　＜決勝第一戦は……『順位戦だよ！　生き残れ！　ご指名スクランブル』～！！＞

　主催者こと「ハツマ　アヤ」は、さっきまでの丁寧かつクールに進行していた感じから、少し元気さと可愛さを前面に押し出したスタイルへ変更してきた。この緩急……やるわ。並みの男なら既にその底無しの魅力にずぶり飲み込まれてるだろうっつの。と言うか案の定、観客席からは野太いながらも感極まった感も付与された叫び声が響き渡ってきていて、正直聞くに堪えない状況だけれども。でもルールを聞き逃すわけにはいかない。

　＜こちらで評価させていただきました『順位』を発表させていただきます＞

　相変わらずの男も女も魅き込んでいく超絶微笑を浮かべながらハツマの説明は続くけど。「順位」って……なんかいやな予感がする。

　＜『勝数』および『予選通過順位』、そして『KOタイム』から順位を振らせていただきました。こちらになりますっ＞

　ハツマが示した背後の大型ディスプレイ(いつの間に？)には、決勝進出者と思しき１６名の名前がカタカナでずらり表示されている。

　なになに、上位４名は「５連勝」、その次８名が「４勝」、で「３勝」は３名で……「２勝」はひとり。そう私。

　追い込みSATURIKUにより、イレギュラーにも程がある予選突破をせしめた私だけれど、やっぱりカーストは最下位なのね……「１６位：ミズクボ　ワカクサ」と最下段に表示された自分の名前を恨めしく見やるも、その横に点灯した数字にも目がいく。「１２００」。それってもしかして……。

　＜お名前の横の数字は、それぞれの現在の『所持金』となります。言うまでもないですが、単位は『万円』。こちらも重要となってくるので、常に表示しておきますねっ＞

　私の、そしてここにいる面々の考えを読んだかのように、そう解説を入れてくるハツマ。カネが……どう重要になっていくの？　いまいちピンと来ないけど、「５連勝者」の横の数字は「９６００」。うーん、丸男が言ってたけど、蔵建ちそうな金額だわ。この貧富の差が……何か不利に働かなきゃいいけれど、……いや、でも多分働く。私はそろそろ悟り始めてきた私の受難体質に目を逸らせつつも互いに擦り寄りながら、もうどんな状況だろうと呑み込む構えだ。

　＜お札の束が乱れ飛ぶのはちょっとお下品ですし、重量も結構な感じになりますので、こちらで『チップ』をご用意させていただきました！！　『ホルダー』もどうぞ。これで両手の空いた状態で『対局』が行えますねっ＞

　ハツマの説明と共に、グラウンド内に待機していた黒服たち数名が音も無く近寄ってくる。有無を言わさずジャージの左袖をまくり上げられ、その下に着込まされていた「全タイとウェットスーツのハイブリッド」こと「対局服」の前腕部分に、１５ｃｍくらいの長方形のプラスチックケースが、手首と肘あたりにバンドでくくり付けられた。

　ケースは透明感のある薄いグレーで、中に蛍光黄色にほの光る、薄い円筒形の物体が何枚も連なっているのが見えるけど。

　これがおそらく「チップ」。これを何かしらに使用していくんだろうけど、私の手持ちは先刻から何度も数えているけど「１２枚」しかない。１枚が「１００万円」ってこと？　本場のカジノでもおいそれと見ないようなハイレートだけど。