第131話 腹をくくれ!

進化した仲間達が村を襲っている斑鳩と魔王軍の兵士達を蹴散らしていく。

リアも負けじと兵士達をグローブを盾に剣を弾きながら懐にジャブを叩き込み次々と戦闘不能にしていく。


「このアマ!」


兵士達がリアに銃を乱射する。

土煙が上がる。煙がはれるとリアの姿はなかった。


「な!?何処へ行った?」


リアは小さくなっていたのだ。リアの動物形態は実際のリスになる。しかし変身中はサイズそのものが変わるようで小さくなり交わすと兵士達の後ろを取り元の姿に戻ると兵士達の後ろから尖ったダイヤをグローブから放ち吹っ飛ばした。


「な、いつのまに!?」

「女相手に何をしてやがる!早く殺せ!」

「余所見とは余裕だな!髭やろう!」


涼はすかさず鞘型のアイテム ドンガン*バッチグーを装着して変身する。

翡翠の軽装とマントを羽織ったホウキュウレッド・ラピードに変身し鎧男に剣を入れていく。


「抜かせ偽物が!!」

「偽物はお前だろ!何だその武器は?俺達のパクリかよ?」


宝石で出来た斧は魔石が埋め込まれており鎧男はそのパワーで涼にひたすら斧を振りかざして攻めまくる。


「これはジュリアン様から頂いた勇者の武器だ!役に立たない愚民共も我が武器として使えれば本望であろう!」


斑鳩が与えた武器だと、まさか殺した人々の魔宝石を使ってあの武器を作ったのか!?

そういや魔界の資料にもそっくりな図面があったな!

どうやら、魔王軍が人々を殺して回り魔宝石を集めていたのは俺達の武器と条件を対等にする為なのか!?

そう考えると合点がいくな。


「ふざけるなよ。お前それが人の命だって事は分かっているのか!?」

「愚問だな!」

「分かってんなら何でそれを使って人々を襲い回っているんだよっ!!」

「知れた事よ!俺は貴族で勇者だ!ジュリアン様についていけば俺は英雄だ!故に反逆者共に正義の鉄槌を下している!」

「それが人殺しでもかよ!!」

「俺は英雄で勇者だ。ジュリアン様の為なら殺しは正義!賛同できぬものは死が当たり前なんだよ!それが勇者の特権だ!」


コイツ…ただ勝ち馬に乗る為だけに人々を殺して回っているってのか!?

コイツも、間藤ジンや皇時也と同じかよ。この異世界で産まれながら故郷を危険にさらし剰え殺人を特権て抜かすってか!?


「ふざけんじゃねぇっ!!」


涼は斧を弾くと鎧男の懐に銃に変形した宝救剣の弾丸を叩きこんだ。


ドカンッ!


「ぐわっ!!」


鎧男の鎧はいい音をしながら砕け腹を弾が貫通した。


「うわぁぁぁぁぁ!痛い、痛い、痛い!!」

「情けない声出してんじゃねーぞ!弱虫が!」

「俺が、弱虫だと!!貴族で勇者である俺に向かって!」

「違う!お前は勇者なんかじゃねぇよっ!ただ自分の欲を満たそうとして強い奴に便乗してる金魚のふんだ!」


この男はただ強い奴に便乗して常に勝ち馬に乗ろうとしてるだけだ。自分から何かをしたわけじゃない、ただ勝ち馬に乗り続ける事しか考えてない本物負け犬だ!


「貴様とて人とは知らず殺しでまわり剰え勇者気取りの殺人者ではないか!世を正そうとしていたアイカ様の邪魔をした余所者の貴様は勇者ですらないわ!」

「だったらお前は負け犬だな!」

「同感ですな。 」


兵士達を片付けて空から加勢に来たルーガルとカイエン。


「負け犬だと!貴様らの様な化け物が俺達が使う武器を勝手に奪い使っておいてかっ!!忌々しい蜥蜴と死体風情が!!」


ドカンッ!


「ひっ!?」


鎧男の兜が破裂する様に砕け右の頬が切れて血が大量に吹き出す。


「君さ…何か勘違いしてない?」


兜を貫いたのはコハクだ。


「コハク。ちゃんと狙いなさい!」

「手元が狂ってね」

「汚らしい亜人風情が!勇者にこんな事をしていてただで済むと思っ…ぐはっ!!」


獣人化したリアがいつのまにか鎧男の懐に飛び込みリーチが伸び破壊力が上がった拳を砕けて穴が空いた鎧男の腹に思いっきり力を込めて腹を殴った。


「貴方が勇者?弱すぎです!」

「ゲホッ!ゲホッ!貴様ら…」

「もうやめとよ。お前は俺達には勝てない」

「ふざけるなっ!!邪魔をする貴様達を殺せば俺は大公の地位を頂ける!貴様らは俺の為に死ぬんだ!そうすれば貴様らの殺人も水に流してやろう!」


コイツ本当に頭がどうかしてやがる。よっぽどの没落貴族の出か何かか?だから執着心が半端ないのか?


「お前さ人を殺せば英雄だと思ってるのか?」

「当たり前だ!勇者である俺の特権だ!」

「違う!お前は勇者なんかじゃない、ただの負け犬だ!」

「何だと!」

「人を殺せば英雄?馬鹿も休み休み言いやがれ。確かに俺達も知らずに過ちを沢山犯したし何ども人を殺めたさ…」


涼は今まで倒してきた怪人や許す事が出来ずやむえず命をたった奴らを思い出す。

理由はどうあれ俺達も立派な人殺しをした事には変わりないさ。


「なら貴様らに俺をとやかく言う権利はないわ!」

「確かにな。でもな…どんな理由があっても殺せばいいってもんじゃないんだよっ!勇者はそんな事をする為の存在じゃない。」

「なら貴様は勇者ではないわ!人殺し、負け犬、弱小国の恥さらしが!悔しかったら言い返してみろ!コラァッ!」

「でも、腹をくくらなきゃ行けない時もある。」

「それが答えか?馬鹿がっ!!」


鎧男はそう言うと斧を巨大化させブーメランの様に涼達に投げつけた。

しかし…


バリンッ!!


「いいっ!?」


鎧男の斧は5人の一振りで見るも無残に砕け散り地面に散乱した。


「お、俺の勇者の武器がっ!!」

「おい髭やろう!」

「ひっ!!」

「覚悟は出来てるな?」


凛達は剣を構える。


「き、貴様らそれでも勇者か!?」

「俺達は…戦隊だっ!!」

「その戦隊が人を殺していいのか!?アアッ!」


涼は鎧男の肩に剣の刃先を短くし伸ばし貫くと鎧男の肩から血が吹き出した。


「ひいっ!!」


情けない声を上げ肩を抑え今にも泣き出しそうな顔をする鎧男。

涼は鎧男の胸ぐらを掴みあげる。


「いいか、髭やろうよーく聞け。命を散らす為に戦うが勇者じゃない!俺達戦隊は命を守る為に戦うんだ!例え手を汚す選択をしてもだ!」


勇者もヒーローも戦隊もただ悪党だからと命を奪う存在じゃない!俺達戦隊は間違った奴を止め正しい裁きを下す。でもそれは勇者じゃない、この世界の定めたルールがお前を裁く!平気で命を弄び散らす奴を止める為に優しくしてくれた人達を助ける為に…それでもお前らが命をこれ以上散らすなら手を汚してでも止めてやる!


「お前は奪った命に対して何かを思った事あんのか?」

「あるか!散るこそが花道である!グハッ!」


涼は鎧男を思いっきりぶん殴ると鎧男は勢いよく飛んでいき瓦礫とキッスをした。


「ぺっ!」


ぶつかった拍子に前歯が折れ吐き出す鎧男。


「お前が何と言おうが俺達は全てを背負って前へ進む。そして悲しむ人々を救ってみせる!俺達は戦隊だ。その覚悟が出来なくて悪を捌けるか!」


涼はそう言うとグリップを引くと剣が光だす。


「お、お前!?本当に俺を殺すのか!?正義の味方のする事でじゃないんだろ?お前は勇者なんだろ!?」

「言いたいことはそれだけか?」

「ま、待て!!俺は貴族だ。そうだ!お前にもジュリアン様に頼み天下を貰える様にしよう!勝ち組になりたくないか?」


鎧男は怯えながら必死に命乞いをしている。

涼の答えは…


「いるかよそんなもんっ!!」

「ひっ!!」


鼻水を垂らしながら怯え声を上げる鎧男。

涼は鎧男の頭上目がけ宝救剣を振りかざしす。


「嫌だぁぁぁぁ!俺は関係ないっ!!本当に死んでしまうっ!痛いのは嫌だぁぁぁぁ!ママァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


鎧男は情けない言葉を言い放ちながら泣き叫び命乞いをする。しかし、涼は勢いを止めない。

涼の剣先から黄色の煙が放たれた。

ん?黄色の煙ってまさか…


ブブーーー!


「かっ!?臭い…あぶばあぁぁぁ!」


鎧男は泡を吹きながら窒息し目を回すと倒れた。


涼は勇者石を外し変身を解いた。


「バーカ!お前なんか仕返しする価値もないんだよ!」

「涼!よく我慢したな!」

「最初からコイツを殺す気はないよ」

「何故ですぞ!?」

「君は進化しても頭は変わらないのかい?斑鳩の情報を引き出す為に決まってるだろ!」

「成る程!我輩もそう考えておりましたからな!」


絶対嘘だ!


「で、どうすんだコイツ?」

「斑鳩の兵士達も含めてコイツも簀巻きにしとこう」

「話を聞くまでは殺すんじゃないぞ!」

「こんなやつ殺してもしょうがないだろ!」

「皆さん!」


さっき助けたレジスタンスの男が涼達に駆け寄ってくる。


「アンタは?」

「助けてくれてありがとう。私はマルク。レジスタンスの一員だ!」

「レジスタンス?」

「斑鳩帝国から世界を取り戻す為に立ち上がった組織だ!」

「俺達が魔界へ行ってる間何があったんだ?」

「詳しくはレジスタンスの基地で話します。皆さんも来てください」


斑鳩帝国にあの髭やろうを含めた俺達のなりすましにレジスタンスか…判らないことだらけだ。

涼達はとにかく情報を得る為に話しを聞くことにした。


「わかったついていく。ルビティラ!」


涼はルビティラを呼ぶと、逃げた人々の護衛の為に別行動をしていたルビティラが空から飛んでくると小さくなる。


「涼。終わったティラよ!」

「こっちも終わった。ルビティラそこの簀巻きにしてある髭を船まで運んで行ってくれ。暴れたらみんなでタコ殴りして止めるんだ!」


こら今さらっと酷いこと言わなかったか?涼さんよ。


「オーケーティラ!」


ルビティラはパンツ一丁で簀巻きにされた鎧男を咥えると船まで飛んで行った。

兵士達はとりあえずみんな死んではいないが面倒だからと縛り付けて置いて行く事にした。


「でわ、こちらです!」


涼達は男達に連れられレジスタンスの基地へ向かう。

少し歩いた場所に隠れていた3匹のドラゴンを見つけた。


「我々のドラゴンです。これで向かいます乗ってください!」


ルーガルとカイエン以外ドラゴンに乗り込み空へ上がり飛んでいく。その跡を追いかけるルーガルと馬に跨り飛んでいくカイエン。

しばらく飛ぶとカブトを見つけたザン樹海へ差し掛かる。


「ザン樹海だ!」

「はい、ザン樹海に基地を作りました。ここは簡単に見つかる場所ではありませんからね!」


成る程な。ザン樹海は深い森だからそう簡単には見つからない。

ドラゴンが上空を回る。

すると下からキラっと何かが光るとドラゴンは降下していく。

降りた先の巨大な切り株。

しかし、切り株は幻であった。ドラゴン達の体をすり抜けた、その先はいかにも隠れ家みたいな感じの場所だった。


「今、戻ったぞ!」

「マルク!遅かったわね!」


奥から少女と小さな雀蜂が飛んできた。


「ん?泥棒猫!!」

「ポップくん!!」

「ん?ああ!首無し!」

「リア!」


そこにいたのは、カイエン達が旅先で出会った先代勇者の末裔だった2人である。

パーシヴァルとポップだった。

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