第7話 サラマンとラスエルの日常 その6別編
それは会社の帰りであった。
「おとうさん~散歩したい~」
そうラスエルがせがむので、車を脇に止め、田園を歩いて回った。
「田んぼ綺麗だね~」
感心していたラスエルはぴょこぴょこ跳ねていたのだが
「とうっ!」
苗が植えられ、水が張った田んぼにダイブした。
「ええっ!?」
あまりのことに理解が追いつかない。
そのままラスエルは田んぼで泥だらけになりながらクロールしている。
「うひひ!うぇぷっ!うひひひひ!」
「ラスエル!どうしたんだ?ラスエル!」
田んぼで作業していたおじさんとおばさんが心配そうにこちらを見た。
「どうしたんねー?田んぼに落ちたんかねー?」
山本はスーツと靴を脱いで田んぼに入り、自身も泥だらけになりながらラスエルを抱きかかえた。
「おーおー大丈夫か?ラスエル?」
「うひひひ!ドロドロ~!」
あ、わざとなんだ。山本は参ってしまった。
ラスエルを田んぼから出した後、何度もおじさんとおばさんに謝った。
「ま~小さい子のすることじゃけん」
「おとうさんも大変やね~」
「怪我がなくてよかったねえ」
肝心のラスエルとは言うと、山本のズボンに泥を擦り付けていた。
「ラスエル、おじさんとおばさんにごめんなさいしようね?」
「はい!ごめんなさい!うひひ!」
全く反省してない!
泥だらけで車に乗り込む2人。これは後が大変だ。
「ラスエルさん、なんであんなことするのかな?」
「だって!一度はやってみたいじゃん!」
山本は昔、自分も田んぼで蛙を捕まえて遊んでいたことを思い出していた。
さすがに田んぼにダイブはしなかったが・・・
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「おとうさん!ケーキを食べたいです!」
「ケーキは誕生日とか記念日とかそういう特別な日にしか食べないなぁ」
「今すぐ食べたいです!至高の贅沢品ケーキを食べてみたいです!」
ラスエルがおねだりするので、ショートケーキをおやつに2つ買ってきた。
「おおお!これがケーキ!聞いたことも見たこともあるけど、味わったことは一度もない!」
「それでは召し上がれ」
ラスエルがケーキをフォークですくい、口に運ぶ。
どんな感想が出るのかと思いきや
「味が・・・・する!!!」
う~む。まだ味覚と知識が結びついていないようだ。
「ラスエル、これは甘いという味だよ」
「これが甘さ!幸せの味!」
「甘さにも色々あるんだけどね。お父さんが好きなのはメイプルシロップの甘さかな。どれ、土曜日の朝にはパンケーキを焼いてメイプルシロップをたっぷり掛けてやろう。はちみつもいいぞ」
「おひょぉお!ここは天国か極楽浄土か!」
その後、色んな種類の砂糖やシロップを味あわせて、ラスエルの舌を開発していくことになる。また、毎週土曜日の朝はパンケーキの日となり、ラスエルの楽しみの日となるのであった。
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