神の試験を受けることになった俺は異世界を謳歌する

れのひと

森の中の出会い

 手に感じる感触はどうやら土。視界に入る木々とその隙間から入る光から察するところ森のような林のような場所に今いることがわかる。


「ここはどこだ…?」


 地面に直接横になっていた体を起こし視線を周りに向ける。何でこんなところで寝ていたのかはわからないがいつまでも寝ていても仕方がない。服についた土を払いながら立ち上がると少し離れた左横の草むら…いや低木か?そこで何か物音がした。


「ギュルウゥゥゥ…」


 そこから顔を出したのはうさぎだった。白くてふわふわしていそうなうさぎが2羽。気のせいか頭から角みたいなものが生えているがまあかわいいうさぎだな。多少警戒をしているようだが逃げ出さずその場に止まっている。その愛らしさに顔も緩むと言うものだ。何を隠そうこう見えてもかわいいものが大好きだ。


「お……?」


 うさぎが突然走ってこちらに向かって来た。普通うさぎはそこから動かないか逃げると思うのだがこの子達は何故か俺のほうに向かって来た。


 一瞬脳内にうさぎと仲良く草原を走るイメージが沸いたのは気のせいだと思うが、向こうが向かってくるなら受け止めてやるしかないだろう。ニヤける顔を堪え、俺は両手を広げ今か今かとウサギが胸に飛び込むのを待ち受ける。


 …が、それは叶わなかった。さっきまで走っていたうさぎが突然倒れたのだ。


「うさぎぃ~~~!!」


 俺は駆け寄りうさぎを抱え上げる。まだ温かいがぐったりとしているうさぎは動きそうもないのがわかる。首のあたりに1つの木の棒が生えていた。


「大丈夫ですか?」

「ああぁっ?」


 背後から声をかけられ、つい感情的なまま返事を返す。一瞬だけ声をかけて来た女の人がびくりとした。


「あら…思ったよりもあなた強そうね。助けはいらなかったかしら」

「……ちっ」


 この人が何を言っているのかいまいちわからないが、また外見だけで判断されたことに舌打ちをする。


「でもまだ初心者さんのようね。」


 いつもいつもこの目つきのせいで勘違いをされ、ガン垂れたとか言われ追い回される。自然と逃げることや避けることが得意となった。


「角うさぎは角と毛皮が売れるし、肉も食べられるから早く血抜きをしなければいけないわ」


 状況によっては逃げられないこともあり、多少は反撃のすべも身につけたがそれも苦い思い出だ。勘違いされることにも大概慣れたがこの人は…


「ほらこうやって…」

「………」


 目の前でうさぎの首が落ちた…その光景に俺の視界は真っ暗になった。





 パチパチとした音が遠くから聞こえてくる。どうやら俺は眠っていたようだ。目を開け周りを確認する…がまったく知らない場所にいた。森にいた気がするのは夢だったのか、周りに木々は見当たらない。というかそもそもなにもない。さっきまで聞こえていたパチパチという音すら聞こえない。しいて言うなら多分人だと認識できる人が2人いるのがわかる程度。どうしてこんな言い方をするのかと言うと、たしかに視界に入っている人は人だとはわかるのだけど、何故か顔などの容姿がはっきりとわからないからだ。見えてはいる、だけどどんな人なのか姿がわからないそんな感じ。


「………」

「………」

「…こんにちは?」

「「!!」」


 おお…どうやらひとりは女性のようだ。まあそんな感じの声というだけで本当に女性かわからないが。


「こ、こんにちは」

「よかったーこんなよくわからないところで1人じゃなくて」


 うん、それはよくわかる。もう1人の人も動きからして頷いているようだ。


「ここがどこだかはまあ置いておくとして、とりあえず自己紹介でもしときますか。私は…」

「はい、そこまでー」


 女性が自己紹介を使用としたら4人目があわられた。この4人目は姿がはっきりとわかる。


「幼女…?」

「いやおっさんだろう?」

「うそ…先生??」

「「「え?」」」


 お互いが顔を見合す。どう見ても同じ人を見ていると思うのだがそれぞれが違うことを口に出した。するとその人物がにやりといやらしい笑みを浮かべた。


「そうかお前達にわれはそう見えるのか」


 理由はわからないがそういうことらしい。俺には幼女にしか見えないのでそれをおっさんに見えているとか言われても意味がわからない。


「まあそれはどうでもいいことだ。それより…お前達に説明をしなければならない」


 そうだ、ここがどこなのかとか色々説明してくれると助かる。まずは今の状況を教えて欲しいものだ。


「そうだな…簡潔に済ますか。よしっお前達はわれの後釜候補じゃ」

「後釜…?」


 うん…全然意味がわからないね。


「む…簡単にしすぎたか。んーあれだお前達の言うところの神というのがわれなのだが、その交代要員ということだ。これならわかるか?」

「神…だと?」

「まあそうみえなくもない…か?」

「え…先生が神様だったんですか?」

「ええい、お前達のわれの見え方などどうでもよいわ。つまりじゃなこれからお前達が管理することになるかもしれない世界を知ってもらう。で、その過程でついでに神になる試験をしてもらうのじゃ」


 神だと名乗った幼女が何かを俺達に投げてきた。思わず受け取ってしまったがなんか蓋のついたガラスの瓶のような物…りんごみたいな形だな。


「かわいいじゃろう?みんな受け取ったな。これで試験参加決定じゃ」

「…は?」


 みんな困惑した顔をしている…気がする。神がどうとかいうのもまだよくわからない上にこんなだまし討ちのようなことをされたら誰もがただ困るだけだ。


 えーと…つまりなんだ?神と名乗る幼女が俺達に神になれといっているでいいのか…?


「ちょっと質問いいっすか?」

「なんじゃ?」

「えーと神になるための試験…ということのようだが、とりあえずそれは置いておいて俺達がもともと住んでいた世界と違うところに行くってことであってるか?」

「そのとおりじゃ」

「じゃあ俺達自身は現在どんな状態なんだ?生きてるのか…死んでるのか?」


 …ごくりと喉が鳴った。知らない場所、神様、別の世界…この言葉を聞くと思いつくのは異世界転生とか転移とかだが、もしかしなくてもそういうことなのか?


「そうじゃの~もとの世界では死んだことになって…これから行く世界では生きている感じか。もういいか?詳しいことはこのマニュアルでも見てくれ」


 今度は透明な板のようなものを渡された。見たことがない文字が表に書かれているがなぜかマニュアルと読める。


「じゃあさっさといくっ」


 パチンと幼女が指を鳴らすとまた目の前が暗転した。ただそれも少しの間で目を開けようとしたら思ったままあけることが出来た。視界に入ってきたのは薄暗くなった森の中。


「あ、起きた?食事も出来たところだから丁度いいね」


 夢…どっちが?今が?少し混乱しているのかもしれない。そんな俺のことは気にもせず目の前にいる女性は木で出来た器を差し出してきた。


「ほら温かいものを食べれば目も覚めるし気持ちも落ち着くよ?」

「ありがとう…」

「それにしても君はどこから来たの?そんな軽装で森に入ったら危ないよ。あっ私はエルゥーリカ、よろしくね」

「…えろいいか?」


 エロイイカとかすごい名前だな。


「違うっエルゥーリカ!あー…エルかリカって呼んでいいよっ」

「じゃあエルで」

「で、君は?」

「そう、乃木蒼のぎそう

「ソウ…うん、よろしくね。」


 名前を名乗った後受け取った器を思い出しそれに口をつけた。なにやら野菜っぽいものと肉だと思われるものが入っている。味付けはシンプルに塩だけのようであまりおいしくはない。まあ仕方ないよな…どうやら違う世界らしいからね。あの神の話が本当だとすると、だけど。


「ん~やっぱり新鮮な素材を使うとやっぱおいしく感じるわね」

「新鮮な素材?」

「ほらさっき仕留めた角ウサギを血抜きして野菜と一緒に煮たんだ~」


 なん…だと?じゃあこの肉はうさぎの…


「うさぎぃぃぃ~~~!!」


 もちろん勿体ないので全部食べましたがなにか?


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初めて会う魔物  +1

初めて会う種族 +1

初めての食事  +1

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