10 あざりと前世 いつき。僕のこと、覚えてる?

 あざりと前世

 

 いつき。僕のこと、覚えてる?


「よう。お待たせ」

 今日の目的地である『臨海水族館』のある近隣の県にある駅に着くと、そこには一人遅刻して現地集合になった初瀬大地の姿があった。

 大地は真っ白なシャツに膝までのデニムのハーフパンツをはいて、足元はスニーカー、背中に肩掛けのバックを背負っていた。


「お待たせ、じゃない!」

 宣言通りに奈緒が大地の肩に結構本気のパンチを入れた。(それを避けることなく、大地はわざと受けていた)

「悪い。ちょっと昨日、ゲームやりすぎちゃってさ。ほら、あの話題のソーシャルゲーム。名前、なんていったっけ?」

 大地はそんなことを奈緒に言う。

「おはよう。初瀬くん」

「おう。おはよう。二宮」

 大地は琴音とそんな挨拶を交わしたあとで、一人黙ったままでいる樹のほうにその顔を向けた。


「よう。初めまして。初瀬大地です。楠木樹くん」

 にっこりと笑って、大地が樹の前まで移動してから、そう言って樹にその手を差し出した。

「初めまして。樹です」

 樹は大地と握手をしながら自己紹介をする。するととても爽やかな笑顔で「よろしく」と大地は樹にそう返事をした。


 それから四人は(主に大地と奈緒。樹と琴音にわかれて)臨海水族館まで移動をした。チケットを購入して中に入る。

 その途中の道で、「そういえば初瀬くんは僕のことどうして知っていたの? 二宮さんか八坂さんに聞いていたの?」と言った。


「ああ、それならいつも二宮が樹の話をするから……」

 と、そこまで言ったところで、「初瀬くん!」と琴音が珍しく大きな声を出して、大地の言葉を遮った。

「ああ、悪い。『作戦』はまだ実行前だったな」とにっこりと笑って琴音に言った。

 琴音の顔は真っ赤に染まっている。

 そんな琴音のことを見て、樹は、……? 作戦ってなんだろう? 八坂さんと初瀬くんをくっつけるっていうあの作戦のことじゃないよね(本人が知ってるわけじゃないし……)とそんなことを疑問に思った。

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