窓の外に何かいる
皆様今晩は、ようこそ御出で下さいました。
では早速、今宵一夜目のお話をさせて頂きます。
皆様は金縛りに遭った経験は御座いますでしょうか。
御存じだとは思いますが、目は覚めているのに、体が全く動かない、という状態で御座います。
脳がしっかり覚醒していない為、起こる現象と言われております。
そしてこの時、幻聴や幻覚が起こることがあると、言われております。
しかし、それは果たして、本当に脳が創り出した幻なので御座いましょうか……。
貴方は寝つきが良いほうで、深夜に目が覚める何てことは滅多にありません。
その夜も、何時も通りの時間に帰宅し、何時も通りの時間に就寝しました。
しかし貴方は、深夜にふっと、目を覚ましてしまいます。
そして、枕元の携帯で時間を確認しようと、手を伸ばそうとします。
しかし、動かない、腕に力を入れても、まるで自分という形の箱に詰められているかのように、横向きの態勢のまま、全く体が動かせないのです。
何とか動かせないか、辛うじて動く眼球で部屋を見回します。
そしてあることに気が付きました、背にしている、ベランダに抜ける大きな窓、カーテンとガラスで閉ざされたその先……。
少し開いているカーテンの隙間から、何かがじっとこちらを見ている、っと感じたのです。
しかし、振り向く事は出来ず、背中を指先で撫でられるようなじっとりとした視線が、全身に纏わりついてきます。
逃げようにも、電灯を点けようにも体が動かないのでどうしようもありません。
貴方には、必死に目を閉ざす事しか出来る事が無いのです。
そして、必死に目を閉じている貴方は、自分の体が少しずつ動いていることに気が付きます。
しかし、依然として自分の意志では体が動かせません。
窓の方に、少しずつ、少しずつ、何かに引っ張られて引きずられるように、引き寄せられているのです。
ズルッ…ズルッ…ズルッ…ズルッ…っと。
そして到頭、窓の真下まで引き寄せられてしまいました。
纏わりつくような視線は、すぐ背中に感じます。
そしてそれは、生首だけが窓の外に置いてある、それがこちらをじっと見ている、ちょうどそのような高さから感じるのです。
その時、じんわりと、痺れが取れていくように、体を動かせるようになりました。
まるで、こっちを見ろと言わんばかりに……。
貴方はゆっくりと、窓の方に体を向けようとしました。
窓の外に何が居るのか、見たい衝動に刈られてしまったのです。
首だけを少しずつ動かし、あと少しで窓の外が見えそうというところで、突然電気ショックのような衝撃が体全体に走りました。
飛び起きた貴方は、元の布団の上に戻っていました。
咄嗟に窓の方を確認します。
しかし、そこには何もおらず、ただ少し開いたカーテンの隙間から、街灯の光が射し込んでいるだけです。
携帯を確認すると、時刻は午前四時頃でした。
あれは幻覚か、または夢だったのでしょうか。
とにかく、窓の外にいたものはこの世の者ではなかったのでしょう……。
……以上が今宵一夜目のお話で御座います。
さて、窓の外にいた何かを確認してしまっていたら、一体どうなっていたのでしょうか。
はたまた、本当に脳が錯覚しただけだったのかもしれません。
そして、もしかしたら、次に金縛りに遭うのは貴方かもしれません……。
それでは、皆様、良い夢を____。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます