我輩ぶんぶんふりまに参加する/ルネD60SS

天派(天野いわと)

第1話我輩ぶんぶんふりまに参加する/ルネD60SS

 今年も我が輩、返本の山の処理のため大阪であったぶんぶんふりまに参加した。今回、横のぶす・・・ではなかった横のブースには若い娘二人が座っていた。二人ともコスプレかよ! といった感じで下半身ほぼ見え見え、とうの昔にシニアとなった我が輩にはちと目の毒である。後で名前を聞いたのだがカタリちゃんがカドカワから本を出したらしく、その宣伝を兼ねてぶんぶんふりまに営業に来てたようである。その応援でリンちゃんが来ていたようで、リンちゃんの方はリアル本派ではなく、ずっとスマホで本を読んでいた。

 若い二人だから当然、同年齢の若い女性とか、ちょっと危ないオタクが頻繁にブースの前で立ち止まってテーブルに並べられた本をチラミする。オタクの方は本を読む振りをして二人をチラミ。カタリちゃんがにこりとして「どうですか」というと、オタクは即お買い上げ。どんどん売れて行く。

 こっちのほうはちっとも売れやせん。

 今回、びっくりしたのは反対側のブースに三太郎というワープロソフトの会社の人達が本を売っていたことだ。

「私たち、この三太郎で本を作りました。どれくらいのことが出来るかこの本でお確かめください」

 こっちは本気の営業モードである。

我が輩、昔NECのパソコンの時、三太郎使っていたし、MACでも三太郎使っていたので懐かしくて主任クラスの人に声をかけた。

「三太郎、懐かしいですネエ。昔使ってたんですよ」

「声を掛けて下さってありがとうございます。しかし、弊社の三太郎、若い人たちには全然知られていないようで、びっくりしています。声をかけてくれる人がいたのでホッとしています」と変に喜ばれた。

 我が輩、午後になってから投売りを始めた。百冊ほど宅急便で会場に送っていたのだが、わざわざ宅急便で自分の家に送り返すのは面倒である。家には馬鹿みたいに返本が残っているから、前を素通りする人、隣のカタリちゃんとリンちゃん目当てに立ち止まった人にも押し付けるが、重いので要りませんである。

 しかし若い女の子ってのは成長が早い。

午前中はまだまだ少女っぽかったのに午後になると、少し色気が出てきたというかなんか大人びてきている。ほんの少しの見知らぬ客との接客作業でも成長していくのだろうか。それともオタクの視線に煽られて色気が出てきたのであろうか・・・

犬とか猫の年齢は人間の五倍とかいうけれど、わずか半日で彼女たち二人は五歳くらい成長したようである。

 午後、四時になって若手落語家の真打みたいなぶんぶんふりまのリーダーがそろそろ宅急便で本を送り返す人は準備してくださいとアナウンスし始めた。

 東京から来た彼女たちは後片付けを始めた。

 五時になってぶんぶんふりまが終了、みんなでテーブルなんぞを片付けてさよならである。その頃になると彼女たちはさらに成長してというか、午前中、あれだけ張りのあった皮膚はたるみ、まるで三十過ぎのオバサンみたいに老け始めていた。

髪の毛にも白髪が混じり始めている。

彼女たちはまるでそのことには気がつかないで会場を後にした。

 我が輩の横に座る若い娘たちは毎回同じようになって去っていく。

 なぜなら、我が輩、彼女たちの若さを吸収しているからだ。

ちなみに我が輩、枕草子を書いた清少納言とか紫式部も現役で知っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我輩ぶんぶんふりまに参加する/ルネD60SS 天派(天野いわと) @tenpa64

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ