9.ぼくのなまえはぎんた

 ふわふわしてあたたかいのがなくなるととてもまぶしいところにでた。

 ここはどこだろうか?いままでとちがうばしょにきてぶるぶるとからだがふるえる。するとなにかがぼくのからだをなでるようにふれた。


 なんだろう?


 あたたかかったところにいたときとおなじにおいがする。

 まぶしかったのもなれ、おなじにおいにあんしんしていると、まわりからいろんなおとがきこえてきた。


 きゅううぅ~ん

 くぅうぅ~~ん


 すこしだけちがうけどにたにおいがする。


 うまくうごかなかったからだがうごかせるようになったころまわりがよくみえるようになってきた。あんしんするにおいがするのがどうやらぼくのおかあさん。にたにおいがするのはどうやらぼくのきょうだいたちらしい。ぜんぶおかあさんがおしえてくれた。


 すこしぼくたちのからだがおおきくなってくると、おかあさんがたべものをはこんできてくれるようになった。ぼくもいつかたべものをてにいれれるようになって、おかあさんにたべてもらいたいな。


 あるひおかあさんがけがをしてもどってきた。そしておしえてくれた。ぼくたちもじぶんでごはんをてにいれられるようになりなさいと。それからはちいさないきものをぼくたちでつかまえるれんしゅうがはじまりすこしづつじぶんたちでもつかまえられるようになってきた。


 ねえほめてほめて?


 そしてまたあるひ、このひはおかあさんはかえってこなかった…

 そのつぎのひもおかあさんはかえってこない…どうしたのかな?


 だんだんまわりからおかあさんのにおいがきえていく。ぼくたちはおかあさんのにおいをさがしていどうをはじめた。おかあさんのにおいは…しない。


 きょうだいでかたまってねているとふわりとしたかんしょくにめをさます。めのまえにはしらないにおいがするいきものが。どうやらぼくはこのいきものにつかまっている。


 …だれ?ねえおろして??


 もぞもぞとうごくとさらにつよくしめつけられるかんじがする。こわくてついそのにおいがするいきものにかみついてぼくははしってにげた。にげてにげてそのいきもののにおいがしなくなるところまでにげた。

 すると、いつもいっしょにいたきょうだいたちのにおいもしなくなった。



 いったいどれくらいのくらいときとあかるいときがすぎたんだろう。ぼくはきがついたらいっぴきだった。たべものもじぶんでちゃんとてにいれられるようになった。たまにとてもつよいいきものがいてたべられないときもあるけどなんとかごはんをたべることができている。


 きゅるるる…


 うん、そろそろきょうもたべものをさがすじかんみたい。

 ぼくはにおいをたよりにたべものをさがす。こっちのほうにおいしそうなにおいがないからはんたいのほうへいってみようか。


 すこしだけはしってべつのところのにおいをさぐる。いろんなにおいはするけどきょうはあまりおいしそうなにおいがしない。いつもよりすこしとおくへいったほうがいいのかもしれない。


 …ん?


 このにおいはどこかでかいだことがあるものによくにている。こっち…からかな?

 ぼくはそのにおいをたどってはしる。はしる、はしる…しばらくはしるとよくまわりがみえるところにでてきた。そこににおいのもとだとおもわれるいきものがいた。そ~っとちかづいてにおいをたしかめる。


 なんだろう、ちょっとだけおちつくにおいだ。


 あ…っそのいきもののにおいをかくにんしてたらそのいきものにつかまってしまった。あたたかい…このいきものはぼくのことをたべようとはしていないみたい。あたたかさとおちつくにおいにつつまれているとなんだかねむくなってきちゃったよ。からだがふわんふわんしてここちよい。


 あ…このいきものがぼくをかかえたままたちあがっていつもよりとおくがよくみえるようになった。このいきものもしきりにまわりをみわたしている。


「たった1歩歩いただけで違う場所とか…なんなの。」


 す、すごいあっというまにまったくちがうにおいがするばしょにつれてこられちゃった。それはいいんだけど、


「キュウゥ~ン…」

「あっごめん!」


 あーくるしかった。ぼくをつかまえているてをゆるめてくれた。さっききゅうにぎゅっとされたからすこしくるしかったんだよね。それにしてもここはいやなにおいがするな…おいしくなさそうなにおいだ。


「あの…ここは一体どこですか?」

「ギュオーーーギャッギャッギャッ!」


 うわ…このおいしくなさそうないきものはおともうるさいね…すごくかわったおとをだしている。そしてぼくとぼくをかかえているいきものをたべものとしてねらっているみたいだ。しかもなんかおなじにおいがするいきものたちにかこまれている。


 あれ…?においがかわった。すこしいやなにおいでおなじくどこかでかいだことがあるにおい。ぼくをかかえているいきものににたみためのいきものがたくさんいる。


 ……またにおいがかわる。

「…あっまた。」


 においかわりすぎ。このいきもののにおいはすきだけど、においのへんかがおおすぎてそろそろやめてほしいところ。


 いろんなにおいにかわるのそろそろやめてもらいたいんですが?


 ぼくをかかえているいきもののかおとおもわれるところをなめきもちをつたえる。これでわかってくれるといいのだけど…どうかな?うん…わかってくれたかはわからないけどすこしきげんがよさそうだ。


 あ…またしらないいきものが…でもちょっとだけぼくをかかえているいきものににたにおい。そのいきものがとつぜんぼくをかかえているいきものをおそってたおれた。いっしょにまきこまれたぼくもちょっといたかった…そのいきものがずるずるとぼくをかかえていたいきものをつれていく。


 どこいくの…?


 ぼくをかかえているいきものがはなしてくれないからいっしょにつれてかれちゃったんだけど…とりあえずきけんはなさそうだからちょっとねようかな…



 わふぅ~…ふぁ…


 おもったよりもきもちよくねむれた。ちょっといろんなおとがきこえてきてうるさくておきちゃったよ。


「名前ですか…?」


 ん…?


 ぼくをかかえていたいきものがこっちをみながらなにかおとをだす。それはなにかのかんじょうをとつえるおとだというのはりかいできるけど、なにをつたえようとしているのかまではわからないおと。


「銀太…とか?」


 …だったはずなのにこのおとをきいたきいたとたんこのいきもの、「ナナミ」という「にんげん」のかんじょうがわかるようになった。どうやらぼくのあるじ(ごはんをくれるひと)ということらしい。しかもぼくのことをいぬとかんちがいしている。さすがにこれはさいしょにいっておかないといけないよね!


 いぬといっしょにするとかしつれいな!


 えへへ、ちょっとだけえらそうにいってみたぞっ

 さすがにこれでわかってくれたとおもうけどどうかな?

 ぼくはむねをはってとくいげなたいどをとる。そのあいだもこの「にんげん」たちはおとをだしあっていた。あるじのいいたいことはわかるけどもうひとりの「にんげん」のかんじょうがわからないのではっきりとわからないけど、どうやら『イシュレットガント』というところへいくらしい。

 あとをついていくととつぜんめのまえがひらけてちがうにおいのするばしょがめのまえにあるのにおどろいた。どことなくあるじはうれしそうだ。


 あるじたのしそうっすね。


 そんなあるじのあとをついていくとたくさんのいきもの…「にんげん」がわさわさしていた。


 あるじ…にんげんたくさんっすね。


 そういうとあるじはぼくのほうをみてまたいぬだとおもっているかんじょうをこちらにぶつけてくる。


 だーかーらーおおかみっすよ?


 そのあともあるじについてあるく。いろいろあるきまわり「にんげん」とかがすんだりするのにつかうらしい「たてもの」というのにはいる。


 ここでごはんがたべられるのかな…にくがいいな~


 どうやらちがったみたい。すこしするとあるじがなにやらいそいでいどうをはじめたのでそのあとをおいかける。


 そうか…ここににくはなかったんだね。


 つぎにむかった「たてもの」でもごはんはたべられなかった。でもそこであった「にんげん」についていくとおいしいごはんにありつけた。


 そうか…あるじのあるじってことなのかこの「アスカルード」って「にんげん」は。




 あるひあるじは「ダンジョン」というところにいくといいだした。どうやらいろんないきものがいるところらしい。そのなかにはぼくにもたべれるおいしそうなたべものはいるかなーいるといな~


「ダンジョン」ってところはおもったよりもあるくととおいところにあるみたい。はしっていけばはやいのにどうしてはしらないんだろう??


 …ん?あるじがなにかふんづけている。あれはたしかたべられないいきものでぶよぶよしてかみきれないんだ。いちどがんばってかみちぎってみたけど、そのあとさらにがんばってかみかみしたけどあじがしなかった。はっきりいっておいしくない。あるじもそれがわかったのかそのいきものをぽいっとした。


 ますますいろんあにおいがするところをあるいていどうすると「にんげん」がすこしいるところにでた。どうやらここでごはんをたべることにしたらしい。ぼくのごはんはきょうはなにかな~?


 …なんなんだろうかこれ?


 あるじがくれたごはんはなんかしろくてふわふわした「ぱん」といわれるものだった。おそるおそるたべてみたけど、なかににくがはいっていておいしかった!ふわふわもまずくないけどにくだけのがきっとおいしいよ?


 ごはんをたべおわると「ダンジョン」のなかいはいることになった。ちょっとうすぐらくてますますいろんなにおいがしてる。おいしくないにおいもするけど…まあたべられるものだけたべればいいよね。


 あ…おいしくないぶよぶよがいる。


 そのぶよぶよをあるじがじっとみている。あるじがなにかおとをだすとそのぶよぶよのきもちもわかるようになった。


『おねーちゃんもっとあそんでーーっ』


 あそぶ?あそぶならぼくもあそぶぞっ


 そのまま「ダンジョン」のなかへすすむとぼくのからだよりすこしだけちいさいいきものがいた。くろくてぼちぼちはやくうごくやつだ。たしかこいつはたまにみかけたことがある。おいしくないけどあそびあいてにはもってこいだ。そうか…「ライム」はぼくといっしょにこいつをおいかけてあそびたいんだな?「ライム」のほうをみるとあるじのあたまのうえにのっていた。


 あれ…あそばないのかな?ぼくはつかまえてあそぶよ??


 くろいやつをつかまえてあそんでいるとあるじがおおきなおとをだしてはしっていった。


「い…いやーーーーーっ!!」

「おーいナナミーーー?」

「わふぅ?」

 あるじどこへー?


 あっ…「ライム」がたのしそうなあそびをしている。あるじのあたまのうえにのったままからだのかたちをかえてくろいやつらをたたきおとしてる。すごい…ぼくにはできないあそびだね!「ライム」がたたきおとすからくろいのがずいぶんといなくなっちゃったよ!


「って…なんだありゃ……」


 おっとそうだついたのしそうでながめてしまったけどあるじおいかけなきゃ。おなかがすくまえにあるじみつけられるかなー?


 においをたよりにあるじをさがすよ~まずはこのまままっすぐー…ん?あるじといっしょに「ダンジョン」にはいった「にんげん」たちがぼくのあとをついてくる。


 ぼくはあるじをさがしているだけだよ?くろいのかりたいんじゃないの??


 まあついてくるならすきにしたらいいさ。そんなのはおかまいなくぼくはあるじをさがすだけだからね。…おっとこんどはこっちだな。


 しばらくにおいをたよりにあっちへ~こっちへ~そしたらどんどんにおいがつくよなってきた。よかったにおいがしなくならなくて…おかあさんときょうだいたちはにおいがしなくなったらあえなくなっちゃったからね。あるじまでにおいがしなくなったらまたぼくひとりぼっちになっちゃうとこだったよ。


「わうんわうんっ…」

 みつけたーーーー!


 うれしくてついあるじにとびついちゃったよ!あーーあるじのにおいおちつくな~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る