カクヨムコンビの逆転!?

しな

カクヨムよ永遠なれ――

 ――ついカッとなってしまった。

 自宅から飛び出し、行く宛もなく夕暮れ時の河川敷をブラブラと徘徊していた。

 事の発端は数十分前、とある出来事が原因だった。


「なぁバーグ、明日って何の日か知ってる?」


「明日? ……4月6日……ただの平日ではないですか?」


 長い付き合いのバーグなら覚えていてくれていると思っていた。

 明日4月6日は、俺の誕生日なのだ。


「なぁバーグ、しっかり思い出してみろよ。去年のこと」


「去年……ですか? 何かしましたっけ? ……あっ!! そんな事より見て下さいカタリィ、世間一般は春休みということもあってカクヨムのアクセス数がどんどん増えてますよ!!」


 その時、俺の中の何かがブチッと音を立てて切れたような気がした。


「そんな事……? もういいよ……」


 そう呟きいつもの鞄を持って家を飛び出してしまった。


 ――河川敷には春休みを迎えたであろう少年達が元気に走り回っていた。

 鞄の中の原稿用紙を取り出し、地面にそっと置く。

 両手でL字を作り長方形になるように手を合わせ左目に添える。

 俺は今は家にいる謎のトリに詠む目、《詠目よめ》を授かった。

 この目は、両手でL字を作り長方形になるように手を合わせ左目に添えると、対象の人の心の中の物語を作品にできる能力があるのだ。

 ――あの楽しそうな少年には、どんな物語が眠っているのか気になった。

 少年を詠目で見てみると、どんどん原稿用紙が文字で埋まっていく。

 原稿用紙を拾い上げ内容を見てみると、そこには沢山の楽しい思い出やこれからの事が綴ってあった。

 本来なら俺は活字なんかより、漫画やアニメの方が断然好きなのだが、あの少年の心は、俺が今抱えている、怒りや哀しみなんかとは全くの逆で、喜び、楽しさに満ち溢れていた。

 少年の作品を読んでいるうちになんだか勇気が出てきた。


「よし……帰るか!」


 ――とは言ったものの、流石に気まずいので、書店をはしごし時間を潰す。

 家に帰ったのは11時を回った頃だった。

 家のドアを物音ひとつ立てないようそっと開ける。

 家の中はとても静かだった。

 リビングに向かうと、机の上には晩御飯と一通の置き手紙があった。

『カタリィへ、あっためて食べてね』

 皿を見ると、きつね色の焼き色の着いた美味そうなハンバーグがあった。

 電子レンジへ入れあっためる。

 一口食べると、泣きそうになった。


「……流石AI完璧じゃねぇか」


 必死に涙を堪えつつ完食する。

 自室に向かおうとすると、隣のバーグの部屋のドアが僅かに開いており、そこから微かに光とパソコンのタイピング音が漏れていた。


「……バーグ?」


 気付かれないようそっと扉を開けると、何やらバーグはパソコンで何かをしていた。

 どうせカクヨムのアクセス数の確認でもしているのだろうという結論に至り自室に行き眠った。


 目を覚ましたのは午前7時に頃だった。

 身支度をしバーグとの気まずい朝ご飯を食べ、鞄を背負い玄関へ向かう。


「カタリィ、今日は配達ですか?」


「……うん、いってきます」


 ――本の配達の仕事を終え自宅に帰ろうとするが、今日も何だか帰るのが気まずくなる。

 今日は俺の誕生日なわけだが、朝バーグからはお祝いの言葉ひとつもなく完全に忘れているようだった。


「……忘れているものは仕方がない……か。いつまでも気にしてるようじゃダメだな。帰ってバーグに謝るか……」


 決心し自宅への道を歩き始める。

 ――二発のクラッカーがそんな決心が無駄だったことを告げた。

 玄関を開けるとバーグとトリがクラッカーを持って出迎えた。


『カタリィ、誕生日おめでとー』


 クラッカーにビックリした訳では無いが、それでも状況を呑み込むのに数秒硬直した。


「さっ上がってくださいカタリィ、美味しいご飯ができてますよ」


 バーグが俺の手を引く。


「え……何で?」


 驚きのあまりそれしか言葉が見つからなかった。


「実はですね、トリさんと相談した結果今年のカタリィの誕生日はサプライズにしようと決めてたんですよ」


 全ての点が線で繋がった瞬間だった。

 バーグは、サプライズがバレるのを防ぐためにあの時わざととぼけたのだ。

 それに対してカッとなるなんてなんて失礼な奴だと自分を責める。


「ごめんバーグ。俺、バーグとトリに誕生日祝ってほしかったんだ」


「いえ、私も気が聞いたことが言えなくて、傷つけてしまってごめんなさい」


「さっ、早くパーティーを始めよう!!」


 トリに促されるのは少しばかり不本意ではあるが、今やそんなのはどうでもよくただパーティーを楽しむことにした。


「カタリィ、誕生日プレゼントです。受け取って下さい!」


 そう言うとバーグは、小説程のサイズの紙袋を差し出した。


「ありがとう!!」


 早速中を開けてみる。

 中には一冊の本が入っていた。


「とうとう私もヨムだけではなくカクにも挑戦してみました! どうですかね?」


「読んで見ればわかる……と、いつもなら言うけどさ、これは読まなくてもわかる……最高の一冊だ!!」


「読まなくてもわかるなら…·…読まないんですか?」


「もちろん読むさっ! ありがとうバーグ」


 俺達は最高の4月6日を過ごした。

 これからも、二人と一匹で幸せに過ごしていきたい

 そして――バーグと共にカクヨムに携わる人々を応援していきたい。

 カクヨム、三周年おめでとう。そして、これからもよろしくお願いします。


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カクヨムコンビの逆転!? しな @asuno_kyo

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