13 二人の手

 二人の手


 手を伸ばそう。……君に触れるために。 

 手を伸ばそう。君と(あなたと)手をつなぐために。


 そのあざりの話した内容をまとめると、つまりはこういう話だった。


「僕はね幽霊なんだ。生前の記憶も曖昧だけど、それは確かなことなんだ。そんな幽霊の僕の姿が見えるって、どういうことかわかる?」

 黒猫は首をかしげる。

「それはね、樹が死に近い場所にいるってこと。僕が見える、僕と喋れるっていうのは、そういうことなんだ」

 あざりは悲しそうな顔で笑う。

「ね? 僕と樹は仲良くならないほうがいいでしょ? ……でもね」

 あざりは空を見る。


「……好きなんだ。あいつ(樹)のことが」

 あざりはその目に涙を浮かべている。

 その涙は、本当に透き通るような、(まるで宝石のような)透明で清らかな涙だった。


「ありがとう。でも、そういう大切なことは本人にちゃんと言ってほしいな」

 そんな声が聞こえてきて、あざりはすごくびっくりした。(思わず「え!?」という声が漏れてしまった)


 あざりが素早く後ろを振り抜くと、……そこには楠木樹がいた。樹はにっこりと嬉しそうな顔で、びっくりして涙を吹いている暇もなかった、あざりのことを、じっと見ていた。

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