カタリとバーグのちゃぶ台会議

ポムサイ

カタリとバーグのちゃぶ台会議

 外は雨。都内のオンボロアパートの四畳半の部屋にカタリとバーグはちゃぶ台を挟んで座っていた。その表情にカクヨムのイラストで見る爽やかな笑顔はない。


「さて…皆に集まってもらったのは他でもないわ。」


 バーグはちゃぶ台に両肘をつき睨むようにカタリを見る。


「皆って二人だけどね。」


「黙れ。」


「…ごめんなさい。」


 しばしの沈黙の後、バーグは咳払いを一つして再び口を開いた。


「私達が登場してはや1年…。当初は新キャラクタープロフィールコンテストの開催もあってこれからの私達の活躍が期待される雰囲気だったわ。」


「そうだね。今思えばあれが僕達のピークだった気がするよ。」


 バーグはバンッとちゃぶ台を叩く。


「そもそも運営も運営よ!私達を持ち上げるだけ持ち上げといて後は放っておいて、何かイベントがある時だけ呼ぶってどういう事よ!?」


「まあ、カクヨムの主役は書き手と読み手だからね。僕達はあくまでも脇役に徹するのが正しい在り方なんじゃないのかな?」


「嫌よ。」


「え?」


「嫌だって言ってるの!!百歩譲って…いえ、八万歩譲って脇役に甘んじるとしても私は記憶に残るような名脇役になりたいの!!」


「六角○児さんみたいに?」


「前○吟さんみたいによ。」


「バーグさんシブイね…。」


「…とにかく、このまま座して死を待つワケにはいかないわ。運営が盛り上げてくれるのを待つ他力本願は止めよ!道は自分達で切り開くわ。」


「自分…達?僕もやるの?」


「当たり前でしょ。今の私達に何が足りないのかを考えに考え抜いてきたの。」


「あっ、それは聞きたいかも。」


「ふふん。カタリも少しはやる気が出てきたみたいね。」


「はあ。…で、何が足りないのかな?」


「それは…クセよ!!」


「クセ?」


「そう。私達はまっさらで汚れていない純粋な存在って感じじゃない?それは白紙と一緒だと思うのよ。名脇役にはクセが必要なのよ…カレーにおける名脇役の福神漬け、ラッキョウ、共にクセの塊と言って過言ではないわ。カタリ…ラッキョウに…ラッキョウになるのよ!!」


「まさか漬け物を引き合いに出してくるとは思わなかったよ…。で、具体的にはどうすればいいの?」


「クセとは個性…個性とはキャラ…、よって嘘でも強いキャラ付けをしていく他ないわ。」


「『嘘でも』って言っちゃったよ…。」


「そこで色々考えた結果、私は毒舌キャラ、カタリは下っぱキャラが良いと思うの。」


「へ…へ~。どんな風にすればいいの?」


「カタリは語尾を『やんす』にして基本的には常に揉み手をしておいて。それで九割は完成ね。」


「そんなのでいいの!?」


「『やんす』は?」


「そ…そんなんでいいんでやんすか?」


「なかなか筋が良いじゃないの。次に私だけど毒舌キャラ…これは諸刃の剣よ…。」


「どういう事?」


「…『やんす』!!」


「…どういう事でやんすか?」


「毒を吐く事を自分を飾らず意見を言っていると好感を持ってくれる人がいる一方、失礼だと嫌う人もいるの。好感を持ってくれる人の割合が多くなければこのキャラ付けに意味はなくなるのよ。」


「そうでやんすね。」


「だけど、その反応はしばらくしてからじゃないと分からないのよね。そこで私は逆転の発想で乗り切ってみようと思うの。」


「ほ…ほう…あっ!でやんす。」


「そこで『やんす』はいらないと思うわ。話を戻すわね。逆転の発想…それは、毒舌キャラなんだけど具体的な毒を吐かず好感も反感も買わずにキャラだけ付ける作戦よ!!」


「言ってる意味が分からないでやんす。」


「まあ、凡人には分からないでしょうね。簡単に言うと語尾に『バカヤロコノヤロ』をつけるのよ。するとあら不思議!具体的に誰も責めていないのに毒舌キャラになりました!更にこれを笑顔で照れながらなんて使おうモノならオプションの『ツンデレキャラ』まで付いてくるのよバカヤロコノヤロ!」


「そうでやんすかね~?」


「そうよ!これからはこれで行くわよバカヤロコノヤロ!」


「ホントにこれで良いんでやんすか?」


“良い訳がなかろう!!”


 野太いダンディーな声と共に押し入れが勢いよく開いた。


「「トリ!?」」


“さっきから二人とも好き勝手言ってからに…。”


「え?僕もでやんすか?」


“いいか?3周年記念選手権の最終お題をお前達にした運営の気持ちが分からんのか!?決してお前達を放っておいてる訳じゃないだろ?”


「…確かにそうかもしれないわねバカヤロコノヤロ…。」


“それはもう止めろ。”


「そうでやんすよバーグさん。」


“お前も止めろ!!…とにかくだ。こうやって運営もお前達を定着させようと考えてくれているんだ。それにこのお題でお前達の話がワンサカと出来るワケだ。自ら付け焼き刃なキャラ付けなどする必要などない!!”


「そうね…。もう少し信じてみようかしら…。」


「そうだよバーグさん!僕達はあるがままで良いんだよ。」


“うむ。分かってくれたようだな…。だが、どうしても譲れない大切な事があるんだ。”


「え?それは?」


“『トリ』ってなんじゃい!!俺に名前を付けろバカヤロコノヤロ!!!”


         完






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