「ん、おかえりー、用事は終わったの?」


 試験の待機室に戻ると、姐御の話に付き合っていたせいで日向と桜の試験開始時間ぎりぎりだった。

 会議室っぽい雰囲気の待機室には日向の姿はなく、先ほどまで中学のジャージ姿で机に突っ伏して寝ていた桜と、その対面に座り、寝ている桜の髪で遊んでいた花蓮しかいなかった。

 桜は眠気眼を擦り欠伸をしながら起き上がると、僕の存在に気が付くが頭がはっきりしてないらしいく、たどたどしい口調で話しかけてきた。


「うん終わったよ。それより桜、寝起きの体で動けるの? 眠気覚ましに少し体を慣らしておかないと怪我はしなくても身体を痛めるよ」

「ういー」


 まだ眠たいのか気の抜けた返事をしながらも、のろのろと立ち上がり隣接する控え室に向かった。


「花蓮、日向はどこ? 一応、試験前にバイタルチェックしておきたいんだけど」

「弁当食べたらさっさと控え室に行ったわ。今はみんなでいるより一人の方が良いみたい」


 花蓮は口ではそう言いながらも、ムスッとしていて日向の行動に不満を抱いてるようだ。


「そうか……けど、日向本人が一人になりたいと言ってても、誰かが隣にいてあげる方がいい。キミだってそう思ったから付いてきたんだろ?」


 本来なら、戦闘とは無縁の箱入りのお嬢である花蓮まで方舟に来る必要は無い。

 彼女は両親に無理を言って、合格の決まった高校への進学を取り消し日向に付き添ってきた。


「そうね、日向は馬鹿だから昔から一人でなんでも抱え込む奴だった。だから、少しでも近くにいてアイツが背負い込もうとしてるものを分け合えたらなって。私だってお祖父ちゃんがいなくなって悲しいし、仲良くはなかったけど少し前まで一緒に暮らしてた兄貴もいなくなっちゃって、なんかモヤっとしてる」


 そう言えば、花蓮の実兄の七夕 紫陽しようは葵家に修行に出ていたがために今回の事件に巻き込まれて亡くなっているんだった。

 紫陽は厳格で気難しい性格だったが、葵家の次期当主としての誇りを持ち、何より他人のことでも自分のことのように真摯に向き合う人だった。だからこそ修行僧達からも慕われていた。


「けど、私なんかじゃ抱えきれないほどあいつは重荷に感じてる。たぶん、すぐ近くにいながら何も出来なかったのがよほど悔しかったんでしょうね。これじゃ、なんのために付いてきたのか、わからないわね……」


 いつもは勝気な花蓮が無力感に打ち拉がれている。そういう暗い顔はこの子には似合わない。


「桜は護衛としてアイツを守ることが出来る、アンタは医者としてアイツを診てやれる、じゃあ私は? 私はアイツのために何が出来るって言うの?」


 また後ろ向きになってる。どうもこの子は日向のことになると考えすぎる傾向にある。


「はいはい、ネガティブ禁止。きっと僕や桜に出来なくて、キミにしか出来ない日向のためになることがあるさ。だからそんな暗い顔しない! 甘いものでも食べて無理やりにでも、笑顔、スマイル、ラッヘルン!」


 少し惜しいけど、僕は自分用にストックしてるポップキャンディーを白衣から一本取り出して花蓮に手渡し、自分の口角を指で押し上げ笑顔のお手本を見せる。

 すると、さっきまで落ち込んでいた花蓮の表情が少し明るくなった。


「フフッ、もう子供じゃないんだから、飴くらいで機嫌が良くなるわけないじゃない」

「けど、キミは笑ってくれた。それに僕からしたら君たちはまだまだお子様だよ、素直に受け取りたまえ。良い笑顔だ、君は暗い顔でいるより笑っている方がいい。きっとその笑顔が、いつか日向の心を救うだろう」


 日向を守る立場の僕や桜には、決して日向の心を癒すことは出来ない。けど、共に思いを分かち合える花蓮なら、日向の苦しみを解放してあげられると僕は思う。


『編入試験午後の部、演習試験開始五分前です。受験者は速やかに演習場に集合しなさい』


 花蓮と話し込んでいると、アナウンスが流れてきた。


「しまったな、事前に日向のバイタルチェックをしておきたかったんだけど」

「ごめん、私と話してたから」

「いや、ギリギリに戻ってきた僕が悪いよ、仕方ない。二人の試験を見物するとしよう、確かあのモニターで見れるはずだよ」


 待機室の正面には黒板のように巨大な液晶モニターが設置されている。そこには中々の高画質の映像で、試験会場である土が敷き詰められたグラウンドタイプの船内演習場が俯瞰で映し出されている。

 モニターを見ると、丁度、腰に瀧貴さんの形見の日本刀を提げ、和風の篭手を装備した日向と護衛用の二本の小太刀を装備した桜が演習場に入ってきた。

 しばらくして、開始時刻になると、着古したようなジャージに無精髭を生やした休日のおっさんのような風貌をした一人の男が演習場に入ってきた。手にはなにも持っていない。

 ぼりぼりと頭をかき、欠伸をしながらやってくる男に、やる気とか、気合とかいうものは一切見受けられない。


「ったく、何だって非番の日に呼び出されなくちゃなんねぇんだよ、かったりぃ……ん? ああ、お前らがこんな春休みの真っ只中に編入試験を受けに来た餓鬼共か」


 面倒くささを隠しもせずに、おっさんは日向と桜を一瞥する。


「なんか急遽、臨時で試験官をやることになった、方舟学園高等部教師、魔術士の三角みすみ そうだ」


 おっさん、もとい三角は適当に自己紹介をし、そのままやる気のない適当な感じのまま、試験概要を二人に説明する。


「試験の内容はいたってシンプルだ。お前らが俺を撃破するか、お前らが全滅するか、俺を突破して旗を盗るかしたら終了。制限時間が来ても終了だ。アキレウスについての説明は事前に受けてるだろうし省くぞ。フィールドは平坦フラット、要するにこのままの状態で執り行う。距離は中心点からそれぞれ20mおいてスタート。制限時間は三十分だ。質問がないならさっさと始めるぞ」

「試験官はアンタ一人なのかよ」

「いや、一応時間計ったり、スタートの合図をくれる奴が一人いるが、相手するのは俺一人だ、何か不都合でもあるか?」


 三角は何言ってんだこいつ、といった様子で日向を見る。


「いやいや、俺ら二人だぜ、片方終わったら、もう一人要るだろ」

「お前ら同時に俺が相手するんだよ、そっちの方が早く済む」


 あからさまに日向たちを舐めた三角の態度が日向の琴線に触れる。表情は変わらないまま、日向は三角を黙って睨むと、すぐさま反転しスタート地点まで足早に向かい始めた。


「侮ったこと後悔させてやる、行くぞ桜、お望みどおりさっさと終わらせてやる」

「ん? え、ちょっと日向!」


 三角の態度をさほど気にしていなかった桜は、ワンテンポ遅れて日向の後を追う。

 あの日、以来日向の沸点が低くなった気がする、まだあの程度で倒れたりはしないだろうけど、見ているこちらはハラハラしっぱなしだ。


「ったく、これだから、餓鬼の面倒は嫌なんだよ」


 極めてウンザリした様子で、開始地点に向かう三角。道中、腕に付けた装置を操作し、どこからともなく鞘に入った太刀を取り出した。

 あの装置は『携帯型武器庫ポータブルストレージ』、単純に武器庫とも呼ばれているが、その中に武器を仕舞うのではなく、登録した一定重量、サイズ内の道具を取り寄せることができる魔術儀礼装置、礼装と略される。現代魔術士には必携の装備だ。


『両者、スタート地点に到着を確認しました。これより十秒後試験を開始します。カウント10、9、8――』


 無機質なアナウンスが流れ、日向と桜は戦闘態勢に入る。しかし、三角の方は相変わらず欠伸をかいて、やる気が見られない。


「あの野郎、挑発してんのかァ……?」


 多分、単純に面倒でやる気がないのだと思う。

 日向の気持ちを知ってか知らずか、三角が戦闘態勢に入ることなく、試験開始三秒前になった。


『3、2、1――試験開始』


 結局、三角は戦闘態勢を取らないまま試験が開始される。

 棒立ちの三角に向かって、開始と同時に桜が駆け出す。

 普段の眠たげで緩慢な動きとは打って変わって軽快に地面を蹴り、立った一歩で距離を詰め、逆手に持った刃が三角の喉笛に食らいつく。


「――取った」


 警戒していたとしても回避は容易ではない、天性のバネと感覚的に操る魔術によって生み出される純粋に速度の乗った一撃、無警戒に突っ立てるだけのおっさんが躱せるわけがない、と三角を初めてみる人は誰もがそう思うだろう。


「身体能力は悪くはない。だが、あからさまに相手が無防備なんだ、何かあると多少は警戒しろ、よっと!」


 三角は試験開始時から一切変わらない姿勢のまま、喉に刃が紙一重で到達するというところで桜の動きを止めていた。

 桜の動きを止めたのは、地面から生えている……いや、地面が変形して出来た巨大な一本の腕だった。腕はそのまま天空高く桜を全力投球し、地上十数メートルに投げ出された桜は頭から地面に激突しピクリとも動かなくなった。


「何よあのおっさん!? 桜の《エアスラスト》は単一工程だから無詠唱で出せて当然だけど、あの腕が単一工程どころか術式が必要なレベルでしょ、それを無詠唱で発動するなんて」


 隣で花蓮が予想通り、目を剥いて驚いている。

 魔術というのはその名の通り魔力を使った技術を指す科学だ。

 生物の細胞に潜在するエネルギー『魔力』を魔術使いが活性化、表に引きずり出して様々なエネルギーに変換、作用させることで様々な現象を引き起こす技術を一般に魔術という。

 桜が使った《エアスラスト》と呼ばれる魔術は魔力を運動エネルギーに変換し自身の前面の空気に作用させ空気抵抗を妨げる空気の壁を作る魔術だ。

 これはエネルギーの変換、作用の手順が一つしかないため『単一工程魔術』と呼ばれ、難しいことを考えなくても感覚的に発動できる魔術として多くの近接型の魔術使いに愛されている。

 花蓮の言葉のニュアンスから大体わかると思うが、術式というのは工程魔術を組み合わせたモノで、いくつもの工程を構築して作り上げる計算式。

 それを使って発動する魔術が『術式魔術』。発動に時間が掛かり、頭を使うため敬遠されがちだが、物の造型や単純な威力の増加など幅広い用途があるのが特徴だ。

 その昔、術式魔術を構築している間に、イメージを明確化するために多くの魔術使いが呪文を唱えていたことから、構築から発動までのラグのことを『詠唱』と呼ぶようになった。


「確かにあれは術式魔術の一つだが、彼は詠唱してないよ。まあ驚くのも無理はない。詠唱なしで術式魔術を使える人間なんてほとんどいないしね」

「詠唱魔術を詠唱なしでなんてインチキよ、インチキ効果も大概にしろ!」

「落ち着きなよ。まあけど、あながちインチキってのも間違ってないんだよね。あんなの初見殺しもいいところだよ」


 この理不尽さには、さしもの孔明も計略を立てるのをやめて扇で殴りかかるレベル。


「どんな手品か知らねぇが、地面から生えてくる腕に警戒してりゃただのおっさんだろ!」


 桜が投げられている間隙に、日向は三角の背後を取り、術で赤く熱された篭手で殴りかかる。


「何のための三本目の腕だと思ってんだよ。本体の両手を空けとくためだろ」


 日向の方に振り返りもせずに三角は帯刀していた太刀で軽々と日向の拳を受け止め弾き返した。


「ちっ、野郎っ!」


 僅かに退避させられた日向だが、尚も距離を詰め拳でラッシュを掛ける。しかし、三角は一度も鞘から太刀を抜くことなく全てを凌ぎきる。


「どうしたおっさん! その大層な刀は飾りかよ!」

「安い挑発だな、刀提げてるくせに拳しか使わねぇお前がそれを言うか? そもそも、それ薊一刀流の零ノ型だろ、下手に斬り返したときのカウンターの方が怖ぇよ」


 日向の激しい乱打を物ともせず、三角は余裕さえ見せている。むしろ、日向の方が息が上がってる。


「そんだけ殴れば満足か? そろそろ苦しくなってきただろ」


 日向の拳に勢いが失われ始めると、三角は日向を蹴り飛ばし、再び距離を置いてから、そこでようやく彼は太刀を抜いた。


「カウンターが……怖いんじゃ……なかったのか?」


 息も絶え絶えになりながらも口が減らない日向を三角は哀れむような目で一瞥する。


「カウンター狙いが見え透いてるとこに近づく馬鹿がどこにいる。お前ら二人とも馬鹿の一つ覚えなんだよ。良いから黙ってろ」


 日向が片膝をつく。もう追撃は出来ない。かといって日向はこのまま倒れることを良しとしない。なおも立ち上がろうとするが、気持ちに身体が付いていかない。


「見てて痛々しいな、とっとと楽にしてやる」


 三角は日向に引導を渡すべく、その太刀を地面に突き立てる。


「――冥府の神に願い奉る、汝がしもべら、この一時ひととき、我に貸し与え給え。さあ亡者共よその冷たき渇きを存分に癒せ」


 三角の太刀が妖しい輝きを放ち、日向の周囲に霧のようなものが立ち込める。


「三式――『死屍累々』」


 三角の持つ太刀、魔導具登録No.2『村正』が解除暗号コードにより、その本来の力を解放する。

 地面から先ほどの腕よりかは小さい、普通の成人男性ほどの腕が無数に生い茂る。

 そして、ソイツらは地面に手を付き地獄の底から這い上がってきたかのように現れた。

 そのシルエットは人の形をしているが、人でいう目に当たる部分は洞ののように空いてるだけで顔はそれ以外のパーツはない。体は痩せ細っており、触ると直ぐに折れて崩れてしまいそうで弱々しい。だが、その数は尋常ではない。フィールドを埋め尽くさんばかりのおぞましい数に見ているこっちまで気持ちが悪くなってくる。


「なん……だよ、それ!?」


 圧倒的な実力の差に日向の顔色が変わる。


「少し土に埋まって反省してな」


 出来上がった土の人型は目標を日向に定め、上に上にと積みあがっていく。まともに動けない日向は成すすべなく埋もれていった。

 外で見ていたもう一人の試験官が両者戦闘不能と判断し、会場中に試験終了のブザーが鳴り響く。

 三角が村正を鞘に収めると、術が解け土の山が崩れ落ちた。

 そのまま三角は動けなくなった日向を引っ張り出し、のびてる桜を拾い上げ、試験会場を後にした。


「何よ、アイツ、本当にただの教師?」


 花蓮は制限時間を二十九分残し、ほぼ秒殺かつ封殺した三角に驚きを禁じえないようだ。


「いやいや、まさか。確かに方舟の教師は一般から雇われている魔術士が多いけど、中でも彼はNNN第一機関に所属している魔術士だよ」


 おそらく、彼を呼んだのは姐御だろう、確かに、姐御の言ってたとおり普通の試験官じゃ日向は物足りないだろうけど、あの人の感覚は少し常識を逸脱している。


「アレは《死霊使いネクロマンサー》三角奏、NNN第一機関所長の懐刀であり、蒼龍と鉄拳が前線から退いた現在、NNN最強の名を有している男だ」



「うへぇー、まだ腰がジンジンするよー」


 帰ってくるなり、ジャージのまま桜はリビングに設置されてるソファーに飛び込んだ。アキレウスのおかげで怪我もないし、飛び込めるくらいだから彼女の腰は全く問題ない。

 水平線に日が沈み辺りを茜に染め目を眩ませる黄昏時。無事、僕も花蓮も試験を終えて、僕らは学校から与えられた寮に帰ってきていた。

 二階建ての風呂トイレ別、一階と二階合わせて六畳の洋室が八つもある8LDK の間取りのシェアハウススタイルの学生寮。高等部の学生は学校が決めた四から八人の寮生同士で小隊を組むことになっており、共同生活を送らせることで日頃からチームワークを深めようという魂胆らしい。

 僕らは半端な時期に方舟にやってきたため、必然的に僕ら四人は同じ寮になり、『第六小隊』を編成することになっていた。


「くそっ、納得いかねぇ」


 乱暴に腰を下ろす、何やら不機嫌な様子の日向。


「一体何が気に入らないんだい? 全員何事も無く試験を通過したんだから何も問題ないじゃないか」

「それが納得いかねぇんだよ、俺と桜はあのジャージのおっさんに完敗したんだ」


 そもそも、あんなんに勝てるわけないんだけどね。


「別にいいじゃない、それとも不合格だって言われて放り出されたいの?」


 僕と共に見物していた花蓮は他人事のように冷めた目で日向を見る、やっぱり日向と面と向かうと語調がきつめになってる気がする。


「それは嫌だけど、負けは負けだ。これじゃ、情けを掛けられたみたいで何か嫌なんだよ。あのおっさん『弱いから学びに来たんだろ? もともと自力がある奴こそここにいる意味がない』だとよ。馬鹿にしてんのか」


 不貞腐れてるなぁ。

 姐御は日向に存分にストレスを発散させてあげようと思って相手に三角を選んだんだろうけど、手も足も出ずボコられた日向はかえってストレスを感じてしまったようだ。


「日向も花蓮も、どうやら君たちは少し勘違いをしている。誰も負けたら不合格なんて言ってないよ」

「は?」

「そもそも三角は試験開始前にこう言ったんだ『俺を撃破するか、お前らが全滅するか、俺を突破して旗を盗るかしたら終了。制限時間が来ても終了』ってね、そもそも彼は勝敗について言及していない。この試験の目的は筆記も実技も含め、キミたちの自力を測るところにある。この学校、魔術使いなら誰でも入れるようにっていう配慮から入学試験は無いんだ」


 方舟は社会的弱者である魔術使いの避難所という側面を持っているため、社会に馴染めない魔術使いを積極的に受け入れている。

 中学では問題なく大衆の社会に溶け込んでいても、一つ間違うだけで爪弾きにされ、そこに居場所がなくなってしまう。なんていうのはよくあることで、高校からの外部進学者も少なくない。


「基本的に魔術使いは誰でも受け入れるけど、そうなってくると学力や体力に差が生まれるからね。授業のペース配分や小隊編成の指標にするために試験を行なうんだ」


 高校受験を終えてからこの学校に編入する場合、筆記試験だけでなく受験した高校の入試結果も反映されるのでほぼ間違いなくこの三人は同じクラスになれるだろうし、僕も頑張って調整したので別のクラスになることはないと思う。


「情けを掛けられたわけじゃなくて良かったわね」


 冗談っぽく意地悪な笑みを浮かべる花蓮。だが笑いかけられている日向の表情は暗いように見える。


「負けたことに変わりはない。アイツとの手合わせで身の程を思い知らされた。結局、今の俺は祖父ちゃんどころか、あの蛇野郎にも及ばない」


 思い詰めた様子の日向は何かを決心したように固く拳を握り締めた。

 これ以上、精神的な負荷をかけないためにも出来れば大人しくいておいて欲しいんだけどな……。

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