ハムナプトラ奮闘記
ぷいゔぃとん
始まりの日曜日
プロロプトラ 日曜洋画劇場
俺たち人間は、変化を好む生き物だ。
それは、進化をする上においては欠かせない本能。常に新しい物を追い続ける存在。人間とは、退屈を嫌う生き物である、と言うわけだ。
しかし、そんな人間の性質に対して、真っ向から挑んで来る物が、世の中には少なからず存在している。
その一つが『ハムナプトラ』だ。
あの映画は本当に舐めている。一体、これまで『日曜洋画劇場』で何回放映されたって言うんだ。もう少し、放映の頻度を考えて欲しいものだ。
俺は、『日曜洋画劇場』を観る時間が生き甲斐である。明日から始まる学校生活に対する憂鬱感を、見事に吹き飛ばしてくれるからだ。
それなのに『ハムナプトラ』と来たら、定期的に放映され過ぎたせいで、完全に内容を把握してしまった。つまり、俺も人間である以上、新しい物を追い求める本能的な部分とは懸け離れてしまっている為、『ハムナプトラ』に対しては苛立ちを覚えてしまうのだ。
『ハリーポッター』や『ジュラシックパーク』、『ターミネーター』なら、まだ少しばかり許せる気はするのだが。
そして今夜、俺の苛立ちはピークへと達していた。
今週の『日曜洋画劇場』は、見事に『ハムナプトラ』。
お前、マジふざけんなよ。もういい加減飽きたんだよ。
流石の洋画好きの俺でさえ、『日曜洋画劇場』を今週ばかりは諦めて、同じ時間に他局で放送されている番組へ浮気することにした。
これは緊急措置だ。本当は、『日曜洋画劇場』を観たいのだ。もちろん今週が、『ハムナプトラ』じゃなければの話だが。
俺は、しばらく無心のまま他の番組を観続けていて、なんと気が付いたら、あっと言う間に『日曜洋画劇場』が終わる時間帯になっていた。
そろそろ『ハムナプトラ』が終わり、来週の予告がある頃だ。
来週は何を放映するんだろうか?
段々と期待に胸が膨らんで来る。俺はリモコンを手に取り、勢いよくチャンネルを変えた。
よし、やはり『ハムナプトラ』がちょうど終わった所じゃないか。『日曜洋画劇場』よ、来週は何を放映してくれるんだ?
『さあ、来週の日曜洋画劇場はぁ……! なんと好評につき、明日は月曜日だけど日曜洋画劇場をお送りしちゃうぞぉ! 二夜連続の日曜洋画劇場だぁ! さらに、二夜連続を記念して、なんとぉ……明日もハムナプトラだぁ! ハムナプトラ2じゃないぞぉ、今日と同じハムナプトラだぁ!』
バカヤロォォォオオオ!!!!
おい、誰得だよ!?
しかも明日は月曜日だし、せめて『ハムナプトラ2』だろ!?
日曜洋画劇場に携わっているスタッフに、『ハムナプトラ』オタクでもいるのか!?
それとも、単なる『ハムナプトラ』テロなのか!?
大体、『ハムナプトラ』じゃないにしろ、月曜に『日曜洋画劇場』を放送すること自体が一種の哲学的問題だ。
俺の頭の中は大混乱だった。
そして、まさか……。
これが、日本中を巻き込もうとする恐ろしい事件の序章になっていた事を、俺はまだ知る由もなかった。
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