第146話 悪逆皇帝の最後

「はぁ、はぁ、はぁ何故世がこんな目に…」


魔獣を呼び出しどさくさに紛れて魔界へ逃亡しようとするジュリアン。


「居ましたぞ!涼殿!!」

「ルーガルこのまま落とせ。お前は街の人たちを非難させるんだ。」

「敵国の民ですぞ、良いのですか?」

「街の人たちを助けるのが戦隊だ。ルーガル頼めるか?」

「いや、素晴らしきお考えですぞ!かしこまりました!」


ルーガルはそう言うと涼をジュリアン目掛けて投げるとUターンし街へ飛んでいく。


「待ちやがれクソ野郎!」

「しつこいぞ貴様!!」

「どっちがだよ!!」


空から降って来た涼はそのまま剣を振り翳す。ジュリアンは懐から拳銃を取り出すと涼に放つがふつうの弾なせいか鎧に当たっても弾き飛んだ。


「せこい事してんじゃねーよ!!」

「ぬかせ!」


ジュリアンは拳銃を投げ捨て腰のサーベルを引き抜くと涼の剣とぶつかり合う。

涼は剣を弾くと腕から火球を作り出すとジュリアンに放つ。


「うわあぁ!!」


ジュリアンの顔に火球が当たると何故かその顔の燃え方がおかしかった。

顔の表面が焼けて剥がれてきているのだ。


「ん?」

「うわあぁぁ!俺の顔がぁ!!」


燃えた顔の表面が焼け剥がれるとその奥から別の男の顔が現れた。


「その顔つき!?まさか、日本人!?」


しかも、明らかに30は過ぎてる。

見た目は明らかに小太りな顔の小童みたいなおっさんじゃないかよ。


「たく、せっかく整形パックを張っていたのに」

「お、お前誰だ!?」

「日本人だよ」

「ちゃんと答えろ!ていうかジュリアンは!?」

「本物のジュリアンなら一か月前に俺が殺したよ」


!?

涼は一瞬フリーズした。


「俺のハーレムを作るのには都合のいい権力を持っていたからな〜可愛い妹までいるし。正にハーレムを作るには打ってつけだったんだよ」

「アンタは何で異世界に来たんだ!?」

「はあ?お前に関係ないだろ??」

「応えろよ!!」


涼は怒鳴り上げた。


「そうだな〜確か俺のゴシップを邪魔したクソ女を車で跳ねて、逃げてる内に変な裂け目に入ってこっちに来たんだったけかな〜」


は?ゴシップ?車で跳ねたって。


「アンタジャーナリストか!?て言う事はアンタ人を行為で跳ねたひき逃げ犯って事か!?」

「あの女が悪いんだよっ!!大人しくしてればいいのによ。俺が掴んだゴシップを辞めさせる為にあの手のこの手で邪魔したからだ。俺はチャンスを潰された被害者だ!」

「だからって車で跳ねていい理由になる訳ないだろ!!」

「ああ言うお節介は死んで詫びるが世の理なんだよ!!法律なんてクソくらいだ!だがもうどうでもいい。」


ジュリアンの偽物は顔を上げると高笑いした。


「異世界万歳!魔王ありがと〜!おかげで俺は勝ち組だ!金も女も思いのままだぜ!嫁まで貰えたんだからな〜あははは!」


なんだ…この外道を通り過ぎた卑劣野郎は!?

ジュリアンはあの日とうに死んでいた!?コイツと成り代わっていたって言うのか!?


「ふざけんな!なら何で世界征服なんかしたんだよっ!!」

「は?そんなのゲームと同じ様にまずは掃除しただけだよ。」

「掃除?」

「邪魔者は消す無双ゲームでは当たり前だ。俺は勝ち組で王様だ!だから人を選ぶ権利があるんだよ!で、城を奪って陣地を広げ異世界のハーレムを実現して一生贅沢して生きるのさ。この世界の事情なんか知らん。適当にゲームの知識でやれば大体上手くいくしな!」


マスクの奥の涼は怒りで頭がおかしくなりそうだった。


「ふざけんなっ!!人殺しをしといて何だその身勝手は!!この世界の人々はお前の奴隷じゃないんだぞ!!」

「ここは俺のいた世界じゃない。いわば俺は国外亡命した身だ。ここでは俺が正義なんだよバーカ!!」


コイツ…国外逃亡した犯罪者その者じゃないか!!

こんな奴に…アリシアは…

涼の腹の中でドス黒い物が始めて感じた。今まで沢山のクソ野郎が魔人族側に居たそれは全てヴァニティ事もう一人の自分が呼び出して手を汚さず世界を潰してるならなおのこと許せない。コイツは…この男は絶対に許せない!!


「テメェ…カスだな!クソ以下の負け組だ!!」

「あん?今なんつった?調子こくなよっキモオタがっ!!」

「お前こそ調子に乗るのも大概にしやがれっ!!」


涼は声を上げると偽物に剣を振り翳す。

偽物は剣で防ぐ。


「いいのか?正義の味方が一般人を殺して〜あ、いいかお前もう人殺しだしな!!」

「貴様ッ!!」


涼はぶつかり合う剣をぐいぐいと押していくと偽物を大破した民家の扉の前まで誘導すると涼は弾き偽物の腹を蹴り飛ばし扉へ激突させると次の瞬間涼と偽物は扉に吸い込まれ消えた。



扉から出てきた二人の目の前に広がる火山の火口。


「な、何だここは!?」

「ここはアンジェラの側のレジスタンスの本拠地ゴライ木から飛んで行った武器庫の扉の先だよ。お前がめちゃくちゃにしたあの場所の側の島の火口だ!」

「俺の軍団を消しとばしたあの場所の側だと!?」

「万が一お前が逃げようとした場合を考えてここへ誘導出来る様にマーキング済みの扉をこの火口に配置しといたんだよ。のぶさんがな…」

「ゴールドが?」


そう信道はいずれ自分でジュリアンを撃つ為に万が一の逃げ場を無くす場所としてそしてジュリアンの墓場にする為に仕込んでいたのだコイツに言われて戻って涼を攫ったあの日に。


「のぶさんはお前を自分で撃つ気だったらしいからな」

「愚かな奴だ。ちょっと女を借りただけで」

「オイ偽物。」

「あん?誰が偽物だ俺は…」

「お前の名前なんかどうでもいい」

「なんだと!!」

「助けは来ないぜ。いい加減に腹をくくれ!」


涼はそう言うと剣を構える。


「そうだな。いいだろ。負け組のお前を俺が殺せば関係ないからな!」


偽物はそう言うと黒い宝石を懐から取り出し口に頬張りバリンと噛み砕き飲み込む。


「うぉぉぉぉ!」


偽物の体から黒い煙が吹き出し身体に纏っていく。

偽物の額から角が生え身体が筋肉質になり大きくなって行く。

煙が晴れると人の姿は無く角を生やしたまるでオーガみたいになっていた。


「万が一に備えてアイカから予備を貰っておいたんだ!これで貴様も俺には勝てない!!」


怪物になった偽物は指をポキポキと鳴らす。


「わざわざ化け物になる必要があったのか??」

「貴様が死ぬなら構わないさ。貴様を殺したら忌々しい貴様の仲間共を殺してやるからよ!!」

「もう…いいや…」


涼はそう言うと変身を解いた。


「あん?負けると分かり降参かいまさら?」

「いや、逆だよ。」

「 あん?」

「負けるのらアンタだよ」


涼はそう言うと剣で胸の封印の宝石を破壊するとメタルニュークリアデバイスが露わになる。


「ほざけ!さっさと死ねやキモオタが!!」


偽物はそう言うと涼に襲いかかる。


涼は胸から黒光りしているレッドベリルを取り出すと剣にはめ込んだ。


メタル・ニュークリア!


宝救剣から銀の液体が吹き出し涼の身体に纏わりつく。

身体全てを銀の液体が覆うと赤黒い電流が身体から放出されると銀の液体が固まり銀色の鎧を形成していく赤黒い電流が最後に放出されると装甲はレッドメタルカラーに変わると変身は完了した。


メタル・ニュ〜クリア〜!


涼は禁断の形態に再び変身した。


「何だそんなもん!」


偽物が涼の身体に触れた瞬間…


パンッと偽物の右手が弾き飛び血が霧状になる程跡形もなく消し飛ばした。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!手がぁぁぁぁまた俺の手がぁぁぁぁ!!」


偽物は余りの痛さに泣き叫びなくなった手を掴む。


「痛いか?」

「ヒイッ!?」

「まだ…足りない…」


涼はそう言うと偽物の視界から消えると今度は偽物の両足が弾け飛び血のミストが舞う。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


偽物は声を上げた。

涼は物凄い速さと力で偽物を圧倒している。

偽物は所詮偽物だった。

涼は偽物の頭を掴み力を込め痛めつけながら持ち上げる。


「いででででで!!」

「同じ世界の住人なら、放射線が何か知ってるよな?」

「放射線だと!?じゃあこの力は核だと言うのか!?」


偽物は知らなかったのだ涼が今周りに恐るべき災害をもたらす力を使っていることが。

涼は言わば放射線を撒き散らすウラン鉱石そのものと言える。


「ウランを直で触ったらどうなるか?見せてやるよ!」

「な、よ、よせ止めろ!!」


涼は構わず腕から赤黒い電流が走らせると偽物の皮膚がどんどん黒くなっていく。


「ぐがぁぁっ!!い、息がぁ!?身体がぁ焼けるっ!!」


偽物は口から泡を吹き始め目玉がありえないほど飛び出し身体中の欠陥が浮き彫りになっている。


「ぎ、ギザまぁぁぁぁ!!」


偽物は最後の力を振り絞って左手で涼を殴るが、その左手も弾け飛びとうとう五体不満足になってしまった。

涼は手足を失った偽物を持ったまま火山の火口へゆっくりと歩いていく。


「な、何ゔぉずるぎだぃ!?」


偽物はまさかと思う。


「や、やゔぇろぉぉ!!」


もはや呂律が回らない偽物は何を言っているか判らない。

涼は火山の火口に偽物を投げ入れるとマグマの手前の灰と砂利と砂が入り混じった地面に叩きつけられた。


涼は剣から汚染されたレッドベリルを力ずくで自らはずすと変身を解くとその両手は黒く変色していた。


「キザヴァ….ヒーろうのらやるごどがっ!!」


偽物は涼に向かい怒鳴りあげるが放射線による汚染と呼吸困難で何を言ってるか解らない。


「俺は今…自分の意思でお前を殺す…悪党は一度死ななきゃ解らない…」


涼は血の涙を流しながら今自分がしていることをしっかりと見に染み込ませる。そう命を自らの意思で奪うと言う事をだ。


「奪った命の重さはお前なんかじゃ足りない…もがき苦しみ…後悔しろ…」


涼はそれだけ言うとその場を後にする。


偽物の身体に溶岩が発火し全身を包み込む。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


息すら出来ない苦しみと灼熱の溶岩に発火し燃えた身体はやがてバランスを崩すと溶岩の波に飲まれていくと全てを奪い一度は勝ち組になった偽物の王は跡形もなく溶岩の中で消えた。


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