真剣師事件・六



上宮修羅印、5月3日生まれ、関西地方で上宮重工という日本では数少ない武器製造工場を持っていて、自衛隊にも武器を卸している企業の社長、真剣師でもあり、吸血鬼でもあった男。趣味は札束お尻ペンペンである。



逃げた二人は魂を盗む『死神怪盗』と裏路地で出会ってしまった。

「なんだこれは」


俺は悪寒がした、死が近い、そういう類いの冷たい殺気を目の前の存在から感じる。


「パパが近くにいるけど、知ったこっちゃないですね、まぁいいや、用件は一つです、その女装野郎をよこせ」


「え?」


今、女装野郎と言ったのか?

こんな女が実は男だと?

非常識だが股間をまさぐると違和感があった。


「変態!」


レイピアを振り回される。

自分はそれをやすやすとかわした。


「ほんとだ、女装野郎じゃねぇか」


「今のレイピア、別にかわさなくていいですよ、それは演劇に使われるような刃は引っ込むわ、血糊は飛び出るわ、あくまで玩具の一品ですよ?」


「プロバビリティの犯罪をやる気かよ」


プロバビリティの犯罪、ミステリ用語。江戸川乱歩が唱えた概念で、「こうすれば死ぬかもしれない」という偶然性や運を利用した方法で間接的に相手を死に至らしめる殺人方法。事故に見せかけて殺すことができ、殺人を疑われにくい、と考えられる。


レイピアが偽物であることは真実でないかもしれない嘘である可能性がある。


「どうでしょうかね、その女装野郎は歪んだ同性愛者でしてね、彼女の格好をして、さらに彼女の顔に整形するというとてつもない事をしている、そして、彼女を殺して、成り代わろうとしている」


「そうか」


「本物は聡明な方でしてね、浅はかな思い込みと思慮の浅い殺意の発現はしない、その偽者にあるのは彼を惑わす全てを殺し尽くす事、本来、貴方もですよ、鬼堂辻さん」


「えっそうなの!殺さなきゃ!」

レイピアを構えながら睨み付けてくる女装野郎。


「………」


俺の事を知られているな。


「魂を盗む死神怪盗としては魂の価値を知るためにその人の全てを知る必要がある、それゆえもう一つの顔は情報屋なんですよ、貴方は素晴らしい魂になりそうだ、だが、そこの女装野郎は違う、高位市民の魂は汚く塵より悪臭を放つ」


「そのディスり芸、どっかで見たぞ」


主にフリーゲームの暗黒街にあった気がする、ホームレスになるまで刑事の薄給でできるゲームはあのフリーゲームの暗黒街にあったモノばかりだ。


「『殺戮世界ハデス』」


「?」


死神怪盗が冥王か聖書の冥府か分からない言葉を出した。


「我々は六人兄弟なんですよね、DRAG-ON DRAGOON3ってゲームありますよね?その『殺戮世界ハデス』は自分が死んだ時、五人の弟を生んだ、それだけの事しかしていないんですよ、死因も死体も不明、しかし、私という弟や他にも弟達が生まれた、私は六人兄弟の三男ツヴァイ、またの名を死神怪盗、そして彼を殺したとされるのが彼と縁がある誰か、五人の弟達はそれを殺したい、自分達を生んでしまった元凶だからね、ですから、そこの女装野郎を殺して、魂はそこら辺の悪霊に食べさせるのですよ」

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