soixante-quinze
そんなこんなで始まった羽根突き大会(?)。まずはグーチームとチョキチームの対戦なので、私たちパーチームはジャッジしつつ待機中。まずはまこっちゃんvsぐっちー、最初に真打ち出していいの? って気もするけど、多分まず勝って勢いに乗せる作戦かな。まぁ勝負はものの十分ほどで決着、当然というか何というかまこっちゃんの勝利に終わりました。
お次は安藤vs有砂。バドミントンは詳しくないけど、見た感じ意外と本格的にやってた感じ。何せ羽子板振る音が違うわ、まこっちゃんと対決してもそれなりの勝負が出来るんじゃないかと思うくらい。こちらもあっさり安藤の勝利。既にチョキチームの勝利は決まってるけど一応てつこvs部長も対戦、こちらは案外時間が掛かって何度かのデュースの末てつこの勝利。部長も何だかんだで野球経験者なので、グーチームの中では一番動きが良かったと思う。
んでチョキチームと入れ替わった私たちパーチームとグーチームとの対戦。こちらは先鋒こうた、高校まで卓球部、この手の遊びは割と強い。あちらは……有砂、多分十分ほどで終わる。
「これは貰った」
「むぅっ」
なんてやり取りもありつつ、試合は予想通り十分も掛からず終了。二十五点一セットマッチ、スマッシュ無しという内輪ルールながら、有砂一点も取れずという哀しい結末でお役目終了。
さて次鋒は私、お相手は部長。う~んさっきの試合見た限りあんま勝てる気しないなぁ。まぁ次はげんとく君vsぐっちーだから試合そのものには勝てるでしょ、私も運動神経はそれほどなので二人とも大して期待はしてないと思う。
「気負わなくていいぞなつ、次は確実に取れるからな」
とこうた、やっぱりかよ。
「何だよそれ? ヨシッ! ここは俺が行く!」
こうたの言葉に触発されてグーチーム選手交代、部長からぐっちーに代わったことで逆にこっちに勝機が向いてきたってもんよ。
「かえって気が楽になったわ」
「絶ッ対打ち負かしてやるからな!」
ムダに張り切るぐっちー相手に、私のサーブで試合開始。こいつラリーが下手くそだから、ちょっと揺さぶりかけてやればあっさり調子を狂わせてくれる。
「汚ねぇぞなつ! あっちこっち走らせやがって!」
んでもってすぐメンタル乱れる、マジチョロい。
「ルール違反はしてないよ」
「こいつやり方ずりぃんだって!」
何を言うか馬鹿者、身体能力は総じて男の方が上だろうが。結局ぐっちーの物言いは軽く受け流されて試合再開、今のところ十三対七で私がリードしている。完全に調子が狂ってるぐっちーは、打ち返してもあさっての方向に羽根を飛ばしてポイントが入らず、たかがゲーム、されどゲームながら目に見えていきり立ってきてる。
またやるかもな……そもそもスマッシュ無しのルールを作ったのは、この男が短気を起こして力任せに打ち返す悪い癖のせいだ。それで有砂が目に怪我をしたことがあって、中学に上がったくらいの時期にてつこが決めたルールである。
「だーもうっ!」
私が二十点目を獲った直後、ぐっちーのメンタルが切れたらしく、腕に妙な力を込めて振り切ったのが見えた。打ち返された羽根は私の足元で大きく跳ね、後方へ飛んでいったのを安藤が走って取りに行っていた。
「はい、ぐっちー反則負けね」
「またかよぐっちー」
結果的に私たちパーチームが二連勝し、有砂はまたしても反則負けを食らったぐっちーに文句垂れてる。
「そもそも有砂が戦力になってないからだろ」
「私じゃフィジカル的に不利なのは見て分かるだろうが」
「まぁまぁたかがゲームで喧嘩しない。メンタルやられるような罰ゲームとかでもあるのか?」
あっ、部長に言うの忘れてない? 仲裁してもらっちゃってるところアレなんだけど、次の飲み会で飯代出すことになってんのよ。
「「飲み会の奢りを……」」
「何だそんなことか。で、いつ?」
「バレンタインの時期にすることが多いよぉ」
「じゃ決まったら声掛けてよ」
人を集めて盛り上がるのが好きな部長は、一応罰ゲームだというのに嬉しそうになさってる。これが既婚者こうただと『冗談じゃねぇ!』ってなるところなんだけど、部長って昔っから気前が良いので親しい相手だとホイホイ奢っちゃうのよ。
その後げんとく君vs部長の試合が始まり、それなりに一進一退の展開ながらも部長の勝利。今のところグーチーム二敗、チョキチームとパーチームが一勝ずつなので、最後の試合で勝負が決まる。グーチームとチョキチームとが入れ替わり、こちらは先鋒のみ順番を変えずこうた。あちらは……まこっちゃんだ、そう言えばこの対決何年か見てないなぁ。
「久し振りじゃねぇか? 対決すんの」
「だよね、ここ三年くらいずっと味方だったから」
「この対決は見ものそうだね」
部長が主審を務めて試合開始。卓球経験者vsテニス経験者の対決は、ただの羽根突きながらかなり白熱した試合になった。競技は違えど県大会優勝レベル、二人とも子供自治会の指導なんかは今でもたまにやってる。
「普段練習とかするの?」
「卓球の練習はな、そっちは?」
「この前新しく出来たスポーツクラブに初心者向けの講師頼まれてるんだ、けど先月はほとんど練習できなかったよ」
へぇ、そうなんだ……って結構ハードに動いてんのに何平然と会話してんのよ? まぁお遊びだし、罰ゲームは回避されてるからね。この二人の対戦は毎度ながら長くなる。見てても楽しいからいいんだけど、除夜の鐘の後だから早くも日が傾き始めてる。
「今年は僕が貰うね」
その一言で十回ほど続いたデュースも終焉を迎え、試合はまこっちゃんの勝利で終わった。二人とも白熱した試合をして、こうたは汗かいちゃってる。荷物は……げんとく君家だわ。
「俺らあっち行ってるわ」
共に良い汗流した二人は、仲良く連れ立ってお寺へと移動していった。今日一日は応接間が開放されてるし、ビールは出ないにしろお屠蘇飲んでゴロゴロしてそうだな。白熱した第一試合を終えて次鋒はげんとく君。対戦相手は安藤か、チョキチームは順番を変えてこなかったんだね。
「二連敗は避けたい」
彼勝負事に煩くない性分だけど、負けが込むのはやっぱり嫌みたい。
「うん、まぁ頑張って」
「ん」
第一試合の空気を引きずった状態で第二試合が始まった。その言葉通りげんとく君案外本気出してらっしゃるわ、けど安藤も男子相手な割に結構良い試合してるのよ。しかもスカートにパンプス姿とは思えぬ身のこなし、小学校時代しか知らないけど、運動神経が良かった印象は正直無かった。
んで結果はげんとく君の勝利に終わったけど、試合そのものは拮抗してたから快勝とはいかなかった。この時点で一勝一敗、最後の最後で私vsてつこ、う~ん勝つのは多分無理。
「別に勝とうとしなくていいぞ、罰ゲームは免れてるからな」
「ってか勝てる気しない」
揺さぶりかけてもぐっちーのようにはいかないわ、こいつメンタルそんなに弱くないもの。
「取り敢えず始めよっか、暗くなるの早いからさ」
部長のひと声で私はてつこと対峙、私のサーブで最後のゲームが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます