このむねのおもいをあなたに・・・・・?

隅田 天美

このむねのおもいをあなたに・・・?

 子供の頃。

 私は小さな庭で種を植えた。

 大切に大切に育てた。

 種は土の中で芽吹き双葉になり成長を続け小さな花になった。

 とても、綺麗な花だった。

 一本、摘んで母親のもとにもっていった。

 花を後ろ手にもって母の元に行った。

「お母さん」

「あの花、何なの? 醜いし実もつけないし気持ち悪い」

 その言葉は私から花を落とした。

 何をしたかは覚えてない。

 ただただ、私は花を踏みつけた。

 花びらも、花弁も土に汚れていく。

 花の名前は『自我』だった。


 私は、庭の花を全部他の土で埋め、母や周りの大人の好きそうな花を植えることにした。

 それでも馬鹿にされた。

 虐められた。

 ただ、一つだけ残した花がある。

『物を書く』ということ。

 これだけは誰にも触れない秘密の場所で育てた。

 

「あなたはもう、頑張らなくていい」

 土まみれの手を誰かがさすってくれた。

 もう、自分が何をしているのか分からなかった。

 私は、その人のことを好きになった。

 だから、色々な花を出した。

 だが、誰かは首を振った。

「私は生きている花が欲しい。あなたが持っているのは精巧に作られた造花」

 再度、私は絶望した。

 私が育てていた花は造花であった。

 認めたくなかった。

 恨み、妬み、怒り、恐怖……

 私は再び庭に立った。

 何もないところにくわを入れる。


 整地をして、もう一度、種を植えた。

 全てが万全ではないけど、私にはいろいろな人からもらった種がある。

 それが物語という花になるかもしれない。

 それが再就職という花になるかもしれない。

 その花を持って、私を見ていてくれた人に会いに行きたい。

 汚い手にだけど、決してきれいな花ではないだろうけど、いい。

 

 そして、私が好きな、空の上の人たちに、もしも、会えることがあったらささやかな花束を渡したい。

「これが、私の人生です」

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このむねのおもいをあなたに・・・・・? 隅田 天美 @sumida-amami

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