23プトラ 異変
俺らは大学までとにかく走った。傍には、ライカを抱えている。ライカは、こんな騒動にも関わらず
とにかく、よく分からないが、オネェなんかに捕まってたまるか。俺にそんな趣味は無い。
「ナツ……! まだ走れるか!?」
「当たり前よ! 私は、『ジャンプ』を読んで育ったの! こんなの平気よ!」
頼もしい存在だ。
もし、ナツが居なければ俺は、さっき間違いなく詰んでいただろう。壁を破る発想は、俺には無かった。やはり、自称・
そして、俺は自分の日頃の運動不足のことなど忘れて、かなりのスピードで走った。ナツもそのスピードについて来る。途中、振り返って何度も後ろを確認したが、オネェの姿は見えなかった。
なんとか大学へ到着。
「はぁ……はぁ……。逃げ切ったみたいだな。」
「ふぅ……。そうね。一応、警察に通報した方がいいよね? 不審者でしょ、アイツら。」
「あ、ああ。」
確かにそうだ。また、いつ襲われるか分からない。俺は、ポケットに入れていたスマホを手にし、迷わず110番へと電話した。
電話は、1コール目で繋がった。
「も、もしもし……?」
あれ、何か反応がおかしいぞ。中々、返答が無い。
そう思った時、受話器から恐ろしいフレーズが聞こえて来た。
『プトラァァァ!!!!』
「いっ!?」
俺は、慌てて電話を切った。何だ、今のは!?
背筋がゾッとした。低い、死んだような声だった。危うくスマホを落としてしまうところだった。
「ダンゴ……!? どうしたの!?」
「いや、今、電話の向こうで『プトラ』って確かに……。」
「そんな……!? 一体、本当にどうなっているの!?」
俺らは、どんどん周りが『ハムナプトラ』に侵されている事に、完全に恐怖を感じ始めていた。テレビだけじゃない。大学の講義だって『プトラ』だった。
そして遂には今の電話。
受話器の向こうにいたのは、何者だったのだろうか?
俺らが騒いでいると、前方から学生らしき人達がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。何か、みんな歩き方がゾンビみたいだった。
足を引きずるように歩く。フラフラと上半身を揺らし、決して動きは早くないが、確実にこちらへ向かって来ている。
「ナツ! これ、ヤバくないか!?」
確かに聞こえる。
こちらに向かって来ている学生数名。
小さく、低い声で唸っている。
「プトラァァァ。」
「プトラァァァ。」
「プトラァァァ。」
よく見ると、その内一人は、『生物』で、俺らに筋肉について教えてくれる偉大な教授であった。
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