ぱんけーき

「この前、ぱんけーきを食べに行った」

「ということはだ、それは食べ物なんだね」

「それは性急な結論だよ、きみだって食べ物ではないものを食べに行くことがあるじゃない」

「海老とかね」

「偏見が強いね」

「ともかく、きみはぱんけーきを食べに行ったんだね」

「うん、それはもうぱんけーきを食べに行った」

「何の味がした?」

「ぱんけーきの味がしたよ」

「ぱんけーきからぱんけーきの味がしたの!」

「どうしたの」

「たとえば、蟻からは蟻の味がするよね」

「落ち着いてほしいな」

「それで、蟻酸からも蟻の味がする」

「否定はしない」

「ということはだ、ぱんけーき酸からはぱんけーきの味がする」

「それは性急な結論だよ」

「海老とかね」

「人工無脳か何か?」

「でもさ、ぱんけーきは甘いじゃない」

「詳しいね」

「でもぱんけーき酸はすっぱい、明らかに」

「明らかだね」

「ということは、ぱんけーき酸は甘くてすっぱいということになる」

「ということはだ」

「それわたしの」

「ぱんけーきは甘酸っぱいということになる」

「甘酸っぱいということは青春だということか」

「そういう見方もできるね」

「ははは」

「急に笑わないでよ」

「でも甘酸っぱいというのと甘くてすっぱいというのはかなり異なる」

「うん」

「甘酸っぱい食べ物を3つ挙げなさい」

「青春、恋愛、青春の恋愛和え」

「青春の恋愛和えってなに」

「青春を恋愛で和えたもの」

「なるほどね」

「理解が早いね」

「食べたことは?」

「高校のころに一度だけ」

「なんか腹立つな」

「ぱんけーきの方が美味しいよ」

「ぱんけーきは甘いからね」

「甘味に至上価値があるんだね」

「ところで、ぱんけーきはぱんとけーきからなる」

「ある意味ではそうだろうね」

「ぱんはすっぱい」

「発酵食品の本質だね」

「けーきは甘い」

「れあちーずとかは?」

「甘い」

「はいごめんなさい」

「で、ぱんけーきはぱんとけーきからなる」

「ある意味ではそうだろうね」

「ということは、ぱんけーきは甘酸っぱい」

「きみはとんでもなく賢いね」

「さて、ぱんけーきは甘い」

「ぼくの舌によればね」

「で、ぱんけーきは甘酸っぱいということが一度ならず二度までも示された」

「示されたね」

「二対一だ」

「なにが?」

「ということで、わたしはこれからぱんけーきを食べに行こうと思う」

「二対二になるだろうね」

「でもそれでは五分五分だ」

「勝利には程遠いね」

「だから、二対三にしたいなと思うんだけど」

「一緒に食べに行こうか」

「……そうする」


                                 <了>

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