僕は『最強だった前世の力』をママのお腹に置き忘れてきたある意味最強な男~このひよこ何?え?精霊?皆見えないの?とりまパン屑でもやっとけば懐くかな?~
栗乃実
プロローグ『多分世界最強だった前世の話』
とある世界。とある夜。
ブリタニアの
――星の雨が、そこにはあった。
絶えず降り注ぐ
そういえば最近、
我ながら
「こんなにたくさんの流れ星なんて、生涯に一度見るか見ないかだろうなぁ」
なるほどもしや。頑張れと、星さんが僕を応援してくれているのかもしれない。
ふっと笑う。そんな
まん丸に満ちた白銀の月が、
「ほぇええ……」
またまた呆けたような薄い反応で吐息をつく僕。
砕け散った
……月光? たった今、月さん、砕けなかったっけ?
違和感を感じた次の瞬間、砕け拡大した
この時ばかりは僕も目を見開く。
足元から
だがそれはほんの
その時になって、ああと僕は気づく。これが違和感の正体。
――月が爆ぜたのではない。
――空に
無から始まった剣と魔法の
人々を襲う魔物とそれを狩る冒険者。何代にも渡り
だが、現にその
亀裂が生んだ闇から生じた異形の
「ねえ。マーリン、マーリン。僕の愛しのマーリン?」
「なによ」
窓際に立つ僕が
今となっては聞き慣れた、むしろ耳に心地よい、愛すべき『妻』の舌打ちだ。
「これってもしかしなくてもさ、世界崩壊のお知らせ的な?」
「そうかもしれないわね」
返ってきた声音には
それもそうか。僕は視線を下げてこんな状況でも元気いっぱいな
今夜は
何を隠そう、僕は初体験にびびっていた。
こんな馬鹿な真似をしでかすくらいには冷静さを失っていた。世界が終わりかけてるのに、さっきから反応が薄いのもそのためだ。
世界最強の名を欲しいままにした男が聞いて呆れる。でも早すぎて嫌われたらどうしようとか考え始めたら止まらなくて、背中に刺さる視線が痛くて痛くて身動きできなくて、どんな
まぁ待て。
ということで世界崩壊のお知らせ的なイベントを無視して、甘くかぐわしい匂いのするベットに戻り、彼女を一度
そっと彼女の股を開いた。綺麗だ。神秘だ。やばい、もう出そう。
落ち着け
「いくよ……?」
「……うん」
顔を真っ赤にして照れてる。普段はツンツンしてるのに。ああ可愛い。
いつもならからかってやるところだが、多分今の僕も同じくらい赤い。
よし、よし、よし。いこう。いくぞ僕、負けるな僕、待ってもういくの僕? いやひよるな僕、逝くしかないだろ僕! おりゃぁあああああああああ――――
僕の聖剣が彼女の
――ドカァアアアアアアアアアアアアンッッ!!
耳を
心の隅っこで膝を抱える冷静な僕は悟る。異形の
獣や魔物とも違う異質な
「…………」
「…………」
僕と彼女はそちらに視線をやることなく、互いを見つめ合っていた。
腹部に
まだ入れてないよね果てるの早すぎない?
無言のままティッシュで聖水を拭き拭きする僕は、
ごめんなさい本当にごめんなさい。
「――――キュオオオオオアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
背後の怪物が無視されたことに怒ったのか、月夜を震わす
彼女の腹部を綺麗にし終えた僕は、不満げな彼女へ向けて精一杯の笑顔を作ると、今度は唇に
前に手を
もう使うことはないと、そう思っていた聖剣(ガチなやつ)を上段に構えた。
僕はかなり、怒っていた。
この野郎、夢のログハウスを壊しただけに飽き足らず、土足で踏み入り初夜を
「僕の名はアーサー……【愚かなる】アーサー・ペンドラゴンだ……!」
僕は流れ出る
「言っとくけど――――お前のせいなんだからなァアアアアアアアアッッ!!」
僕は思った。
全部この空気を読まないボス格みたいな怪物のせいにしようって。
なんか世界終わりかけてるし、さっきの件はなかったことにしようって。
さてさてさーて、ちょっくら世界でも救ってきますかね。
別に恥ずかしさの余り
*** ***
こうしてブリタニア最強(本当)の男、アーサー・ペンドラゴンが立ち上がった。隣に並ぶのは愛する妻にして、現【魔導王】マーリン・ペンドラゴン。
世界は二人の
アーサーはかつて、大陸の覇者ブリタニアの王たる称号【騎士王】
正直不満はあったが、隣にマーリンがいてくれるだけでどうでもよくなった。「全てアーサーがやりました」などと宣って未だ【魔導王】の座に居座り続ける彼女はちょっとどうかと思うけれど。
アーサーは滅び行くブリタニアの救世主となった。
二人は手を取り合い、
大地の名を冠する強い怪物を
「……マーリン。マーリン。僕の愛しの、マーリン……?」
「……その気持ちの悪い呼び方、やめなさい……」
「は、はは……マーリンは、最後まで、マーリンだなぁ……」
「何よ、情けない声出して。……もう、逝くの?」
「……なんかその言い方、そこはかとなく悪意を感じるんだけど」
ついにブリタニアは守られた。
誰もが二人を真の英雄だと称賛した。
「気のせいよ。……それよりも」
「わかってる。
「…………ええ」
だが、代償として深い傷を負った二人は、血濡れた戦地に
「マーリン。僕さ、誓うよ。
「…………そう」
「もっと強い男になって、君を守り抜く」
「…………そう」
「もっともっと格好いい男になって、君を惚れ直させる」
「…………そう」
「もっともっともっとマーリンだけの尻を追いかけ回して、君を幸せにする」
「…………それはちょっとキモいわ」
「そうしたらまた、結婚しよう。――愛してるよ、マーリン」
「………………………………私もよ、あーさー」
最後は二人寄り添って、
「「《
アーサーとマーリンが
内緒だよ。
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