3 幽霊の女の子と出会う。
幽霊の女の子と出会う。
「幽霊の僕は怖くないのに、人間の友達は怖いんだね、君は」
ふふっと笑ってあざりはそう言った。
「……うん。ちょっとだけ苦手なんだ」
「苦手?」
「うん。生きている人が」と樹は言って空を見上げた。
六月ももう終わりだというのに、今日も梅雨の日の雨が空からは降っている。その雨を樹とあざりは二人一緒に神社の古い木の階段のところから見上げている。
ざー、という静かな雨の音が聞こえる。
「……そっか」
少しして、あざりはにっこりと笑って樹にそう言った。(でも、そのあざりの声はどこか少しだけ寂しそうだった)
楠木樹が恋をしている相手は、同じクラスの女の子で、名前を二宮琴音と言った。(すごく可愛い女の子だ)
でも、もちろん、当たり前のように恋に不器用な樹は男の子として、琴音に恋の告白をすることがまったくできないでいた。
そのチャンスがまったくなかったわけでもない。
なぜなら今、二人は教室の委員の中で、一緒に図書委員を引き受けているからだった。少なくとも一週間のうちに二、三日は(主に火、木、土)樹は琴音と二人だけの時間を過ごすことができた。
それだけでも、樹はすごく幸せだった。
「琴音ちゃんはすごく優しいんだ」嬉しそうな声で樹は言った。
「ふーん」
つまらなそうに足をぶらぶらとさせながらあざりが言う。
それからあざりはまた雨降りの空を見上げる。今日は水曜日で、図書委員はなく、樹はあざりに昨日あった琴音との会話ややり取りを話したくて仕方がなかった。
でも、琴音の話を聞くあざりは、あんまり楽しそうじゃないみたいだった。
それがなぜなのか、その理由がいまいち樹にはよく理解できなかった。
仕方ないので、樹はまたあざりと一緒に雨降りの空を見上げた。
樹は雨が好きだったので、そうしていても全然退屈ではなかった。
二人はしばらくの間、そうしていつものように雨降りの音にその耳を傾けていた。
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