一気に隷属の首輪にしてもらうんだってさ。」
「随分と詳しいじゃねぇか。確かリヴェータ教の秘技とされてたはずだが?」
「僕のパーティーメンバーにリヴェータ教の助祭がいるんです。その関係ですこし教えてもらいました。」
「ミジィさんですか。確かに彼女なら知っていそうですね。」
「作り方自体はそんなに隠していることでもないらしいよ。ぶっちゃけ誰も真似出来ないから言っても構わないんだってさ。」
そりゃそうか。
俺がいきなり祈ってもそんなことしてもらえるとは思えないし。
こんな方法だってわかれば、逆にリヴェータ教でしか作れないということが詳らかになるわけだ。売上も上がりそうだな。
そんなこんなで王都に到着した。
正直今回の依頼はかなり楽な部類だ。困難でお金もらっていいのだろうか…。
マチダック先生に依頼完了のサインをもらった後、正門で別れる。
「じゃあ、依頼完了の受付をしに行くぞ。」
「え?あ、はい。」
「ん?なんだ、何かあんのか。」
「あ、いえ。こういうのはグループで一番偉い人が一人でやるものだと思っていたので。」
「…いいか。自分が受けた依頼の完了報告はどんなときでも必ず受け付けまでいけ。もしかしたら依頼を受けていないことになっているかもしれんし、依頼料をちょろまかされているかもしれん。必ず確認しろ。」
「いつも僕が気を利かせてやってしまっていたから、ショーにはそこら辺を教えていなかったね。ま、そういうことだよ。ショー。次から気をつければいいさ。」
そうだったのか。いつもガルーザさんにやってもらっていたが、これからは自分もやろう。
アンナさんもミジィさんも受付まで行かないから、俺もいいもんだと…。
結局3人で受付を済ませ、依頼完了の手続きをしてもらった。
「それじゃあな坊主。お前はなかなか筋がいい。冒険者やってりゃ色々あるとは思うが…、まぁ、生きてりゃなんとかなる。とにかく死なないことが大事だ。」
「ありがとうございます。また、一緒の依頼の時はよろしくお願いします。」
「…ああ。その時までには独り立ちしてろよ。」
「大丈夫ですよ。その時までにはショーは独り立ちしています。」
ガルーザさんの言葉を聞いているのか聞いていないのかわからないが、そのまま行ってしまった。
「いやー、いい勉強になったね。さすがメディンさんだなぁ。なんだかショーと組んでからいい経験ばっかりしているよ。今までこんなことなかったなぁ…」
ガルーザさんはしみじみとした様子で呟いている。
確かに彼の話していた内容は勉強になった。ガルーザさんはあまり話せなかったようだが、老練な冒険者の語りは聞くだけで価値が有ることはわかる。
「そういえば、明日からの遠征は、正門前に朝集合だ。鐘がなる前に正門前で大丈夫かな。」
「え?あ、はい。でも準備がまだ…」
「そこら辺は正直問題ない。大規模遠征だから必要ブッシはこちらでだいたい揃えているんだよ。ショーは武器だけ持ってきてくれればいい。」
「そうですか…。それじゃあ、明日朝、正門前で。」
そういってガルーザさんと別れた。
ガルーザさんは正門前でいつまでも手を降っていた。
いつまでも、いつまでも。
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