サラマンとラプラスの悪魔 おとうさん大好き!
サラマン
第1話 使徒ラスエルは飛行機に乗り込んできた
山本は三つの悟りを開いた求道者であった。チベットに渡り、悟りの技術を合成して新しい悟りを作った。”二者同調” この技術のおかげで、十分な脳容量力と精神圧力耐性を持った者になら、悟りの技術を継承できるようになったのである。
それによって、仏教の悟りは学問として体系づけられていく。
この功績を讃えて、山本はチベットから”サラマン”という高僧の称号を承った。
山本はその後、アメリカで一仕事終え、日本へ帰る飛行機に乗っていた。
山本が飛行機のファーストクラスで寛いでいた時だ。隣の席に幼い女の子が乗ってきた。金髪碧眼の可愛らしい子だった。4歳くらいであろうか。その子はビシッとスーツを決めていてネクタイを締めていた。不自然極まりない。
「サラマン!こんにちは!」
むう?チベットの関係者だろうか。サラマンの称号はこの前貰ったばかり。広まっているとは考えにくい。
「今日、受肉したんだよ!憧れだったんだ!人間の生活!」
なんだろう、この感覚。この子は何か特別な存在なのだろうか。
「他の宇宙でも初めてだったんだぁ!悟りの合成術を生み出す人って!」
うひひ!女の子は笑ってこちらを見た。えくぼが可愛い。
私のことに詳しそうだな。とりあえず声を掛けてみよう。
「初めまして。お嬢さんはどちら様かな?」
「私、ラプラスの悪魔こと使徒ラスエル!人間界に来ました!」
パンと手を叩いた後、
「見込みがあるから、シリウス様が行って来いって!やったね!」
神様に目を付けられたのかしら。私、仏教徒なんだけど。
「手、届きますか?」
ラスエルは機内食を食べようと四苦八苦していた。小さい子にはテーブルの高さが合わないのだ。
「む~~ん!」
ラスエルは唸っていた。
そこへキャリーアテンダントが通りがかり、
「あら?子供用の機内食を用意してきますね。なぜ気づかなかったのかしら?ごめんなさいね」
違う。問題はそこじゃない。
「長く人間界に留まれるように幼子で受肉したのが仇になったか!くっ!」
子供用の機内食が運ばれてくる。お子様ランチというやつだ。
「お手伝いしましょうか?」
山本はそう言って、機内食の包を取り、スプーンでオムライスを切って掬った。
「食べさせてもらうのかー。どうしよう・・・」
悩むラスエルにキャリーアテンダントが後ろから一言。
「お父さんと旅行?いいわね~」
「おとうさん!」
ラスエルは飛び上がった!
「ラスエル、元は精霊で、妹たちはたくさんいるけど、親というものを持ったことがない!」
「ほう?ラスエル様は親が欲しいのですか?」
「うんとこさーどっこいさーめちゃんこ欲しいなり!」
ほうほう。しばらくラスエルを目を見つめた後、山本は決心した。
「いいでしょう。私がお父さんになってあげましょう」
「本当!?サラマン!」
ラスエルは喜びで飛び上がり、機内食の載ったテーブルを蹴り上げた。
あー
山本にはオレンジジュースがコップから飛び出して宙高く舞うのが見えた。
これはもう駄目だな。
しかし、ラスエルが着地した後、オレンジジュースはコップから溢れることなく元の位置に収まっていた。
「これから、おとうさんって呼ぶね!あと、敬語は要らないからね!」
きゃっきゃっ
「じゃあ、おとうさん!ご飯食べさせて欲しいなり!」
ラスエルの口にオムライスを運ぶ。
「なんか不思議な感じがする!これが味!味なのか!」
とても感動していた。
「この世の中は色んな味で溢れてるんだよ。飲み物一つとっても、もう数え切れないくらいにね」
「すんごうい!」
生まれて初めてご飯を食べるとそんな感想を持つんだなー
「おとうさん!全部!全部を制覇してみたい!」
「そうかーじゃあ、お父さんが色んな料理を作ってやろうな」
その日、飛行機の中で山本とラスエルは親子になった。
これからどんな体験が待っているのだろう。
山本の人生は予測不可能なものになっていく。
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