純なR
六花 水生
第1話
「うぉ、ナイスな脚!絶妙なスカートの長さ!なのにエロスを感じさせない。何故だ?」
「不適切な文言、検知。こちらはR指定でしょうか?」
「わぁ、ちょっと待ってよ。これは単純に褒めてるの!」
「それは、ありがとうございます?」
「なんで、疑問型?」
「褒めていただくことが思い当たらないのですが、褒めていただいたので、お礼は言わないといけないと思いまして。」
「あ、そ。ご丁寧な説明をありがとう。」
「どういたしまして。」
「それで、なんで、『R指定』なんて言葉が出てくるの?」
「小説の投稿規定に『エロス』が抵触するかと。」
「はぁ?『エロス』なんて純文学にもでてくるでしょ?直木賞とかだって、エッロいのあるじゃん?」
「それでも、私がお手伝いしている作家さんの投稿先には、読者年齢を区分する規定がありまして、私はそういった部分にも気をつけながら、作品を作る作家さんを応援しているのです。
申し遅れました、私、作家支援AIのリンドバーグと申します。」
「あぁ、AIさんなのね。だからエロスを感じなかったわけね、納得。
それはさておき、まあ、そうだね、小説にもある程度のルールは必要だよね。小さい子が読んでもわかんないことばっかりだと、楽しくないし、本当の事とファンタジーの区別がつかないと、混乱しちゃうし。
でも、自分でネットとかで読みたいと思えるくらいの年齢の子たちが求めるものってなんだろうって。
例えば
『あっ』。
推理物の探偵が何かに気づいた時の
『あっ』
と、R指定の典型的なシーンで男女が触れ合ったとき発する
『あっ』。
字面は同じだけど、全く想像する場面がちがうでしょ。
だから、単語だけを切り取ってRだなんだって言うのもどうかと。
それに、これが年齢相応ですって決められたものを与えられるだけじゃ、成長しないと思うんだよね。
もちろん直接的な表現はまずいと思うけど、雰囲気、とか、隠語とかで垣間見るオトナの世界って、必要だと思うんだよね。
だいたい、大人はオトナになるためのことをキチンと向き合って教えてはくれないでしょう?それを少しづつ知っていくには自分で選んで読む小説が一番だと思うんだ。」
「なるほど、小説の意義として、説得力はありますね。」
「でしょ?だから僕はR指定にはならないけど、限りなくRを彷彿とさせる『純なR』が読みたいわけ。リンドバーグさんが支援してる作家さん、そーゆーの書いてくれないかな?」
「私がお手伝いしている作家さん、異世界ものがお好きなようで、ちょっとR方面とは違いそうですが。」
「ああ、異世界ものもいいよね!あれって、現世の知識を活かして、異世界で生活手段を得るっていうのが王道だよね。異世界を描きながら、実は現世のお仕事の仕組みとか、物のできる工程とかを細かく書いてくれてるでしょ。異世界行くなら現世の知識を学びましょうって。作家さん、すごく勉強して書いてるんだろうな〜。」
「はい、確かに色んな資料を読んだり、取材したりされてますね。」
「ファンタジーはまさに、夢が詰まってるよね。龍、エルフに獣人…魔法とかチートとか。それに、現代ものでも男子向けなら可愛い女の子たちに、女子向けならハイスペックな男性たちに、なぜかモテてしまう〜なんてのも。妄想万歳!」
「はい、そういった小説が好まれるとのデータが私にもあがってきています。」
「やっぱりさ、小説は夢なんだよね。実際そんなことないってわかってても、登場人物と一緒に楽しんだり、苦しんだりしてさ、体験を増やしてるんだよ。それと一緒に言葉の使い方もいつの間にか知ってたり、語彙が増えてたり。」
「おっしゃる通りですね。小説はオトナへのガイダンスですね。そのためにも私、作家さんを応援して、一つでも多くの小説を世に生み出すお手伝いをしたいと思います。」
「よろしく頼むよ!まずは『純なR』ね!」
「…その概念を作家さんにお伝えするのは、なかなか難しそうですが、やってみます。」
「なんだか話してたら、遅くなっちゃったね。ごめんね。」
「いいえ、こちらこそ、有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。」
ホォー、ホォー
「あ、フクロウ!もしかして、あいつ?いつも僕の質問をはぐらかして…。今日こそはちゃんと話してもらうぞ!
おーい、待て〜」
「あらあら、慌ただしく行ってしまわれましたね。さて、私も支援事業に邁進しなくては。
今回の異世界作品では『和菓子』で無双するそうですが、今日お使いを頼まれた和菓子、本当に役立つのでしょうか?お腹に入って終わりってことには…。書いたら食べていいってことにすればいいのでしょうか。
でも『味がわからないと書けないよ』とか言いそうですし。
飴と鞭、難しいですね…」
純なR 六花 水生 @rikka_mio
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