第15話 温度差

「少しぬるいな」

 口に含んだ日本酒の熱さが不十分。

「もっと温めようか?」

 コタツに入ったばかりの妻が言う。

「頼むよ。何か器具を買う?」

「いい。もう少しでコツがつかめそうな気がする」

 立ち上がった妻はキッチンへ。

「燗酒なんてよく飲めるねえ」

 温め直した徳利が冷酒の徳利の隣に来る。

 二つの徳利に二つのペース。

 さしつさされつとはいかない。

 それでも、

「美味しい」

 と満開の笑顔、心地よく酔えるのはやっぱり彼女のおかげ。

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