第126話 動き出す魔界城(ゴーレム)

次の朝、修理を終えた、スターダムオリオン号のエンジンが勢いよく動き出すと仲間たちは朝早くからコックピットに集まり席に座っている。涼達はいきなり魔界城へ乗り込む事にした。あくまでもガネットへ帰る為の方法を探る為だ。


「でわ、皆さん。改めて魔界城へ向かうでありますよ!」

「いい、あくまでもガネットへ戻る方法を探るのが目的だからね!出来るだけ戦闘は避けてね。」


そう、何度も言うが、あくまでま向こう側へ帰る為の方法を探る事だ。向こう側が悪い奴に独占された以上ほっとく事は出来ない。王様やマナリア、蝦蟇爺達の安否確認が最優先だ。


「わかってるって!」

「涼。貴方が一番心配なのよ」

「何でだよ?」

「またキレてレッドベリルが暴走したら大変でしょ!」

「それは…」

「だから、今回大胆な作戦を提案するわ!」


大胆な作戦??


「姫様その作戦とは?」

「それは、魔界城には私達だけで乗り込み。涼。貴方は居残りよ!」

「は!?」


「「「「「「「「「は!?」」」」」」」」」


一同は声を上げた。


「ちょ、待てよ!アリシア!俺抜きで魔界城へ乗り込むってのか!?」

「そうよ」

「無茶だ!ヴァニティだけじゃない他の魔王もいるんだぜ!俺が行かなきゃ!」

「それでまた貴方が暴走したらどうするのよ!」

「でもよ!」

「でももヘチマもないわよ!涼、貴方は少し無茶しすぎよ!ここは私達に任せない!」


アリシアは無茶しがちな涼を休ませる為にまた暴走して我を忘れて壊しまくられた逃げ道も無くなるのもあるが、また涼が変な精神的ダメージを受けたら大変だからだ。


「だけどよ!」

「偶にはいいじゃないか!」

「のぶさんアンタまで!」

「涼。お前には無茶ばかりさせたからな。偶には裏方に回るのもチームワークだろ?」

「けどよ!」

「暴走したら、今度は止められる確信があるのか?」

「う…それは…」


確かに、どんな物も一度使い方を誤ると皆んな本能的に恐怖するもんだ。人間だってキレて暴れたら対外はみんな掌を返したみたいにそいつを売り平気で裏切る。

使い方を誤り恐怖を与えればずっとその人の頭に残るものか…


「大丈夫ですぞ、あくまでも帰る方法を探すだけですからな」

「それくらいなら、お前抜きでも大丈夫さ」

「涼、これくらいは僕達に任せてくれ!」

「危なくなったら直ぐに逃げますから」

「お前らに何かあったら!!」

「9人も居るんだ何とかなるさ」


確かに皆んな旅先や修行でだいぶ強くはなった。

それは認める相手はヤバイくらい強い力を持つ魔王達だ。


「だから涼お前は待っててくれ!」

「自分達ももう足手まといじゃないですから!」

「先生。僕達は必ず生きて帰りますから、ベルちゃんと待っていて下さい!」

「涼。私達を信じて」

「アリシア…みんな…」


皆んな気持ちは同じだった。

涼に助けられてばかりだからこそ自分達が出来る事をやると前々から考えていたのだから。


「わかった…けど…約束しろ。必ず帰ってくるって!」

「当たり前よ!ベルちゃん!」

「話は纏まったでありますね!では出発であります!」


ベルはレバーを引くと飛行ユニットが動き出し船は飛び上がり魔界城へ向かって飛んで行く。



出発してから三時間弱。

ミーティングルームにて作戦会議。


「いい皆んな、作戦はこうよ!まず、真宝剣を持つ三人を1人ずつ加えた小隊を組みます。」


魔界城のコンソールにアクセス出来るのは真宝剣だけだ。魔石を核に使ってる故に敵側のルーンを解析出来るのだ。


「愛はコハクと信道、海斗はリアとルーガル、和樹は私とカイエンとチームを組んで分かれて敵のコンソールを探します。見つけたら直ぐに連絡する事、直ぐに逃げるから。ベルちゃん達は雲の中で待機ね!」


「了解でありますよ姫様!」


操縦桿を握りながら話を聞いているベル。

操縦しながらコンソールを弄り機構やら何やらしっかり操作してるんだから凄いよな。


「なあ、今さら何だけどよ。飛べる様になったんなら、直接ワームホールを通れば帰れるんじゃないか?」


確かにすでに飛べるまで修理が完了したんだ。

何に何でわざわざ、敵のアジトに飛び込んで帰る方法を探すんだ?


「涼さんそれは無理でありますよ。」

「何で?」

「本当なら向こうの基地に繋がったら帰りは蝦蟇爺達がポイントを絞ってまたゲートを開いてくれる算段だったんでありますよ」

「つまり?」

「こちら側じゃ向こうに通じる穴をつくれないんでありますよ」


つまり一方通行か。

本来なら、魔界に着いたら、基地に繋がりマナリア達と定期連絡をしながら行き来して両方の世界を何とかする算段だったが、斑鳩の裏切りでパーになり、向こうから帰り道を作ってもらう事が出来なくなったって事か。


「磁気嵐が酷すぎて目印なしじゃ行けないんでありますよ」

「それなら魔界へ来た時も同じ条件だろ?それはどう説明するんだよ?」


逆もまた然りの筈だ。


「それは確か…」


アリシアが説明しようとした時だ。


「あ、城が見えて来たでありますよ!!」


ベルが声を上げた。


目の前に見える巨大な石の城。

周りの地面は黒く黒光りする岩に覆われていて、周りの雲は黒くバチバチと雷が鳴り響く。

絵に描いたよう様な悪党の城である。


「アレが魔王ヴァニティの本拠地!!」

「いや、アレはその一つに過ぎない。」

「は?他にもあるのか!?」

「はい。アレはあくまでこの地を収める為の物」

「ヴァニティの奴はあっちコッチに城を築いていてアレはその一つで奴は居ません」


マジかよ。

ヴァニティが居ないのか…まあ帰るのが目的だから別に今はいいか。ていうかヴァニティはこいつらを最初から利用していただけだしな、当然本当のアジトを教えるわけないか。

あの地図にあった拠点にはヴァニティは居ないのだ。


「アレが魔王の拠点の一つなら、ヴァニティは何処にいるのよ??」

「それは俺達にも解らない…」

「少なくとも僕達が出入りしていた拠点はアレです!」

「それは間違いです。」

「お前らが居たって事は、アッシュベルが居るのか!?」

「ええ、ドクターの研究所でもありますから」

「兄さま…」


ベルは口ずさむ。


「ベルちゃん大丈夫ですか?」

「た、大丈夫でありますよ。リアありがとうであります!」

「苦しかったら言ってね、」

「姫様まありがとうであります。」


2人に元気を貰ったベルはエンジンを加速させ、魔界城へ向かって行く。


「皆んな準備するわよ!」


アリシア達が乗り込む準備を始めようとした時だった。


「ん?」

「どうしたルーガル?」

「いや、何か飛んできますぞ!」

「は?どうせ鳥だろ…おっ!?」


カイエンは声を上げた。

船めがけて飛んできたのは巨大な腕である。


て、腕えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?


「うわぁぁーーであります!!」


ベルは慌てて旋回し交わした。

船が傾き涼達バランスを崩す。


「な、何だ今のは!?」

「オイ、あの城…動いてるぞ!」

「なんだと!?」


魔界城が立ち上がり動き出し攻撃して来たのだ。


「ちょっと何で城が動いてんだよ!?」

「まさか、アレはゴーレムかっ!?」

「ご、ゴーレムって岩の巨人のか?ルーガル?」

「はい。普段は岩や崖と同化していてまずあんまり見かけない無機物の巨人族ですぞ!」

「何でそれが城なんだよ!?」


動き出したゴーレムは身体中に装備された大砲を雨あられの様に撃ちまくる。


「ベル!結界!」

「であります!」


ベルは急いで結界を張るが大砲の雨が激しくて結界のエネルギーが馬鹿喰いしている。

更にゴーレムのパンチが飛んできた。


ゴチン!


船は結界ごとくらい吹っ飛ばされ結界のエネルギーが一気に消え結界が破れた。

船はぐるぐる回りながらもブースターを燃やして何とか持ち直した。


「あわわ〜た、助かったでありますよ…」

「いや、助かってないぞ!」

「え?」


ゴーレムがロケットパンチを飛ばして来た。


「嘘であります!!」


ベルは泣きながらフルスピードで逃げ周り交わす。


「これじゃ近づけないであります!」

「お前らコレはどういう事だよ!!」


カイエンが和樹達三人に怒鳴り上げた。


「俺達もまさかゴーレムそのものなんて知らなかったんだよ!!」

「まさか巨人とは自分達も知らされてなくて」

「本当ですよ!!」

「どうすんだよ、近づけないぞ!」


無理だ絶対にあんな巨人そのものが拠点じゃ殴りこむどころか逆に殴られるわ。


「どうすんだ姫様?」

「予想外よ本当に…」

「なら強行突破ティラ!」


格納庫から出てきたルビティラがコックピットに来た。


「ルビティラちゃん!」

「強行突破ってどうすんだよルビティラ?」

「俺達が姫達を運ぶティラ!」

「どうやって?」

「飛んで壁をぶっ壊すティラ!」


成る程。

ルビティラ達が合体した巨人で空から入り込む訳か!

てもあの城宝石巨人よりデカイんだぞ。

グランドホウキュウオーと同じくらいデカイ。


「空から入り込むのか!?飛べるのはカルタノハオーとホウキュウオーイカロスくらいだぞ!」

「全員乗れるのかよ?コックピットは狭いんだぞ」

「背に腹は変えられないわ。行くわよ!」

「良し行くぜ!」


涼はそう言うと格納庫へ向かう。


「お馬鹿!貴方は留守番でしょうが!」


アリシアが投げ縄で涼を捕まえた。

勿論、人口宝石で出した縄(ロープ)宝石である。

主に分からず屋を捕まえて縛る為に使う。まさにこの状況だ。

アリシアは涼を椅子に縛り付けぐるぐる巻きにした。


「何だよ…」

「涼、俺は直ぐに戻るティラ!」

「寂しかないわ!」

「はぁ〜皆んな行くわよ」


アリシアはそう言うと仲間達は格納庫へ走っていく。


「涼さん。皆んなを信じようでありますよ」

「わかったよ…でもいざとなったら行くからな!」

「はいはいであります。姫様準備は?」


ベルは無線で宝救バックルに通信を入れる。


格納庫では合体した、ホウキュウオーイカロスとカルタノハオーがアリシア達をコックピットへ入れていた。

合体した数のコックピットが合わさる為、ホウキュウオーには5人、カルタノハオーには4人コックピットに入る。

コックピットでは変身を完了した仲間達がスタンバイしている。


「いいわよ!ベルちゃん格納庫を開けて!」

「はいであります!ぽちゅ!」


ベルがボタンを押すと船の後ろの格納庫が開く。


「マジで飛び降りんですか姫様!?」

「ルーガル別に大丈夫だろ?」

「我輩は飛んだ事ないんですぞコハク殿!」

「狭いんだから暴れんなルーガル!」

「ルビティラちゃん行きなさい!」

「あいよ姫ティラ!」


ホウキュウオーは格納庫から飛び降り背中のゴルーケンの翼を広げ羽ばたき魔界城(ゴーレム)の方へ急降下した。


「俺達も行くぞ!行けカルタノ!」


「ガルッ!」

命令すんなっ!クソガキ!


カルタノハオーも飛び降り翼を羽ばたかせ魔界城へ一目散に飛んで行く。

スピードはホウキュウオーより速い。


魔界城(ゴーレム)は砲撃しながら飛んでくるホウキュウオー達にパンチをお見舞いする。


「イカ月剣!」


ホウキュウオーに乗り込んだ信道がそう言うとホウキュウオーイカロスは構えていたイカ月剣を投げ砲撃の雨を全て粉砕し戻ってきたイカ月剣で拳を弾き飛ばした。


「覇王剣!」


和樹がそう言うとカルタノハオーは剣を構え弾いた巨人の拳をバラバラに粉砕した。


「凄い!」

「カルタノハオーはやっぱ強いな!」

「良し今のうちよ!」


すかさず、ホウキュウオーとカルタノハオーは一気に魔界城へ飛び込んで行く。


「ダイヤパンチ!」

「スティラコアタック!」


ホウキュウオーは右手のパッキーの頭蓋骨のダイヤのパンチをお見舞いし、カルタノハオーは左手の硬いスティラコの頭を城壁へお見舞いし壁を破壊して大穴を開けた。

2体の宝石巨人はすかさずコックピットにいたアリシア達を外へ転送しその場を離れ船へ戻っていった。


「ありがとうルビティラちゃん!」

「また迎えに行くティラ!」


やがて空高く飛び上がり2体は見えなくなった。


城へ入り込んだアリシア達を出迎えたのは武器を構えた魔王軍の敵兵達。


「おいでなすったな!」

「腕がなりますな!」

「2人とも作戦を忘れるなよ!」

「あくまでも帰る方法を探すんですからね!」

「皆んな気張って行けよ!」

「はい!」

「勿論!」

「わかりました!」

「作戦開始!行くわよ!」


アリシア達は剣を構え、事前に決めたメンバーの元へ集まり背中あわせに武器を構える。


「散会!」


アリシアの言葉で三チームに分かれた仲間達は兵士達に立ち向かいそれぞれ分かれて行く。

ガネットへの帰還方法を探す為に城を回る為に。

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